東京の最高峰、雲取山に一泊し、秩父の霊山・三峯神社へ往く山旅です。
頂上では満天の星と都心の夜景、そしてご来光。
大パノラマを満喫します。
苔むす森と、錦織の尾根の、歴史を噛みしめた道を歩きました。
目次
大パノラマの雲取山から、歴史ある参道を往く
満天の星が降る、東京最高峰
鴨沢から雲取山に登り一泊、翌日は秩父・三峯神社へ下る山旅の後編です。
前編では、平将門伝説の道を歩き、頂上までの行程を紹介しました。
雲取山で一泊すると、星空が楽しめることも。この写真は、11月上旬・新月の夜です。
よく見ると、流れ星のようなモノが写っていますが… 人工衛星で、願い事は叶えてくれません。
都心方面は、100万ドルの夜景。いえ、東京都のGDPは9,800億ドル、100万ドルどころのモノじゃありませんね。
情緒の無い話はともかく、都会の輝きの真上にも、星が瞬きます!
東の空が、徐々に明るくなり…
日の出を迎えます。
11月初旬だと、日の出は6時前後。夏みたいに早起きしないでも、観られます。
写真正面の山は鷹ノ巣山、右奥は大岳山です。
南には富士山。朝日に染まり、まさに赤富士です。
カラマツ越しの朝日。黄葉が、赤く輝きます。
日の出から30分もすると、日中の色合いに近づきます。富士山は冠雪、ひと足先に冬を迎えました。
笹の葉に霜が降り、輝きています。
雲取山には、一等三角点があります。意外にも富士山は二等三角点、日本で二番目に高い北岳は三等三角点。
一等三角点がエラい、というわけではありませんが、登った山にあると、何となく嬉しいですね。
マニアックな話になりますが…
雲取山には、一等三角点の他に、「原三角点」があります。
明治の初期、内務省が、全国50ヶ所ほど測量し、原三角点を設置しましたが… その後、陸軍が新たな測量体系を整備し、原三角点の大半は撤去。
日本に現存する原三角点は3ヶ所のみで、大変貴重なモノです。
雲取山荘を経て、白岩山方面へ
大パノラマを満喫したら、雲取山荘方面へ下ります。
埼玉と東京の県境の道、奥秩父らしい苔むした森を往きます。
登山道の祠。霊山へ続く道らしい雰囲気です。
日陰には、霜が降りた枯れ葉。秋とはいえ、朝は氷点下になることもあります。
頂上から30分程度で、雲取山荘に到着します。
これから先、水場はなく、給水して出かけます。
山荘から少し歩くと、テント場。木々に囲まれ、風の影響も少ない好立地です。
途中、急だけど短い男坂と、緩やかで長い女坂に別れますが、好みでどうぞ。
今回は、女坂を歩きます。
笹の茂る道。最近の山は、鹿が増えすぎて、笹が食い荒らされてしまい、ある意味、貴重。
渋いけれど、華やかな紅葉。
路傍の苔も美しい。
雲取山荘から40分ほど下ると、大ダワ。
ダワ(タワ)は「たわむ」の意味で、この付近で峠を表すそうです。
大ダワは標高1,700m、頂上から、かなり下りましたが… ここから、1,921mの白岩山に登り返します。
大ダワからは、尾根から外れ、巻道を歩きます。
長沢背稜方面への道を、分けます。ここで東京都とはオサラバします。
芋ノ木ドッケを巻く道は、階段などもあり、中々、登りごたえがあります。
大ダワから200m登り返し、白岩山に到着。山頂にはベンチもあり、休憩できます。
白岩山から、霧藻ヶ峰を経て、三峯神社へ
白岩山からも、アップダウンは続きます。
若いダケカンバが多い、白岩山周辺。1959年の伊勢湾台風で木がなぎ倒され、甚大な被害があったものの、徐々に、森は再生。まさに輪廻転生です。
白岩山から標高差160mほど下ると、白岩小屋の廃墟。
崩壊寸前の小屋には、毛布や電気釜らしきものも。まるで、夜逃げをしたかのような、侘しさです。初日に通った町営奥多摩小屋は閉鎖の後、責任を持って、撤去していますが…
やはり無責任な経営者だと、こうなるのでしょうか?
小屋跡から登り返し、前白岩山に到着。
前白岩山から、お清平まで急な下りが続きます。
鎖場も登場。さして険しくありませんが、雨の日などは、気を付けて。
鬱蒼とした森から、明るい雰囲気の、お清平に到着。
11月初旬、紅葉が見頃でした。
お清平から、霧藻ヶ峰に登ります。穏やかな広葉樹林の、歩いて気持ち良い道です。
霧藻ヶ峰に到着しました。休憩所もあり、土日祝に不定期営業です。
ギザギザな山容の、両神山も見渡せます。
霧藻ヶ峰まで来れば、もう登りは殆どありません。
霧藻ヶ峰か少々下ると、地蔵峠です。
名前の通り、祠に綺麗なお地蔵さんが、いらっしゃいました。
地蔵峠からはやや急な下りも、やがて、なだらかになります。
鬱蒼とした杉林と、明るい広葉樹林。
見上げると、紅葉・黄葉のシャワーです。
奥社のある、妙法ヶ岳の分岐に到着。
ここから、参道を歩いて、三峯神社方面へ向かいます。
コンクリート製の鳥居をくぐると、林道と合流します。
紅葉の名所・三峯神社だけあり、秋は息を飲む光景です。遠く、飛龍山が望まれます。
三峯神社の手前で、駐車場方面へ下るとバス停です。
狼信仰の三峯神社
このまま、帰路につくのも良いですが… 余裕があれば、三峯神社を参拝しましょう。
三峯は狼信仰、いわゆる「おいぬ様」の神社です。
森を守る犬神、「大口真神」を祀ります。
多摩・秩父は狼信仰が根強く、各地に点在しています。
例えば、東京・青梅市の武蔵御嶽神社なども、狼信仰です。
山の近くで開墾した場合、鹿などに田畑を荒らされます。ニホンオオカミを飼いならし、田畑を守った歴史と、狼信仰が結びつくのでしょうか?
秩父にほど近い信州・川上犬などは、猟師によって飼い慣らされたものですし、人間と狼は密接な関係だったことが伺えます。
また、三峰神社には、空海が安置した観音像をもあり、仏教色の強い側面もありました。
戦国時代には、京都の聖護院の関東総本山として、観音院高雲寺しても栄えました。
明治維新の神仏分離までは、権現様も祀っていたのです。
遥拝殿から、秩父の街が見渡せます。
三峯神社の境内はかなり広く、登山帰りに立ち寄って、全てを参拝・見学するのは、中々大変です。
「ついで」に参拝というのも失礼な気もしますし、折を見て、再訪するのも良いでしょう。
インフォメーション
登山地図
【鴨沢〜雲取山】
鴨沢 …〈40分〉… 登山口 …〈2時間〉… 堂所 …〈1時間〉… 七ツ石小屋分岐 …〈50分〉… ブナ坂 …〈50分〉… 奥多摩小屋跡 …〈40分〉… 小雲取山 …〈30分〉… 雲取山
ー計6時間30分ー
【雲取山〜三峯神社バス停】
雲取山 …〈30分〉… 雲取山荘 …〈40分〉… 大ダワ …〈1時間20分〉… 白岩小屋跡 …〈1時間〉… お清平 …〈30分〉… 霧藻ヶ峰 …〈1時間10分〉… 奥社分岐 …〈30分〉… 三峯神社バス停
ー計5時間40分ー
●鴨沢へのアプローチ
JR青梅線・奥多摩駅より、西東京バス「鴨沢西」「お祭」行にて「鴨沢」バス停下車
または、西東京バス「留浦」行終点下車、徒歩12分
●帰路
西武バス「三峯神社」バス停より、「西武秩父駅」行に乗車・終点下車。
コースの状況など
- 鴨沢〜雲取山は、標高差約1,480m。登り6時間以上で、1泊2日の行程が標準的。
- 登山の装備が必須。春や秋でも頂上付近は氷点下となる場合もある。
雨具、防寒具、非常食は必須。 - 5月から11月のシーズンがベター。積雪時は冬山となり、アイゼンなどそれなりの装備が必須。
夏は熱中症対策が必要。 - 鴨沢〜ブナ坂、雲取山荘〜三峯は、山の斜面を通る道が多々ある。滑落に注意。
- トイレは、鴨沢、小袖駐車場、七ツ石小屋、雲取山避難小屋付近、雲取山荘、霧藻ヶ峰休憩所付近、三峯神社バス停にある。
- 水場は、七ツ石小屋、奥多摩小屋跡近く、雲取山荘にある。
- 奥多摩小屋は解体し、緊急時の宿泊も出来ない。
白岩小屋は半壊状態で、緊急時でも、ややリスクがる。
霧藻ヶ峰休憩所は、宿泊不可。 - 三峯神社から歩く逆コースは、バスの始発が遅い。また、雲取山荘までアップダウンが多い。
問い合わせ先
●奥多摩ビジターセンター
https://www.ces-net.jp/okutamavc
※コースの状況などが、把握できる
※避難小屋の管理等
●雲取山荘
Webサイト… http://kumotorisansou.com
住所… 埼玉県秩父市野坂町2-13-34
電話… 0494-23-3338
FAX… 0494-23-0582
1泊2食付き 8,500円(大人)
素泊まり5,800円(大人)
※金曜・土曜・日曜・祭日・祭日前日は、個室料が1部屋4,000円
※基本的に2名以上は個室利用、1名の場合は相部屋(男女別・間仕切り有)
※個室は1室4名まで、5名以上の場合は2部屋利用。
※2021年より1泊2食付き… 9,500円(大人)素泊まり6,800円(大人)
予約は、メール(kumotori@beige.ocn.ne.jp)・電話・FAXにて可能
●七ツ石小屋
Webサイト… https://nanatsuishigoya.com
住所… 山梨県北都留郡丹波山村5427
電話… 090-8815-1597
素泊まり… 4,000円
※予約は、電話にて原則として、ひと月前〜前日15:00まで予約可能