田舎へ移住する際、気を付けたいのは、土地の成り立ち。
風光明媚な田舎、特に山や丘陵に近い町は、人の手を加えた土地・造成地も多いのです。
現在地や、移住場所など、造成地の確認をする方法とは?
国交省「重ねるハザードマップ」の活用法を、紹介します!
テレワーク時代の、「程よい田舎暮らし」を考察する、ほどいなかシリーズ。
実際に「ほどいなか」に移住した経験をもとに、連載します。
住まいを選ぶ
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仕事は?
青梅・西多摩地区への移住
目次
田舎への移住では、土地の成り立ちを調べたい
東京のニュータウンに多い、盛土の大規模造成地
2021年7月の豪雨で大規模な土石流の起きた、静岡県・熱海市。
土石流の最上部は、盛土の造成地でした。盛土全体が崩落し、大惨事となりました。
全ての盛土造成地が、危険ということではありませんが…
でも、引越しや移住をする際は、自分の家の場所が、どのような成り立ちかを知りたいですよね。
実は、盛土などの造成地は、伊豆のような山間部に近い町以外にも、多いのです。
下記は、首都圏の「大規模盛土造成地」の分布です。
地図上の黒い部分が、「大規模盛土造成地」。
大規模盛土造成地とは、文字通り、盛土の造成地の中でも、規模の大きな場所です。
東京都では、八王子市、町田市、多摩市、日野市にかけてが多いですね。
この地域は、多摩ニュータウンなど、東京のベッドタウンとして、1960年代から開発されました。
また、大規模造成地の他にも、規模が小さいながらも、盛土はとても多いです。山の近くだけではありません。東京都心にも数多くあります。その実態はいかに?
盛土とは?
まず、盛土について。
造成地には、盛土、切土、埋立てなどがあります。
- 盛土
斜面や谷間に、土を盛って平らに造成 - 切土
傾斜地などを、土を切り出して平らに造成 - 埋立て
海や湖などを陸地に変えること
丘陵を住宅地にする場合、地面をなだらかにしないと、家が建てにくい。そこで谷を埋め(盛土)、山を削り(切土)ます。埋立ては、夢の島などでおなじみの、人工島みたいなものですね。
盛土には、谷埋め型と、腹付け型があります。
全ての造成地が、危険とは限りませんが…
地震での地滑りや、今回の熱海のような豪雨での土砂災害の危険性が高い場所もあります。
その点を踏まえ、国土交通省では、造形地の状況が分かる「重ねるハザードマップ」を公開しています。
重ねるハザードマップで見る、多摩ニュータウンの今昔
重ねるハザードマップは、水害、土砂災害、地形などが把握できる、災害・防災の総合サイト。今回は、都内の造成地がどの程度なのか、見てみます。
まずは、造成地の多い多摩ニュータウン。一例として、南大沢駅周辺を見てみましょう。
この周辺が危険、というのではありません、予め、お断りを。
上の地図のグリーンの部分が、「大規模盛土造成地」です。駅の周辺一帯が、盛土ですね。
重ねるハザードマップでは、昔の航空写真の表示も可能。
1960年代の写真と、重ねて見ると…
赤い十字が現在の南大沢駅の地点ですが、昔この付近は、川沿いの田んぼ、いわゆる谷地のようですね。
イメージとしては、上のような所です。ここは横浜市・寺家ふるさと村で、東京近郊としては、珍しく残っている谷地です。
今は、洒落たショッピングモールやアウトレットなどがありますが、50年前までは、農村だったのです。
次に、「地形分類(人工地形)」を見てみましょう。最新の写真と合成してみました。
ほぼ、全域、造形しています。
赤い部分が盛土、水色が切土。谷を埋め、山を削った様子が分かりますね。
実は都心でも、盛土は多い
渋谷は昔、川だった?
重ねるハザードマップの「地形分類(人工地形)」では、大規模盛土造成地以外の状況も分かります。
これを見ると、郊外はもちろん、都心でも盛土・切土が結構あることに気が付きます。
暗渠も含め、川の周辺などは、ほとんど盛土をしている事が分かります。
一例として、渋谷周辺を見ましょう。十字マーク付近が、渋谷駅です。
赤いエリアが盛土、水色が切土です。
傾向としては、川の付近に土を盛り、その周辺部を削って造成しています。
目黒川流域、そして、渋谷駅の辺りも、「渋谷川」があります。都市開発で、上流部は暗渠となったり、下水道となったりして、面影はありませんが。
そもそも、「渋谷」という地名も、渋い色の谷、つまり、関東ローム層の赤土が流れ込む川、だったのですよね。
東京都心は、小さいながら川も多く地形が複雑。暗渠が多く、気が付きませんが、驚くほど、造成地が多いのですね。
川の近くでは、床上浸水などを防ぐために「積極的盛土」をする場合もありますが… でも、それは水害が多いエリア、いうことに、他なりません。家選びは、慎重に。
東京・東部を見てみましょう。江東区・東陽町近辺、海面より低い、いわゆるゼロメートル地帯が広がります。
江東区や江川区は真っ赤で、ほぼ全域、盛土ですね。江戸時代以前は海だった場所、盛土というよりも埋め立てに近いのでしょうが…
当然、地盤も悪く、水害にも弱い地域です。この付近は、地震による液状化が怖いですね。
武蔵野台地・多摩川流域には、造形地が少ない
上は、武蔵野市・小金井市・国分寺市付近。いわゆる武蔵野台地の住宅地です。川の近く以外は、造成地が少ないですね。
昔からの街道や上水沿いは、好立地が多いです。昔の人は、知恵があったというか、無理をしなかったのでしょう。
武蔵野からさらに西、青梅市・羽村市周辺です。この地域は郊外ながら、多摩ニュータウン近辺ほど、無理な宅地開発がされていません。
山裾、山中を除くと、好立地が多いですね。山間部に近いので、地盤も強固です。
また、多摩川も比較的、都心の川のような無理な造成は、していません。というよりも、特に上流では、谷が急峻で宅地向きではない、のでしょうが。
もっとも、自然の地形であっても、川沿いは、土砂災害の多い所も多く、要注意。
特に崖に造られたマンションなどは、慎重に検討しましょう。
当サイトは、西多摩地区の情報サイト、身贔屓かもしれませんが… 青梅など西多摩は、地震などの災害リスクが低いのも、事実。郊外移住をご検討の際は、俎上に乗せてくださいね。
東京各地をかいつまんで、見てみました。
普段、あまり意識はしていませんが、造成地が多いことに驚きませんか?
テレワークの普及などで、郊外への移住が注目されますが…
郊外でも、近年宅地開発された地域と、昔ながらの台地があります。
もちろん、造成しているから危険、という訳ではありませんが、自分の住む場所の「成り立ち」を調べるのも、大切でしょう。
重ねるハザードマップの使い方
ハザードマップで造成地を見る方法
国土交通省が提供する、重ねるハザードマップ。
全国主要部の造成地を、ピンポイントで調べることが出来ます。
トップページから「地形分類」を選びます。
「すべての情報から選択」をクリックします。
「情報リスト」から「地形分類(人工地形)」と「大規模盛土造成地」を選びます。
左側にリストが、反映されます。目的のリストをクリックすると、表示・非表示が切り替わります。
説明が煩雑となりましたが、実際に操作してみれば、分かるかと。
「地形分類(人工地形)」は、盛土や切土の確認が出来ます。広域で表示した際、黄色や水色、緑色などで覆われたエリアのみ、ジャッジメントできます。
「大規模盛土造成地」は、特に大規模な盛土のエリアが確認できます。
大規模な地震の時、滑動崩落等の被害が発生した盛土造成地の実態を踏まえて、大規模盛土造成地の概ねの位置を示したものです。
航空写真との合成も可能。
「すべての情報から選択」→「写真」から、年代別の写真が選べます。
現在だけではなく、昔の状況も分かりますよ。
なお、国土交通省のサイトとはいえ、多少の漏れはあります。特に、戦前など昔に開発された場所は、表示されないことも多いようです。
川や山の近くに引っ越しを検討するならば、不動産会社やインスペクターを通じて、更なる調査をしたほうが良いですね。