秋留台地を走るJR五日市線。
かつて、武蔵五日市から、日の出町・武蔵岩井駅まで支線がありました。
沿線には、国の天然記念物・幸神神社のシダレアカシデも。
廃線跡を歩く、小さな旅へ出かけました。
目次
石灰鉱山へ通づる、五日市線廃線跡を旅する
五日市線・岩井支線とは
拝島〜武蔵五日市駅間の、JR五日市線。
約11kmを約20分かけて走る、東京・西多摩の路線です。
1925年、石炭輸送のため、拝島〜五日市まで、五日市鉄道として開通。その数カ月後、大株主の浅野セメントの鉱山、勝峰山・麓の武蔵岩井まで延長します。
1944年・太平洋戦争時に国有化。1961年に全線電化されます。
武蔵五日市〜武蔵岩井駅まで2.7km、約9分で運行。表定速度は時速18km、自転車と同じくらいでしょうか。
1971年まで、武蔵五日市〜武蔵岩井駅間の旅客運行を廃止。1981年には、貨物輸送ま廃止されます。
今回は、武蔵五日市駅から武蔵岩井駅跡まで、廃線跡を散策します。
途中、沿線沿いの幸神神社(さじかみじんじゃ)には、国天然記念物・シダレアカシデと、見どころも満載です。
武蔵五日市駅から、大久野駅跡へ
起点は、JR武蔵五日市駅。
駅出入り口・右に、西東京バスの自動販売機。子供も大人も嬉しいデザインです。
駅を降り、東へ向かいます。
秋川街道(都道31号線)を進み、高架橋をくぐります。
武蔵五日市駅は1996年に高架へ。それまでは、現在の駅前ロータリー付近が駅舎でした。
1979年・国土地理院の航空写真をトレースすると…
現在の高架橋東側に三内信号所がありました。
武蔵岩井方面への列車は、武蔵五日市駅から三内信号所へ。
信号所で方向転換し、スイッチバックして武蔵岩井へ向かいました。
上の写真は、現在の三内踏切第二踏切付近ですが…
武蔵五日市駅を高架にする際、岩井支線の跡地を利用。左の休線も残っているため、当時の雰囲気がイメージできます。
本線から別れた岩井支線は、北西方面へ。現在は私有地となっています。
現在のタクシー会社裏手に、鉄道が通っていました。
少し進むと、秋川街道の東側を並行しつつ、鉄道は敷設されていました。この付近は、近年盛り土をしたようで、随分光景は変わったと思われます。
道端にはヤマホタルブクロの花。
アルカリ性土壌を好む草で、石灰輸送の廃線跡に相応しいかも?
しばらく、秋川街道沿いに北上。もっとも、カーブに弱い鉄道ゆえ、緩やかに敷設されていました。
鉄道の境界塀と思われる塀。
途中、コンクリートに支柱のようなものが。鉄道と関係あるのでしょうか?
保養センター、工場、日の出町立大久野中学校の敷地を通ります。ほとんどが私有地となっていますね。
中学校の少し先、ラーメン店付近から、鉄道は西へ向かいます。この付近に踏切があったと思われます。
付近は宅地化が進み、鉄道の面影はありませんが… レトロな勝太軒理容所が旅情を誘います。
宮崎あおいさん主演の映画「ツレがうつになりまして。」や、夏帆さん主演のTVドラマ「ヒトリシズカ」のロケ地です。
ラーメン店から200mほど進むと「語らいとふれあい広場」。
駅の跡地だけあり、広めの公園です。
この付近が大久野駅でしたが、看板には記載もなし。せっかくなので、ひと言添えて欲しいかな…
屋根付きの立派なゲートボール場。子供用の遊具や砂場より、ずっとスペースがあります。
日の出町の高齢者人口は38%強(2020年)と高く、分からないでもありませんが…
ちょっと子供が可哀想な気もしますね。
幸神神社のシダレアカシデ
「語らいとふれあい広場」東側に、幸神神社のシダレアカシデの木があります。
標識に従い、路地を進みます。
坂を下ると、シダレアカシデの木があります。
シダレアカシデは、アカシデの変種。らせん状によじれた珍しい枝ぶりです。
カバノキ科の植物では、唯一の国指定天然記念物。
シダレアカシデの横に、幸神神社の鳥居があります。
鬱蒼とした参道を進みます。
石段を上り境内へ。
幸神神社は、1335年(建武2年)の創建とされます。京都の出雲路幸神社(幸神社)を勧請。
例年3月下旬に、幸神囃子保存会により重松流祭り囃子も伝承されています。
元々は江戸時代後期に、所沢の古谷重松が編み出した囃子の流派。
重松は、家業での仕入れで五日市へ足を運び、その縁で日の出町にも伝承されたといいます。
境内には絵馬も多く、地元に根づく様を実感できます。
幸神神社から、武蔵岩井駅へ
幸神神社から北へ50mほど進むと、交差点があります。
交差点から、砂利道が伸びています。ここが廃線跡ですが…
「私有地につき立ち入り禁止」の看板があります。
もっとも、その横に「勝峰山林道」方面への道標もあります。
地元の「勝峰山エリアプロジェクト」が、2022年に勝峰山頂に「幸せの鐘」を設置。
併せて登山道を整備しました。いわば、町の有志が地域おこしです。
ここは行政が調整して、回遊ルートとして欲しいですね。
右折し、都道184号線方面へ。
少し歩くと御殿橋に到着。橋の上からは、ちょっとした渓谷美が楽しめます。
都道184号を左折します。
都道184号線を100mほど歩くと、岩井橋交差点。左折し、橋を渡ります。
橋を渡ると、左手が武蔵岩井駅跡です。
現在は、太平洋プレコン日の出工場の駐車場となっています。
私有地のため、見学する際は許可を取りましょう。
駐車場の片隅に、「武蔵岩井駅」の説明版があります。
2016年までプラットフォームもありましたが、老朽化のため解体されました。
廃線から40年、当時を偲ぶには難しい歳月が経ちました。
想像力は必要ですが、1時間弱の散策。幸神神社と併せて、ノンビリ歩くことをオススメします。
インフォメーション
マップ
JR五日市線・武蔵五日市駅 …〈35分〉…幸神神社 …〈15分〉… 武蔵岩井駅跡…〈45分〉…武蔵五日市駅
ー計1時間35分ー