中世から戦国時代にかけ、武蔵国を本拠地とした三田氏。
広大な森林を有する三田氏は、惜しみなく神社仏閣への支援。
文化への造詣も深い、パトロン的存在でした。
本拠地・青梅を中心に、三田氏ゆかりの史跡を紹介します。
武蔵国の名武家、三田氏
戦国の世に散る、中世の武家・三田氏
三田氏(みたし)は、現在の青梅市周辺を本拠地とした武家。
鎌倉時代、平将門の後裔と称し、最盛期には西多摩・埼玉県南部まで勢力を拡大しました。
戦国時代の1561年、三田氏(三田綱秀)は、上杉謙信の「小田原城の戦い」にも加担。
小田原城の城主・北条氏と対立します。
小田原城は落城せず、上杉氏は撤兵。その後、北条氏は多摩地方まで勢力を拡大します。
敵対する北条氏により、1563年頃に辛垣城は落城(辛垣の戦い)。三田氏終焉の地となりました。
地域文化を発展させた、三田氏
広大な山地を領地に持つ三田氏。森林資源、多摩川の通行権などをバックボーンに、地方豪族としては、裕福だったのでしょう。
室町時代から戦国時代にかけ、寺社仏閣の創建・復興に力を入れ、仏像や梵鐘の新造なども行いました。
三田氏は、文化的教養のある武家。
室町時代には、公家にして歌人の三条西実隆や連歌師・宗長などとの親交もありました。
武家ながら、地域文化を発展させた三田氏。全国的にはマイナーですが、地元・青梅では、今も絶大な人気を誇ります。
三田氏終焉の地、JR青梅線・軍畑駅には、三田氏の家紋「三つ巴」が掲げられています。
青梅・羽村の、三田氏ゆかりの史跡
青梅を始め西多摩では、三田氏ゆかりの史跡が数多くあります。
自然豊かな歴史散策が楽しめます。
青梅・勝沼城址
〜丘陵にたたずむ、三田氏の居城〜
青梅市・市街地にほど近い勝沼城。
鎌倉時代末期に築城の、三田氏の居城でした。
面積は約46,000㎡、東京ドームとほぼ同じ大きさです。
現在も土塁、空堀などが残り、城跡巡りができます。
本丸付近からは、市内を一望。低いながらも山城の風情があります。
JR青梅線・東青梅駅から、歩いて15分ほど。手軽な散策が楽しめます。
詳しくは、東青梅・大塚山から、中世の城・勝沼城跡を散策をどうぞ。
●勝沼城址
JR青梅線・東青梅駅より、徒歩15分
青梅・海禅寺と枡形城跡
〜三田氏の菩提寺と、展望の山城〜
三田氏の菩提寺・海禅寺。室町時代創建の禅寺です。春は桜やツツジも見事です。
三田氏の信仰も厚く、堂宇の整備などの支援も受けました。
三田氏終焉の地・辛垣城にも近い、山里の寺。
後北条氏により落城した際、海禅寺の伽藍も焼失しました。
境内には三田氏の供養塔、三田氏最後の首領、三田綱秀の首塚も。
プチハイキングとなりますが…
海禅寺から30〜40分程度登ると、三田氏の城とされる枡形城跡も。城跡からは展望も楽しめます。短い行程ですが、城跡へ登る場合は、滑りにくい靴などハイキングの装備が必要です。
海禅寺・枡形城址の詳細は、上記をどうぞ。ハイキングマップも掲載しています。
初夏の海禅寺はセッコクの花も咲きます。こちらも見逃せません!
JR青梅線・二俣尾駅より、徒歩10分
●海禅寺
住所… 東京都青梅市二俣尾4-963
電話… 0428-78-9447
青梅・天寧寺
〜三田氏創建の、源流の古刹〜
室町時代、三田氏宗(みた うじむね)が僧侶を招き、創建された天寧寺。
「天下安寧」を祈願し、寺号を「天寧寺」とするあたり、三田氏の思想がうかがえます。
三田氏寄進の銅鐘には「大檀那 平氏朝臣 将門之後胤 三田弾正忠 政定」と記載。
「平将門の後裔」をしっかりアピールしています。
境内には、霞川源流の池も。入間川、荒川を経て東京湾へと注ぎます。
お寺の方に声をかければ、見学可能です。
天寧寺の詳細は、上記の記事をどうぞ。勝沼城址までのハイキングコースも紹介しています。
天寧寺近くの虎柏神社も、三田氏由来の神社です。神社の裏参道入口まで徒歩5分程度、是非、お立ち寄りを。
JR青梅線・東青梅駅より、徒歩20分
●天寧寺
住所… 東京都青梅市根ヶ布1-454
電話… 0428-22-3566
青梅・塩船観音寺
〜三田氏お膝元の、ツツジの名寺〜
ツツジの名所として知られる、青梅・塩船観音寺。
山を囲う扇形の園庭一面に、ツツジの咲く様は、息を飲みます。
勝沼城からも近く、三田氏の支援のもと、室町時代末期には、本堂、阿弥陀堂、山門の建替も行われました。
三田氏は、親交の深い宗長を招き、塩船観音寺で歌を詠んだとか。
山里の寺での雅な文化活動、三田氏らしいエピソードでしょう。
塩船観音寺の詳細は上記をどうぞ。
春のツツジのみならず、初夏のアジサイ、秋の彼岸花も見事です。
JR青梅線・河辺駅北口より、都営バス「裏宿」行、または西東京バス河辺駅北口にて、「塩船観音入口」バス停下車、徒歩9分
または、JR青梅線・東青梅駅より、徒歩40分
駐車場… 有り(つつじまつり期間中は有料)
●塩船観音寺
Webサイト… http://www.shiofunekannonji.or.jp/
住所… 東京都青梅市塩船194
電話… 0428-22-6677
入山料… つつじまつりの期間中(4月中旬~5月上旬)のみ 300円
開園時間:8:00~17:00
青梅・武蔵御嶽神社
〜山岳信仰の、関東有数の名社〜
武蔵御嶽神社は、標高929mの御岳山頂の神社。
古くから山岳信仰の霊所と知られます。
伝承では、日本武尊が東征の際、御岳山付近で白狼に助けられたことから、御嶽神社の守護神となりました。
鎌倉時代には、畠山重忠が鎧や武具を奉納したとされます。
戦国時代の1511年、三田氏は社殿を建立。山上の社殿建設は多額の費用がかかります。三田氏は、武蔵御嶽神社の歴史上、重要な役割を果たしました。
山上の神社ですが、ケーブルカーを使えば、比較的楽に参拝できます。
「おいぬ様」の神社らしく、愛犬の祈祷も。近くの安産社では安産祈願も行います。
武蔵御嶽神社の詳細は上記をどうぞ。
参道には茶屋あり、山の上で手打ちうどんも頂けます。
足を伸ばせば、ロックガーデン・清流ハイキングも楽しめます。こちらは、4時間程度の長丁場、登山の装備が必須です。
JR青梅線・御嶽駅より、西東京バスにて「ケーブル下」バス停下車
御岳登山鉄道ケーブルカーにて「滝本」駅から「御岳山」駅下車
ケーブルカー山頂駅から、武蔵御嶽神社は、徒歩30分程度
※ケーブルカー「滝本駅」近くに駐車場有り(1日1,500円)
●武蔵御嶽神社
Webサイト… http://musashimitakejinja.jp
住所… 東京都青梅市御岳山176
電話… 0428-78-8500
羽村・武蔵阿蘇神社
〜多摩川沿いの、水難除けの神社〜
多摩川沿いに位置する、武蔵阿蘇神社。
古くは水難を鎮めるために、創建されたといわれます。急勾配の多摩川は暴れ川、水害も多かったのでしょう。
武蔵阿蘇神社の参道は、多摩川沿い。神社こそ高台にありますが、川沿いの参道は珍しいです。
天文5年(1536)三田定重が社殿を修復。広大な山地を持つ三田氏、運路の整備も大切な政策だったのでしょう。
秋は参道に彼岸花も咲きます。武蔵阿蘇神社のアプローチ等、詳細は上記をどうぞ。
春は多摩川の花見を楽しみつつ、武蔵阿蘇神社の参拝できます。
JR青梅線・羽村駅より、徒歩27分
または、羽村駅西口より、羽村コミュニティバス「羽村西コース」にて「一峰院」バス停より、徒歩6分
●武蔵阿蘇神社
Webサイト… https://www.aso-jinja.com
住所… 東京都羽村市羽加美4-6-7
電話… 042-554-3405
青梅・辛垣城跡
〜三田氏終焉の地、要塞の山城〜
戦国時代、小田原・後北条氏と対立した、三田氏。
居城の勝沼城から、山深い辛垣城へと、本拠地を移します。
辛垣城は、多摩川方面からの侵略にも強い地形ですが… 強力な後北条氏の軍勢に押され、落城しました。
一説によれば、家臣の裏切りもあったとのことですが、定かではありません。
現在、辛垣城跡は「青梅丘陵ハイキングコース」の一部。標高500m弱の尾根道ですが、意外とアップダウンもあり、登山に準じた装備で訪れましょう。
「矢倉台」など、見晴らしの良い場所には、辛垣城の関連史跡もあります。
辛垣城の詳細は上記をどうぞ。城までのアプローチ、城から青梅駅までのコースを紹介しています。
JR青梅線・二俣尾駅から、登山道を1時間10分程度。
コースの詳細は二俣尾駅からか辛垣城へ、野生ラン咲く、初夏の青梅丘陵を参照
インフォメーション
歴史・文化関係の記事
参考文献
- 武蔵御嶽神社Webサイト
http://musashimitakejinja.jp - 塩船観音寺Webサイト
http://shiofunekannonji.or.jp - 武蔵阿蘇神社Webサイト
https://www.aso-jinja.com - 福生市史
https://www.lib.fussa.tokyo.jp/digital/digital_data/connoisseur-history/ - おうめ文化財さんぽ 2024年改訂版
https://www.city.ome.tokyo.jp/site/provincial-history-museum/75643.html