【ほどいなかに住もう】その3…山派?海派?失敗しない、候補地選びのコツ

前回、筆者が移住した、東京都・青梅市を例に、「ほどいなか」のインフラや生活面での違いを、検証しました。
不便な印象の「ほどいなか」ですが、実際はさほどでもありません。
医療や福祉も、都区内と比べ、決して見劣りしません。

筆者が移住を考えた時、他にも幾つか、候補地がありました。
「ほどいなか」を自然環境で分類すれば…
大まかに「山に近いところ」と「海に近いところ」となるでしょう。
自分や家族の好みや趣味で、どちらが適当か判断すれば良いでしょう。
筆者は「山派」なので、基本、山に近いところで検討しましたが、海の近くも多少は考えました。
その候補地を、いくつかご紹介します。

●神奈川県・秦野市

丹沢の麓の町

神奈川県・秦野市は、丹沢の麓の町。
秦野・渋沢駅周辺は、商業施設も多く、生活に不自由はないでしょう。
市の中心部から登山口まで、5km程度。
とはいえ、市街地は比較的平らです。

丹沢からの夜明け(秦野市)
丹沢からの夜明け(秦野市)

鶴巻温泉があることでも、知られています。
市街地にも湧き水が多く、ミネラルウォーターもあるくらい。
野菜などは、地元産が安い印象です。
温暖な気候を活かし、みかんなどの栽培も盛ん。
無人販売所で、格安で売っています。

丹沢の麓の町ですが、意外と海も近いです。
丘陵をひとつ越えると、海。
バスで30分程度で海辺に二宮まで、出られます。
山も海もと、欲張りな方にも向いています。

数字で見る、秦野市

神奈川県秦野市
人口… 164,498人(2020年4月1日現在)
人口密度… 1,590人/km2
公示価格… 8万9470円/m2(2020年)
1住宅当たりの延べ面積… 86㎡(2013年)

東京都心への所要時間… 秦野〜新宿駅 約1時間8分(日中)
列車本数… 通勤時間帯・12本日中・7本程度(1時間あたり)

医師数… 218人(2016年)人口765人にひとり
財政力指数… 0.90(2019年)

客観的なデータも、見てみましょう。

人口密度は、東京23区の十分の一と、ゆったりとしています。
丹沢の山地も含まれていますが、住むには良いところでしょう。

公示価格、土地の値段も安く、1住宅当たりの延べ面積をみると、家も広いですね。
ただし、秦野市内は、中古も含め分譲マンションがやや少なく、マンション派(特に駅から徒歩圏内で買う方)は、住まい選びに時間がかかるかも。
値段的には、高い印象はありませんが、タマ数が少ないのですね。
ちなみに、2019年に秦野駅駅前に新築分譲マンションが発売されましたが、60㎡で4,000万円程度、町田駅徒園内のマンションと、さして変わりません。

賃貸だと、独身向けのワンルームも、結構あります。
都心より安いけれど、元々は投資用のマンションなのか、お得なのは少ないかも。
新婚夫婦向けの2LDKだと、月6万円の家賃で、お得感があります。

東京都心へのアクセスは、良好です。
所要時間は1時間を超えますが、列車本数が多く、利便性が高いです。
海老名で乗り変えれば、横浜も1時間程度の所要時間です。
通勤時間帯には、2本だけですが、秦野駅始発の列車があります。

医師数は少なく、ウィークポイント。(東京23区で、人口381人にひとり)
財政力指数(※)は、地方都市としては、立派な数値です。

※財政力指数とは
地方自治体の財政状況を計る数値。
数値が高いほど、健全な自治体です。
1以上ならば、税収だけでやり繰りできる非常に健全な自治体です。

筆者も、秦野へ移住しようかと、かなり真剣に検討しましたが…
両親が中央線沿線に住んでいるので、青梅に決めました。
きわめて、個人的な理由ですね。

●神奈川県・三浦市

リゾート地でもあり、ベッドタウンでもある、海の街

三浦半島最南端の、神奈川県・三浦市。
城ヶ島、油壺など、海のレジャーの盛んな町でもあります。
半島の端で、いわば海に囲われた町ですが、意外と起伏があります。
マグロで有名な、三崎港。
新鮮な海産物は、漁港のある町ならでは、です。
また、スイカやキャベツなどの栽培も、盛んです。

城ヶ島(三浦市)

鉄道は、京浜急行の三浦海岸駅と三崎口駅があります。
ただし、市の中心部の手前までしか来ていません。
三崎口駅からバスで15分程度、本数は頻繁にありますが、ちょっと不便です。
市の中心部か、それとも駅の近くに住むかで、利便性が変わります。

市街地、駅周辺ならば、スーパーやコンビニなどは、揃っています。
生活するには、さほど不便ではないでしょう。

数字で見る、三浦市

神奈川県三浦市
人口… 42,840人(2020年4月1日現在)
人口密度… 1,325人/km2
公示価格… 5万9622円/m2(2020年)
1住宅当たりの延べ面積… 99㎡(2013年)

東京都心への所要時間… 三崎口〜品川駅 約1時間5分(日中)
列車本数… 通勤時間帯・6本 日中・6本程度(1時間あたり)

医師数… 60人(2016年)人口744人にひとり
財政力指数… 0.62(2019年)

客観的なデータも、見てみましょう。

人口密度を見ると、先の秦野よりほぼ高い程度で、やはりゆったりしています。
公示価格、土地の値段は青梅や秦野よりかなり安く、1住宅当たりの延べ面積も広いです。
99㎡というと、4LDK〜5LDKくらいです。
戸建てが主流なのでしょう。
住居面では、かなり恵まれています。

三浦市の西海岸、油壺などは、リゾート地でもあります。
別荘・リゾートマンションなども多く、価格も高め。
リゾートマンションで、展望大浴場などの設備などを備えていると、管理費が高めです。
同じ市内でも、リゾート物件と、一般の物件の価格差がとても大きいです。
高くても構わないのならば、リゾート物件を購入するのもアリですが…
住居費が安いのも「ほどいなか」のメリットなので、よくよく考えたほうが、良いかも。

海沿いの町での家探しは、津波の被害を予め確認しておくこと。
ハザードマップを市町村が公開しているので、確認しましょう。
津波も含めて、災害に対するリスクが全くのない場所は、ありませんが…
リスクを承知で住むのと、知らないのとでは、大きいな違いです。
分譲マンションは中古も含めさほど多くありませんが、安いです。
賃貸もリーズナブル、居住費を安く抑えたい方には、向いています。

東京都心へのアクセスは、1時間強。
ただし、品川なので、やや都心から外れています。
列車本数は、不思議なことに、通勤時も日中も変わりません。

医師数は、秦野と同程度で、やや劣っています。
財政力指数は、やや見劣りします。
市の規模が小さい地方都市としては、健闘していますが…
数字上は、福祉・行政サービスが多少劣っている印象です。

都心へのアクセスが良く、海に近い所に住みたい人には、良いロケーションですね。
リゾート物件でなければ、住居費が安いのも魅力です。

昔勤めていた会社の同僚が、三浦海岸から通っていました。
リモートワークなどが一般化する前なので、毎日です。
ノビノビとお子さんを育てたい、から引っ越したのだそう。

●茨城県・つくば市

地方都市の鑑のような、ハイスペック学園都市

筑波大学を中心とした学園都市、つくば市。
茨城県では水戸市に次いで、人口の多い市です。
というか、何となく「茨城」っぽくないですよね。
光が丘が練馬っぽくないのと、似た感じ。

市の面積は広く、人口密度も低いです。
市街地も道路が広く、ゆったりしています。

筑波神社(つくば市)

筑波山を始め、自然環境も優れています。
もっとも市街地から、20kmほど離れているので、意外と遠いのですが…
市街地は関東平野の北の端、「山の中」というイメージではありませんね。

市街地に住んでいれば、ショッピングセンターなども充実し、不満はないでしょう。
学園都市だけあり、文教面は、驚くほど充実。
また「自転車のまちつくば」を標榜しているでけあり、自転車道路の整備にも力を入れています。
研究所なども数多くあり、何というか、街全体のリテラシーが高いのですよね。

数字で見る、つくば市

茨城県つくば市
人口… 238,014人(2020年4月1日現在)
人口密度… 849人/km2
公示価格… 6万8116円/m2(2020年)
1住宅当たりの延べ面積… 93㎡(2013年)

東京都心への所要時間… つくば〜秋葉原駅 約45分(日中)
列車本数… 通勤時間帯・9本 日中・6本程度(1時間あたり)

医師数… 1,317人(2016年)人口172人にひとり
財政力指数… 1(2019年)

人工密度は、かなり低めです。
山間部もそこそこありますが、平野部を活かした農地が多いのでしょう。

公示価格も低めです。
ただし、市街地はそれなりにします。
つくばエキスプレス開業後、マンションの分譲が盛んになりました。
新築マンションもコンスタントに建てられていますが、3LDKで3,000万円台、お値段はそれなりにします。
中古マンションなら、かなり値は下がりますが、築浅の物件が中心、かつ広めの家が多いので、2,500万円を切る物件は少ないようです。
賃貸は、手頃な物件が、結構あります。
駅から徒歩圏内の2LDKで、7万円くらいの予算感でも探せますよ。

東京への、アクセスは良好です。
通勤時間帯でも、約1時間で秋葉原まで行けます。
毎日通勤でも、さほど苦にはならないレベル。
難癖を付けるならば…
ターミナルが秋葉原で、地下鉄への乗り入れもないので、都内での移動がちょっと面倒かもしれませんね。

医師数は、飛び抜けて多いです。
人口あたりの医師数は、東京23区の倍以上。
筑波大付属病院などの、大型病院があるからでしょう。
財政力指数も、優良です。
国からの援助がなくとも運営できる財政基盤で、自主性の高い自治体です。
数字で見る限り、ほぼ最強の地方都市です!

自然を楽しむ、という点では、ちょっと都会的すぎるかもしれませんが…
利便性と居住環境のバランスでは、ピカイチでしょう。

●自分にあった「ほどいなか」とは?

旅人の視点→生活者の視点

前回の青梅市と併せて、4つの「ほどいなか」を検証してみました。
実際の候補地選びは、何となくは「知っている町」でしょう。
例えば、海が好きならば、海辺の町はある程度知っているだろうし、行ったことのある場所も多いでしょう。
たとえば、三浦、横須賀、逗子、大磯、小田原、みたいに…
取っ掛かりは、その中から検討するのも良いでしょう。

でも、今までは「旅人の視点」でしか、見ていないですよね。
実際に移住するときには、生活者の視点でも、検討してください。
良い点、悪い点、それぞれあるでしょう。
その中で、優先すべきもの、妥協できるものは何か?
よく吟味して、検討ましょう。

現地を、観察しよう

家探しをする時、現地へ行く機会もあるでしょう。
その際、家だけではなく、周辺環境も確認しましょう。

  • 買い物する場所
    品揃えや店の雰囲気など。
  • 学校や保育園
    通学路などを確認。坂道の有無や交通量などもチェック。
  • 交通機関
    バスの本数や、駅前にタクシーがいるかどうかなど。
  • 騒音や匂い
    田舎だからといって、静かとは限らない。ダンプカーがやたら走る道などもある。
  • 金融機関・郵便局など
    ネットでも確認できるが、現地でもチェック。
  • 地形
    たとえば、駅まで、坂道が多いと大変。
  • 町の雰囲気
    そして、何より、町の雰囲気がどうなのか?

全ての面で優れた場所は、有りませんが…
妥協できるポイントと、譲れないポイントを、自分に問いかけるようにしながら検討しましょう。
理屈だけではなく、町との相性もありますしね。

次回は、実際の家探しについて。
マンションが良いのか、それとも戸建てが良いのか?
幾つかの視点で、考えてみます。