奥多摩の海沢渓谷(うなざわけいこく)。
東京屈指の渓谷で、海沢三滝をはじめ、美しい清流も魅力です。
苔むす海沢渓谷を登り詰め、大岳山へ。
歩く人も少ない、静かなバリエーションルートです。
目次
海沢三滝から登る、大岳山・御岳山への山旅
奥多摩駅から海沢園地へ
奥多摩三山のひとつ、大岳山。今回は海沢渓谷(うなざわけいこく)から登ります。
起点はJR青梅線・奥多摩駅。洒落た木造駅舎が、旅情を誘います。
なお、駅から大岳山までの標高差は約920m、奥多摩の山としては、登り甲斐があります。
奥多摩駅から、都道184号を南東方向へ。多摩川の渓谷美を楽しみつつ、歩きます。
駅から2.2kmほど進み、「城山トンネル」手前の道を右へ。
50mほど進み、「アメリカキャンプ村」の看板がある林道を、右折します。
アメリカキャンプ村の横を通り、林道を上ります。
途中、照明のない「海沢隧道」を通ります。長さ50m程度でしょうか。
海沢谷の、苔むした渓谷。初夏はホタルも舞う清流です。
道沿いに、地図にない滝も現れます。
井戸沢から海沢に注ぐ、天狗岩の滝。落差10mの優雅な滝です。
天狗岩の滝から350mほど進むと、標高約540m・海沢園地に到着。トイレもあります。
海沢園地・海沢三滝は、上記でも詳しく紹介。併せてご覧下さい。
海沢三滝巡り
海沢園地より沢沿いに100mほど進むと、三ツ釜の滝に到着。落差18m・三段の滝です。
迫力あるダイナミックな姿は、見飽きません。
滝壺近くまで近寄れますが… 水量の多い時は、無理をしないほうが無難かも。
三ツ釜の滝・右手の鉄梯子を登り、大岳山方面へ。
木の根の張る、滑りやすい道を往きます。
三ツ釜の滝・上部の横を通ります。ナメも美しい、優雅な流れです。
ネジレの滝への分岐。一旦、メインルートから離れ、沢へ下ります。
沢沿いの道は岩場もあり、慎重に通過します。
落差10.8mのネジレの滝。名前の通り、上下段の滝がねじれています。
落差はさほどではありませんが、これほどの名瀑が東京にあることに驚愕!
分岐まで戻り、大滝方面へ登ります。
今にも倒れそうな道標のある、大滝の分岐点。
急坂を下り、滝へ降ります。ネジレの滝のような岩場はありませんが、落ち葉で滑りやすく、要注意です。
三滝で最も大きい、落差23.0mの滝。滝壺の周囲は広く、休憩するのも良いでしょう。
三滝をすべて廻ると結構、時間が掛かります。日没の早い秋などは、時間配分が難しいところです。
大滝から、大岳山へ
分岐まで戻り、大岳山方面へ。道標には「悪路」と記されています。
昭文社の登山地図では破線。やや上級者向きのコース。
明瞭でない箇所もあり、道迷いには要注意です。
とはいえ、ネジレの滝への下り道の方が険しく、技術的にはさほど難しくありません。
強いていえば「初級バリエーションルート」みたいな感じ?
しばらくは沢と並行する、斜面の道を歩きます。やや路肩の狭い箇所もあります。
道端には、ホコリタケ。少しでも触れると、中心の穴から胞子が飛びます。
やがて道は、苔むす沢へと下ります。
丸太のある付近で渡渉し、対岸へ渡ります。水量の多い際は要注意。
海沢園地から標高差・約260mの地点。なんと、ワサビ棚があります!
運搬用のモノレールも。
バリエーションルートですが… 東京都が設置した道標が、数ヶ所あります。
年季モノですが、GPSとリンクした管理番号標も表示。遭難救助の際も役に立つかと。
なお、海沢探勝路は沢筋のため、ほぼ携帯電話は圏外で、ご注意を。
枯沢となり急登に。25度を超える急斜面です。
ロープのある箇所も。
急登を登り切り、明るい広葉樹の尾根に到着!
急登の後だからか、緩やかに思える尾根を漫歩。秋は紅葉が綺麗です。
巻き道気味となり、やや急登を登ると、大岳山〜鋸山の縦走路に到着。
バリエーションルートが終わり、ひと安心です。
大岳山〜鋸山の縦走は、上記をどうぞ。
大岳山直下の急登を往きます。
一般道とはいえ、梯子もある道。気を抜かずに歩きます。
大岳山に到着。天気が良ければ、休日はもちろん平日も賑わいます。
殆ど人と会わない道を登ったのが、ウソのようです。
標高1,266m、二等三角点のある山です。
富士山も望める山頂ですが… 残念ながら雲に隠れていました。
大岳山から、御岳山ケーブルカー駅へ
大岳山からの下山道は、いくつかありますが… 最短で下れる、御岳山ケーブルカー駅へ。
山頂直下の岩場も。休日は渋滞することもあります。
しばらく下ると、大嶽神社・奥宮に到着。
拝殿前・左右に、可愛い「おいぬ様」が祀られています。大嶽神社には
「日本武尊東征の際、大岳山で道に迷い、二匹の狼が先導した」
との伝承が、あるそうな。
「おいぬ様」といえば、お隣の御岳山・武蔵御嶽神社が有名ですが…
物語のディテールは違うも両神社とも、「日本武尊が狼に助けられた」との伝説です。
ニホンオオカミは、農作物を荒らす鹿や猪などを寄せ付けない守護神。
農村を中心に、根強い信仰があるのでしょう。
拝殿の後ろには本殿。小さいながらも、本格的な神社です。
それもそのはず、奈良時代・747年の造立、歴史ある古社とされます。
境内の「鬼源兵衛の大石」。
逸話によれば…
江戸時代、大岳山麓に住む鬼源兵衛が、力試しに500貫(約1.9トン)の大石を担ぎ上げて奉納した、とのこと。
鬼源兵衛は実在し、玉川上水の工事で活躍したともいわれます。そのパワーがあれば、登山はさぞ楽だろうな… 羨ましいというか、妬ましい気分です。
神社の前には、大岳山荘跡があります。崩壊寸前で補強工事をしている模様。以前、村役場に問い合わせしたところ、再開等の話は聞いていない、との事でした。
なお、山荘前のトイレは使用可能です。
大岳山荘跡から御岳山へ向かいます。鎖場もありますが、比較的安全です。
登山道らしからぬ、転落防止の柵も。ビックリするくらい、整備が行き届いています。
しばらく進むと、なだらかな道となり、稜線漫歩気分です。
鍋割山の分岐を過ぎ、高岩山方面の道を分け、沢へ下ります。
ロックガーデン分岐、長尾茶屋を過ぎれば、武蔵御嶽神社の参道と合流。随身門を下れば、茶屋街となります。
茶屋でひと休みするも良いですね。紅葉屋では、山上の手打ちうどんが楽しめます。
御岳山集落を抜け、御岳山ケーブルカー山頂駅へ。ケーブルカーの最終は18時30分です。
ケーブルカー駅のある、富士峰園地からは都心方面の光景も。待ち時間にどうぞ。
山頂駅前の富士峰軒で、アツアツな蕎麦を頂くのも良いですね!
ケーブルカー、バスを乗り継ぎ、 JR青梅線・御嶽駅から帰途につきます。
インフォメーション
マップ
奥多摩駅 …〈40分〉… 海沢林道入口 …〈1時間〉… 海沢園地 …〈10分〉… 三ツ釜の滝 …〈20分〉… ネジレの滝…〈25分〉… 大滝…〈40分〉… ワサビ棚…〈1時間20分〉… 尾根…〈40分〉… 大岳山…〈1時間〉…鍋割山分岐…〈1時間〉… 御嶽神社茶屋街…〈30分〉… 御岳山ケーブルカー山頂駅
ー計7時間45分ー
コースの注意点など
- 海沢探勝路は、バリエーションコース。中級者〜上級者向きのコース。
- 沢沿いの道で1ヶ所、渡渉もある。増水時は要注意。
- 沢沿いの道は急登も多く、鎖場・岩場もある。
- トイレは、奥多摩駅前、都道・もえぎの湯付近、海沢園地、大岳山荘跡付近、奥の院分岐付近、長尾平、御岳ビジターセンター内、御岳山ケーブルカー駅付近にある。
- 逆ルートは体力的には楽だが、急な坂道の下りが辛い。また、登りよりも、ルートが分かりにくいのが難点。