青梅市の岩蔵温泉。里山に囲まれた東京の隠れ湯です。
「フセギ」と呼ばれる、大きなワラジを吊るす文化を継承。
日本武尊ゆかりの立川断層・大岩とともに、歴史探索が楽しめます。
目次
東京の奥座敷・岩蔵温泉の、歴史旅
岩蔵温泉交差点から、「うえんでい」の縄文遺跡へ
青梅・岩蔵温泉は、東京北西部、埼玉県境にほど近い隠れ湯です。
かつては石灰の採掘で栄えた、里山に囲まれた、いわば「東京の奥座敷」ともいえる温泉。
古くからの伝承の残る里を、ノンビリ散策します。
JR青梅線・東青梅駅から都バスで20分少々、「岩蔵温泉」バス停で下車。
温泉に泊まるならば、車が便利ですが… 付近には駐車場が少なく、日帰りの時はバスが良いでしょう。
バス停から50mほど西へ進むと、岩蔵温泉交差点に到着。左折します。
交差点から20m進むと、湯場橋に到着。
湯場橋は黒沢川に架かる橋。黒沢川は、成木川・入間川、そして荒川に合流し、東京湾に注ぐ一級河川です。
橋のたもとに、「フセギ」があります。
フセギは、疫病や悪霊から村を守るため、大きなワラジを吊るす民俗行事。
村境に吊るし、村へ災厄が入らないように祀ります。
道祖神と同様、谷や尾根で区切られた集落を守る厄除けなのでしょう。
多摩地方や埼玉など、各地に残る風習で「お精進」と呼ばれることも。
青梅では数ヶ所の地区で、今でも継承されています。
橋のすぐ先に、温泉旅館の儘多屋(ままだや)があります。
儘多屋の若女将は、大学で文化人類学・民俗学などを専攻。なんと、卒論は「青梅市小曽木岩蔵のフセギ行事」です!
宿泊をして話を伺い、フセギ巡りをすると、深みを増すことでしょう。
儘多屋では、地元の野菜が売っていることも。
岩蔵野菜の詳細は、上記をご覧ください。
儘多屋の向かいは、CAFE YUBA。
眼下に池が見えるテラスで、コーヒーが飲めます。帰りに立ち寄ると良いでしょう。
儘多屋から200mほど進むと、右手に消防団があります。
消防団・向かって左側の木にフセギがあります。目立たない場所なので、ご注意を。
それにしても、消防団近くにフセギがあるのは、ちょっと出来すぎかも?
消防団右横の道を進みます。
柿の木もある小道を上ります。
畑の広がる丘陵へ!
この付近、地元では「うえんでい」と呼ぶそうな。
英語の”Wendy” かと思いきや、「上の台」が訛った言葉とのことです。
進行方向・右手に「岩蔵住居跡」。ちょっと寄り道します。
小道を往くと、窪地が現れます。
縄文時代中期(紀元前5〜4,000年程度)の遺跡です。
「この付近、畑を耕すと、土器の破片がよく見つかるのですよ」
と儘多屋の若女将。考古学ファン垂涎の「うえんでい」です。
岩蔵住居跡から、岩蔵御嶽神社へ
岩蔵住居跡・南西の三叉路を左折し、50mほど進むと右手に納戸があります。
納戸の前にフセギが吊られています。
納戸から引き返し、岩蔵住居跡手前の三叉路を直進します。
下りきると、岩蔵大橋に到着します。「大橋」という割には小さな橋ですが…
橋を渡り、左折して歩道を進みます。
都道28号線・新岩蔵大橋交差点に到着。横断歩道を渡り、都道を南西に進みます。
「東京炭鉱前」バス停。かつて、東京にも炭鉱があったのです!
もっとも、採掘されたのは亜炭とのことで、良質の石炭ではなかったようです。
バス停の少し先、進行方向・右側にフセギがあります。
「御守護」の札も祀られています。
新岩蔵大橋交差点へ戻り、都道を少し進むと、左手に「御岳神社」方面の道標があります。
80mほど進むと、右手に岩蔵御嶽神社に到着。
日本武尊・東征の折に創設したとされます。
神社近くの岩蔵会館。なんと、神楽殿にもなるマルチな会館です。
凜々しい狛犬も、一見の価値あり。
一説によれば、日本武尊が岩蔵に納めた鎧を、御岳山・武蔵御嶽神社に預けたのだとか。
里山の麓に佇む、由緒正しき神社なのです!
山の斜面の狭い境内ですが、見晴らし抜群です!
岩蔵御嶽神社から、愛宕神社・大岩へ
岩蔵御嶽神社から少し登ると、石倉禅院。
「奥多摩新四国霊場八十八ヶ所」の札所ですが、曹洞宗の禅寺です。
道ばたには可憐な野草も。
地元の方の作業車。
自称「ぐうたら村」とのことですが、皆さん働き者ですよ!
林道を進むと、やがて林へと移ります。
落ち葉を踏みしめ、大岩へ向かいます。
森には、お茶の花も。
愛宕神社に到着。後ろの岩が「大岩」です。
大岩は日本武尊ゆかりの地。東征の折、岩蔵温泉で傷を癒やし、岩の凹地に武具を納め、祈願したとされます。
神社の右には、フセギ。
霊山の趣きもある、厳かなフセギです。
高さ5mほどの断層が露出。目測ですが、幅も十数メートルはありそうです。
大岩は、立川断層の北端。ここから、多摩川・浅川の合流点付近まで南東方向へ伸びる活断層です。地震の要因ともなるため、大岩でも動きを計測しています。
見学が終わったら、来た道を引き返し、都道28号線を左折します。
都道にはうどん店の多喜山館も。
近くには、絶品ハンバーグが美味しいコンブリオも。英国庭園も美しいカフェレストランです。
起点の「岩蔵温泉交差点」手前、境沢橋にもフセギがあります。
これで6ヶ所のフセギをコンプリートしました。
あとは、「岩蔵温泉」バス停まで、数分ほど歩くのみです。
バスの待ち時間があるようならば、CAFE YUBAでコーヒーを飲むのも良いでしょう。
インフォメーション
アクセス
JR青梅線・東青梅駅南口より都営バス「成木循環」にて「岩蔵温泉」バス停下車
散策マップ
※6ヶ所のフセギ巡りで、1時間〜1時間30分程度
参考文献
- 青梅市の民俗
青梅市教育委員会 編 - 青梅を歩く本
青梅市教育委員会 編 - 岩蔵温泉マップ(PDF)
青梅市観光協会 - フセギの草鞋と百年前の恋文
Iwakura Experience
取材協力
- 儘多屋
https://mamadaya.com - Iwakura Experience
iwakura-experience.tokyo