青梅市、御岳山・奥の院。
貴重な野草と展望が楽しめる山です。
都心からのアクセスも良く、ケーブルカーでラクラク登山。
春は準絶滅危惧種のイワウチワも、ひっそりと咲きます。
目次
花を求めて、御岳山・奥の院へ
歴史ある、武蔵御嶽神社・奥の院
御岳山頂の武蔵御嶽神社。創建は崇神天皇の御代とも伝わる、歴史ある神社です。
武蔵御嶽神社は、おいぬ様（ニホンオオカミ）を祀る神社。
伝説では…
東征の際、日本武尊（やまとたけるのみこと）は、御岳山で白い狼に助けられます。
田畑を荒らす害獣を退治する狼は、農民にとっては頼もしい存在。
江戸時代、農村を中心に武蔵御嶽神社の狼信仰が、急速に広がります。
奥の院は、日本武尊を祀る男具那社が鎮座。今なお、山岳信仰を色濃く残る霊山です。
山頂・神社の遥拝所から、ひときわ高い奥の院が望まれます。
二等辺三角形のような形で、急登の道を登る、ちょっぴりスリリングな山です。
御岳平から、天狗の腰掛けへ
JR青梅線・御嶽駅からバスとケーブルカーを乗り継ぎ、山頂駅へ。
ケーブルカーを降りれば、標高831mの御岳平。
都心より2週間ほど遅いソメイヨシノも、花を咲かせます。
日の出山（写真・右）を背景に、春の彩りも美しい森！
今回は、富士峰園地を経由して、御岳山方面へ向かいます。
レンゲショウマで有名な富士峰園地ですが、春はカタクリの花が咲き乱れます。
富士峰園地・レンゲショウマの詳細は上記をどうぞ。
大塚山方面への分岐から、東の道を進み、御嶽神社方面へ。
木々の間から、奥の院が望まれます。あのトンガリ山に登るのだから、急登覚悟ですね。
ビジターセンター付近で参道と合流し、御嶽神社方面へ。
途中、国天然記念物の神代ケヤキの下を通ります。幹囲8.2m、樹高約30mの巨木です。
ニッコウネコノメも咲いています。
沿道の斜面にはカテンソウ。漢字だと「花点草」と書くくらい小さな花です。
茶店街を抜け、鳥居をくぐり、随身門へ。
随身門から少し石段を登ると、分岐点。道標に従い「大岳山」方面へ進みます。
時間があれば、御嶽神社を参拝するのも良いでしょう。詳しくは上記をどうぞ。
ほぼ平坦な道をしばらく歩くと、長尾平分岐に到着。
アルプス三大北壁・冬期単独初登攀の、世界的クライマー・長谷川恒男さんの記念碑があります。
享年43歳、雪崩に巻き込まれ、山で亡くなった長谷川さん。そういえば、植村直己さんも43歳で亡くななり、登山家にとって「魔の年齢」なのでしょうか？
長尾平から大岳山方面へ250mほど進むと、「天狗の腰掛け」に到着します。
まさに天狗が腰掛けられるような枝ぶりの杉。推定樹齢350年、赤穂浪士よりも前なのだとか！
天狗の腰掛けから、奥の院へ
天狗の腰掛けから、指導標に従い「奥の院」方面へ。
斜面を巻くように登り始め、やがて尾根道となります。御岳山付近ではかなりの急登です。
根の張る道を、転ばぬように足を運びます。
管理用でしょうか、御神木にはナンバープレート。
「橘姫命」の碑が現れます。日本武尊の妃・弟橘媛（おとたちばなひめ）を祀ります。
日本武尊の東征時、浦賀水道（東京湾）を渡る際、海が荒れました。海神の怒りをしずめるため、弟橘媛は海に身を投じます。
ちなみに、千葉・袖ヶ浦は、弟橘媛の袖が流れ着いた伝説が由来です。
途中、展望が開け、日の出山が望めます。晴れれば、東京湾も見渡せます。
最愛の妻・弟橘媛が身代わりとなり沈んだ海。何を想い、日本武尊は海を眺めたのでしょうか？
奥の院の登りには、鎖場も。さほど危険ではありませんが、注意して歩きます。
急登を和ませるカタクリ。
急登を登り切ると、男具那社（おぐなしゃ）に到着。日本武尊を祀る神社です。男具那社への石段を登り、左へ進みと、奥の院・頂上。
修行の場として、山伏が駆け巡った、山岳信仰の頂です。
山頂には祠があり、木々の間から大岳山も見えます。
サッポロビールの黒星が供えられていますが… 北極星を頼りに、開拓へ向かった北海道のシンボルです。
北極星の神＝海の安全を見守る妙見信仰と、海に死した弟橘媛が結びついた神社も各地に点在します。 その意味も込め、黒星をお供えしているでしょうか？
奥の院の希少植物、イワウチワ
御岳山には、準絶滅危惧種のイワウチワが自生しています。
日当たりの良い岩場に咲くイワウチワは、奥の院周辺にもひっそりと咲きます。
盗掘の恐れもあり、自生地の詳細はご容赦を。
イワウチワは、直径3cmほどの薄紫色の花。日本の固有種で、涼しい所に咲きます。
スミレの沿道を往き、御岳山ケーブルカーへ下山
奥の院から男具那社へ下り、ロックガーデン方面へ下ります。
かなりの急坂で、ストックがあると安心です。
巨大な猿の腰掛。直径30cmくらい、ホントに座れそうな大きさです。
道端にはスミレの花も。
小さな白いスミレは、フモトスミレでしょうか。
春うらら、春笑う、春の御岳山。
坂を下りきると、「奥の院口」。御岳山〜ロックガーデン・大岳山を結ぶ登山道に出ます。
キレイなトイレもあります。
左折し、北西方向の御岳山ケーブルカー山頂駅へ。
手入れの良い巻き道を漫歩します。
岩に染み入る、タチツボスミレ。
エイザンスミレも咲いています。
山の斜面に咲く、フデリンドウ。小さな命の力強さよ。
独特の形が美しい、ミヤマキケマン。ケシ科の植物でアルカロイドを含む毒草です。
同じくアルカロイドを含むハシリドコロ。フキノトウと間違え、中毒事故が絶えない植物です。
意外にも美味しいとのこと、美しい悪女といった感じでしょうか？
こちらも毒草のホソバテンナンショウ。サトイモの仲間です。
新緑が目に染みます。
ヤマザクラの彩りが、山を染めます。
振り返ると、先ほど登った奥の院が。
御嶽神社の下を通り、御岳集落へ。
お腹が減ったら、茶店で舌鼓を打つのも良いでしょう。
ちょっと寄り道となりますが、日の出山方面の南山荘のジュースも絶品です。
赤い鳥居を過ぎれば、まもなくケーブルカー山頂駅です。
御岳山周辺には、他にもイワウチワの自生地があります。
レンゲショウマの季節も花が充実です。
インフォメーション
マップ
ケーブルカー御岳山駅 …〈40分〉… 天狗の腰掛け …〈40分〉… 奥の院…〈20分〉 … 奥の院口 …〈1時間〉… ケーブルカー御岳山駅
ー計2時間40分ー
●アプローチ
JR青梅線・御嶽駅より、西東京バス「ケーブルカー下」行・終点下車、御岳登山鉄道（ケーブルカー）へ乗り換え
コースの状況など
- 奥の院への道は急坂。下りはストックがあると楽。
- トイレは、ケーブルカー駅、御岳平園地、ビジターセンター、御嶽神社、長尾平、奥の院口にあり。
- イワウチワの開花は、例年4月上旬〜下旬。
