標高759mの青梅・高水山。
都内近郊のハイキングコースとして親しまれています。
山上の常福院では、毎年4月には古式獅子舞を奉納。
ダイナミックな獅子舞が山上で繰り広げられます。
目次
山上の寺を舞う、高水山・古式獅子舞
標高714m、天空の寺・高水山常福院
「奥多摩登山の入門コース」といわれる高水山。
JR青梅線・軍畑駅から登れる、標高759mの山です。
山頂直下・標高714mには、真言宗の寺院、高水山常福院が鎮座します。
現在は、駅から直接歩く登山道がメジャーですが…
元々は、山の北側が表参道です。やや交通の便は悪いものの、登山道は整備されています。
麓に常福院・本坊があり、頂上まで、2時間弱の行程です。
表参道の詳細は、上成木・表参道から登る、高水三山をどうぞ。
創建は9世紀、空海の弟子の円珍ともいわれる常福院。
真言宗の総本山・高野山金剛峯寺の創建が816年で、ほぼ同時代の創建!
関東では、長い歴史を誇る真言宗の寺院です。
武蔵の国で伝承される、古式獅子舞
西多摩には、数多くの獅子舞が伝承されています。集落の神社で「五穀豊穣」「邪気払い」「疫病退散」などを祈りました。
主だった古式獅子舞の伝承を、地図にすると…
規模の差こそあれ、地元の保存会などの努力で、広範囲で伝承されています。
大抵は集落の神社で行われていますが… 高水山の場合、麓の本坊、山上の二ヶ所で行われます。
高水山の獅子舞は明和5年(1768年)、奥多摩・青木神社から伝承。青木神社は高水三山・西麓に位置し、交流があったのでしょう。
以後、250年間、太平洋戦争中も上演したのだとか。
高水山から大丹波方面の登山道の詳細は、上記をどうぞ。
獅子舞といえば、神社で行うのが一般的ですが… 高水山の場合、寺院で舞います。
想像するに、神仏習合の色合いが強いのかと。常福院の不動堂には、寺としては珍しく狛犬も鎮座しています。また、地域の土着信仰・山岳信仰的な「八百万神」だったのかもしれません。
高水山の古式獅子舞
高水山の古式獅子舞は、花祭り(4月8日)前後の土・日曜日に開催します。
土曜日は麓の本坊、日曜日は、山上の常福院で披露。
年により、開催日が異なるのでご注意を。2024年は、4月13・14日となります。
予約は不要、無料で見学できます。
4月となり、山でもツツジの美しい季節。万灯も花のように彩られます。
2023年の古式獅子舞の様子です。コロナ禍中で、演目を縮小しての開催。
本来は6庭(6パート)のところ、3庭での披露です。
10時30分位から開始、休憩時間を挟み、14時過ぎに終了しました。
まずは、獅子たちが不動堂前に並び、お宮参り。
高水山の獅子舞では、三匹が登場します。
- 小太夫(黒の獅子)…男
- 大太夫(金の獅子)…男
- 女獅子(赤の獅子)…女
男が2人、女が1人。当然、三角関係となるわけで…
奉納とはいえ、エンターテインメント要素が盛り込まれています。昔の山村の、数少ない娯楽だったのかもしれませんね。
では、獅子とは何か?
国や地域、生活様式によって、様々な解釈があるのでしょうが…
一説では、山村では、イノシシなど田畑を荒らす「害獣の象徴」といわれます。
確かに、獅子の鼻は、イノシシのそれをデフォルメしたような雰囲気です。
とはいえ獅子は「師子」とも書きます。
害獣ではあるけれど「導く存在=神獣」という意味もあるのかと。
自然の恵みと脅威、両面を併せ持つのが獅子なのでしょうか?
その「獅子」を神に捧げ、悪魔退散する儀式が、獅子舞なのでしょう。
お宮参りに続き、御幣懸(おんべいがかり)。悪魔退散の儀式です。
「御幣」といえば、神棚の前に飾られるお供え物。お寺での舞ですが、神道的な様式がうかがえます。
花笠を被った「ささら小娘」。4人1組です。
竹製のささら。擦って音を出す、摩擦楽器の一種なのでしょうか?
おそらく昔は、自分たちで作っていたのでしょうね。
気品ある音色の篠笛。
獅子の動きは、リズミカルでダイナミック。その迫力に圧倒されます。
途中、休憩時間が入ります。お昼を食べて、高水山方面を散策するのも良いでしょう。
稜線から、御岳山、その後ろには大岳山の勇姿も望めます。
クライマックスは、真剣で!
舞も佳境に。
太刀懸(たちがかり)と呼ばれる、悪魔退散を祈る舞です。
獅子の前に現れたのは、真剣を持った刀使い。
高水山古式獅子舞では、なんと「本物の真剣」を使います!
獅子と対峙する刀使い。キラリと真剣が光ります。
獅子に斬りかかります。見ているだけでヒヤヒヤもの。演じる方はさぞ大変かと。
頭上を真剣がかすめ、獅子の羽根が飛びます。
流れは急展開し… なんと、獅子に刀を渡します。
人間と獅子(=害獣・神獣の象徴)が和解した、と解釈すべきなのでしょうか?
真剣を咥えて踊る獅子。
大きく、力強く踊り…
ふたりの獅子たちが舞い、クライマックスとなります。
高水山の獅子舞は、装飾も凝ったもの。
江戸時代、この付近(現在の青梅市・成木地区)は石灰の産地として栄えていました。経済的に余裕があり、文化が発展したのでしょう。
成木地区・石灰の歴史については、上記をどうぞ。
ひとつのパート(庭)を覚えるのに3年ほど、6庭で18年ほどの歳月がかかると言います。
少子高齢化で、役者の確保が難しいとのことですが… 貴重な伝統芸能、次の250年間も伝承すると良いですね。
インフォメーション
アクセス
JR軍畑駅 …〈40分〉… 高源寺 …〈10分〉… 登山口 …〈50分〉… 常福院・不動尊
ー登り1時間40分ー
※コースの詳細は、上記を参考にしてください。
●高水山・古式獅子舞
開催日… 例年4月8日付近の土・日曜日
・2024年は、4月13・14日
開催場所…
・土曜日 常福院本坊 東京都青梅市成木7-119
・日曜日 常福院不動堂 東京都青梅市成木7-1131
Webサイト… https://takamizu.hp.peraichi.com
コースの状況など
- 軍畑駅〜高水山は、標高差約520m。下りは1時間20分程度。
- 常福院・不動堂裏にトイレあり。
- トレッキングシューズ、雨具等、登山装備が必須。