テレワーク時代の、「程よい田舎暮らし」を考察する、ほどいなかシリーズ。
実際に「ほどいなか」に移住した経験をもとに、連載します。
住まいを選ぶ
- 程よい田舎に住む、という選択
- 程よい田舎へ移住する、理想と現実と金勘定
- 山派?海派?失敗しない、候補地選びのコツ
- マンション?戸建て?程よい田舎の、不動産屋が言わない、家選びのコツ
- 賃貸か持ち家か、程よい田舎では、どっちが得?
- 程よい田舎は、災害にも強い?災害大国日本の、リスクマネジメント
- 二千万円もお得?リタイアしたら、田舎で暮らす、メリットとは
- 都心でも、盛土?東京の造成地の、驚くべき実態
- 住居費と通勤時間を、経済的視点で計算すると…
暮らしは?
- 程よい田舎では、車は必需品?それとも不必要?
- 地産地消も楽しめる?程よい田舎の買い物術
- 地域格差をなくす?程よい田舎の、オンラインショッピング事情
- レストランはある?程よい田舎の外食事情
- 遠隔連携医療で変わる?程よい田舎の、医療の今と未来
- 学力、いじめ問題、健康…程よい田舎は、教育のユートピアか?
- 古くて新しい子供の遊び方「プレーパーク」とは
- 意外と便利?田舎での車なし・自転車生活
仕事は?
青梅・西多摩地区への移住
前回は、「ほどいなか」=程よい田舎での家選びについて、賃貸、持ち家のメリット・デメリットを考察してみました。
今回は、災害リスクの少ない家選びについて、考えてみます。
目次
ほどいなかの、災害リスク
様々な災害リスク
災害大国の日本。
世界有数の地震国であり、火山国です。
加えて、海に囲まれた地形は、台風の被害も甚大です。
風光明媚な場所は、自然災害が多いでしょう。
美しい裾野の富士山は、火山活動の結果ですし、白砂の海岸も津波のリスクがあります。
渓谷美は、土砂災害があります。
自然豊かな「ほどいなか」は、リスクが高い場所も、多いのでしょうか?
日本に住む限り、多かれ少なかれ、地震や台風の被害から、逃れません。
しかし、リスクの高い場所があることもまた、事実です。
やはり、移住先を選ぶ際、なるべくリスクの少ない所を選びたいですよね。
また、リスクが分かった上で、その場所に住むのと、そうでない事の差も大きいです。
イザというときの備え、運悪く災害に巻き込まれても、早めの対処で被害を軽くできる可能性もあります。
主な自然災害を、挙げてみましょう。
地震
4つのプレートの境界線の日本では、全国的に地震の被害から、逃れられません。
安全と思われていた地域でも、想定外の地震が起こる事も多いです。
損害保険は、地域によって保険料が違います。
当然、リスクの高い地域は、保険料が高くなります。
福島県は、東京などに比べ、三分の一程度。
「安全」なはずの場所ですが、それでも、東日本大震災では、甚大な被害が出ました。
台風・大雨
四方海に囲まれた日本は、強い勢力の台風が、上陸します。
また、梅雨前線や秋雨前線の活発化で、長時間の雨に晒されます。
洪水による被害、土砂災害などを、引き起こす可能性があります。
火山
日本には、111もの火山があります。
最悪の場合、文明を滅ぼす威力を持った、巨大カルデラ火山もあります。
四国には火山がありませんが、7300年前、鹿児島沖50kmの海底火山・鬼界カルデラが爆発した時、四国の縄文人は絶滅。
この日本に、絶対に安全な場所は、ありません。
リスクの低い、家の見つけ方
地震は、地盤が大切
移住先を選ぶ際、予め、地震での揺れやすさを把握します。
地震は、地盤によって揺れ方が変わります。
地質の良い場所は、同じ震度でも揺れにくくなります。
朝日新聞の揺れやすい地盤 災害大国 迫る危機で、揺れやすさ(表層地盤増幅率)を住所で検索できます。
表層地盤増幅率は、数値が高いほど、揺れやすくなります。
一応の目安として、1.5を超えると注意が必要です。
2.0を超えると、相当地盤が弱く、要警戒。
東京の場合、地域でかなり違います。
たとえば…
- 江戸川区船堀1丁目… 2.41
海面よりも低い、海に近い住宅地。江戸川も近くに流れる。 - 荒川区西日暮里1丁目… 2.37
東京の下町。荒川近く。 - 豊島区池袋1丁目… 1.64
武蔵野台地の繁華街。 - 杉並区荻窪1丁目… 1.48
東京郊外、武蔵野台地の住宅地。 - 立川市曙町1丁目… 1.23
多摩川中流の町。武蔵野台地で比較的平ら。 - 青梅市東青梅1丁目… 0.85
関東平野の西端の町。山地が近い台地。 - 奥多摩町氷川100… 0.57
多摩川上流の町。平野がほとんどない山間。
西高東低、ならぬ西低東高です。
やはり、海の近くの埋め立て地は揺れやすく、台地は比較的揺れにくい傾向ですね。
大名屋敷が、台地にあったのも頷けます。
山間部(奥多摩町)は、台地よりさらに揺れにくいですね。
山間部は、土砂災害リスクはあり別の意味で注意は必要ですが、地盤に関しては優等生です。
また、川の流域も揺れやすい傾向です。
関東の場合、特に大河が並行している、荒川・江戸川流域は、中流でもあまり地盤を良くないです。
表層地盤増幅率が2倍になると、震度が0.5上がる(たとえば震度6→震度6強)といわれています。
東京沿岸部と西部では、同じ地震でも、震度1程度変わることとなります。
強い地震の場合、この差は大きいでしょう。
東日本大震災でも壮絶な被害となりましたが、地震による津波も大きなリスクです。
想定される地域は、国土交通省の重ねるハザードマップで確認できます。
また、海岸線のある自治体では、津波のハザードマップを公開しています。
海辺の町へ移住する方は、要チェックです。
水害・土砂災害
台風や大雨のリスクですが…
大きな河川の近くは、やはりリスクが高いでしょう。
国土交通省の重ねるハザードマップで確認できます。
また、自治体でも、ハザードマップを公開しています。
マンションの洪水リスクは、住宅情報サイトのライフルホームズでも検索できます。
また、仲介する不動産会社に、資料を請求しましょう。
河川の氾濫ですが…
同じ川でも左岸と右岸とで、堤防の高さが違う場合があります。
たとえば、荒川の下流部などは、都心側は高く、江戸川区側は低いのですね。
当然、低い方へ水は溢れ、洪水となります。
これは、お上は公には言わないけれど、都心を守るためでしょう。
造った当初は、江戸川区側は田畑が多く人も少ないから、ある程度の犠牲は厭わない、とも邪険できます…
急速に住宅地となった地域は、このようなリスクがあるかどうか、リサーチしたほうが良いでしょう。
土砂災害も、国土交通省の重ねるハザードマップや、自治体のハザードマップで確認しましょう。
山間の建物もそうですが、川近くの崖に建てたマンションなどは、土砂災害のリスクがあります。
中には、こんな所に造るのか、という傾斜地のマンションもあります。
エントランスが5階くらいで、1階の人はエレベーターで下るようなマンションもあります。
土砂災害や地すべりのリスクのある場所は、不動産の契約時に業者は説明義務があります。
誠意のない不動産業者の場合、セールスの時は、言わないこともあります。
契約時の「重要事項説明」には盛り込まれています。
疑問点があれば、納得のいくまで、しつこく質問したほうが良いですよ。
火山のリスク
巨大火山噴火は、ひとつの文明をいとも簡単に、滅ぼしてしまいます。
例えば、ベスビオス火山の爆発で、火砕流に埋まってしまったポンペイなどは都市が消滅しました。
日本でも、仮に、九州の鬼界カルデラで大規模な噴火が起これば、関東にも大量の火山灰が降り、おそらく日本の半分以上は、壊滅状態となるでしょう。
ただ、そこまで心配していては、住む所が無くなりますよね。
災害は、規模が大きければ頻度は少なくなり、小さければ頻繁に起こります。
火山のリスクに関しては、とりあえずは、火山の中に住まないことでしょう。
火山の中に住む人なんているの、と思うかもしれませんが、箱根や阿蘇などでは、普通に町があります。
伊豆大島なども、島全体が火山ですよね。
火山近くの町では、ハザードマップが作成されています。
火砕流や火砕サージ(高熱の爆風)、火災泥流などがシミュレーションされています。
それらを参考にし、リスクを把握しましょう。
リスクをどの程度、容認するのか?
リスクがあるから、ダメなのか?
筆者の住む、東京都・青梅市には、多摩川沿いに多数のマンションが建てられています。
多摩川の土手の急傾斜に、清水寺のように建てられたマンションもあります。
当然、土砂災害警戒地域に、指定されています。
そのような場所に住むべきではない、のかもしれません。
ただ、災害がなければ、ベランダから多摩川が一望できる、素晴らしいロケーション。
それなりに対策を取って、建築許可が降り、施工されているのだから、土砂災害に合う確率は低いのでしょう。
要は、そのリスクを容認できるのか、ということです。
リスクと引き換えに、何かしらのメリットがあるのなら、それを受け入れるのは、その人の人生観です。
家族がいる場合は、自分だけの問題ではないのが思案のしどころですが…
海辺の町に暮らす人も、同じですね。
海が近くにあり、海が好きでそこに暮らすのなら、津波のリスクを知りつつ住むのなら、他人が干渉する話ではありません。
でも、リスクを知らずに、それを背負って生きるのは、虚しいですよね。
山に近い、台地が安全?
なんか、人生論めいてきましたが…
そうはいっても、安全な場所に住みたいですよね、やっぱり。
これまでの話しをまとめてみると…
- 水の近くはNG
洪水や、津波のリスクがある。 - なだらかな地形が良い
土砂災害や地すべりがない。 - 地盤が良い場所を選ぶ
下町より台地、それも、山間部に近い場所がベター - 火山が近くにない
つまり、山に近い台地に住むのが安全ということになります。
東京近郊ならば、関東平野の端っこで、川から離れている場所、が良いでしょう。
もちろん、個々の状況を調べて移住すべきですが、傾向としては、このような結論となります。
ポジショントークを、するつもりはありませんが…
そのような場所を選べば、都心に住むよりも、災害リスクは少ないでしょう。
特に、湾岸や下町に住んでいる方は、かなり安全になります。
つまり、「ほどいなか」への移住は、災害という観点からも、有意義なのです。
次回は、「ほどいなか」の交通事情、自家用車について、考えてみます。