芭蕉ゆかりの古刹、青梅市・高源寺から、奥多摩でも人気の高い高水山へ。
山頂近くの常福院を参拝し、奥多摩・大丹波へ下る山旅です。
歴史と展望のトレッキングコース、新緑の春や紅葉の秋に、歩いてみませんか?
目次
古刹と古刹を結ぶ、展望の高水山登山
軍畑駅から、芭蕉ゆかリの古刹・高源寺へ
JR青梅線・軍畑駅から、高源寺を目指します。
軍畑は「いくさばた」と読む難読駅。
戦国時代、この地を治めた三田氏と北条氏の「辛垣の合戦」が繰り広げられたのが由来です。
2020年にリニューアルした駅舎には、三田氏の家紋が描かれて、JRもマニアックです。
駅の東の踏切を渡り、平溝川沿いの都道193号を北へ。
途中、今にも壊れそうなバラックの「国立奥多摩美術館」が… 当然、国立の美術館などではなく、前衛芸術家のアトリエです。
国立美術館を管轄する、文化庁からクレームは、ないのかな?
ちなみに、ここは青梅市、千葉にある東京ディズニーリゾート、みたいなモノですか。
都道を左折し、平溝通りへ道を採ります。
長閑な山里を、川沿いに歩きます。
道の傍を流れる川も、やや細くなり、小滝も現れます。
軍畑駅から30分ほど歩くと、高源寺に到着。
曹洞宗の禅寺。この付近は、禅寺が数多く点在しています。
縁記は不明ですが、少なくとも江戸時代初期には創建されています。
山門の左手に、石碑がありますが…風化し、殆ど文字が判読できません。
長年、謎だったのですが、芭蕉の句碑だと判明!
石に刻まれた文字は「古寺廼桃耳米ふ無於とこ可那 はせ越」と読めます。「はせ越」とは江戸
高源寺に芭蕉の句碑が!青梅市郷土博物館資料(PDF)より引用
時代前期の俳人、松尾芭蕉の俳号にあたります。
はたしてこの句が芭蕉の句であるのか、永年の疑問に、高源寺の総代である原島友幸さんが、青
梅市文化財保護審議会委員小澤弘子先生に調査を依頼し、その結果、今年(※2009年〜筆者注)7月、この句が芭蕉の句に間違いないことが判明しました。
いつ、誰が建てたのかは不明ですが…
「古寺の桃に米ふむをとこかな」と詠まれたこの句、江戸時代、この付近は桃の産地であることを偲ばせる、貴重な石碑でしょう。
狛犬の神社から、狛犬の寺を経て、高水山へ
お寺の隣には、天之社・妙見堂の神社があります。
「妙見堂」の名前からすると、妙見信仰(北極星の神様)なのでしょうか?
「北極星の神様」は、天体を司る、暦の神様。天候が命取りの農民にとって、信仰の対象となります。
本殿近くの狛犬。狼(犬)は、畑を荒らす獣から守る存在で、こちらも農村では珍重されていました。
そのためか、狼(狛犬)と妙見信仰がセットとなる神社が、多いのですね。
境内の獅子岩。この地域では、獅子舞が今でも行われ、青梅市の無形民俗文化財に、指定されています。
天之社から400mほど歩くと、登山口に到着。
杉林の中を歩きます。
湿気が溜まりやすい森なのか、路傍には苔。
秋は、ススキも美しい道です。
沢から尾根に取り付き、高度を稼ぎます。
六合目付近で、都心方面が見えます。
成木方面からの道と合流。ここまで登れば、道も緩やかとなり、山頂までもう少し。
ほどなく、常福院・山門に到着。
山門をくぐり、不動堂を参拝。
常福院は度重なる山火事に見舞われ、歴史の全容は不明ですが… 一説によれば、創建は9世紀、空海の弟子の円珍ともいわれています。
本当ならば、高野山と同時代、ということになります。
不動堂の前には、狛犬が祀られています。
お寺に、狛犬?ちょっと、不思議な気がしますが…
狛犬は、唐の時代、仏教とともに伝わった獅子がルーツ。そう考えれば、お寺に狛犬を祀っても、不思議はないですよね。
狛犬には、牙もあり、やや狼風。御嶽や三峯神社などの「お犬さま」信仰の強い地域ならでは、なのでしょう。
不動堂の彫刻。こちらは獅子でしょうか?
高水山・常福院では、毎年4月に、古式獅子舞が披露されます。貴重な伝統芸能です。ぜひ、一度、ご覧下さい!
常福院・不動堂の裏手から尾根に取り付き、高水山頂へ向かいます。
秋なら、紅葉も楽しめます。
多摩川をはさみ、御岳山の展望も。御嶽神社といえば狛犬、多摩地方は狼信仰の山が多いですね。
標高759mの高水山頂に到着。展望はさほどでもありませんが、ベンチもあり、休憩するには良いでしょう。
高水山から、岩茸石山を経て、大丹波〜川井駅へ
岩茸石山へ向かいます。
高水山周辺は、総じて杉林が多いですが、この付近は広葉樹林も。
岩茸石山へ近づくにつれ、展望が広がります。東京スカイツリーが見えると、嬉しくなるのはナゼ?
岩茸石山に到着。展望が最高です!東京最高峰の雲取山も見えます。
展望はあるけれど、木陰もさわやか。昼食するのも良いでしょう。
メインルートは、惣岳山経由で御嶽駅へ下りますが…
今回は、大丹波方面へ下ります。
「黒山・棒ノ折山」方面の標識に従います。
下り始めは急坂、気をつけて下ります。
メインルートから外れ、道幅が狭くなります。
10分少々下ると、名坂峠。「関東ふれあいの道」の道をわけ、「大丹波・川井駅」方面へ下ります。
下り始めは山の斜面を横切り、歩きにくい所も… ストックがあると、楽でしょう。雨の日は下りたくない道ですね。
道はやがて沢に寄り添い、いくぶん緩やかとなります。
地図にない、林道が現れます。(2021年現在、国土地理院や昭文社・山と高原地図に載っていない)
近年建設された林道で、登山道を下るより安全です。なお、一般車両は通れません。
林道を下り切ると、都道202号・八桑に出ます。右手に、川井駅方面行の西東京バスもありますが、本数は少ないです。
駅まで歩くならば、40分程度、南へ左折します。
途中、時々テレビでも紹介される、釜めし なかいがあります。
平日は午後3時、土日祭日は午後6時がラストオーダー、山帰りでも無理なく、立ち寄れます。
「なかい」から、30分程度歩き、青梅街道を左折、橋を渡ります。
駅への看板に従い、左折すると、川井駅へ到着します。
インフォメーション
登山地図
JR軍畑駅 …〈40分〉… 高源寺 …〈10分〉… 登山口 …〈50分〉… 常福院・不動尊 …〈10分〉… 高水山 …〈50分〉… 岩苔石山 …〈10分〉… 名坂峠 …〈30分〉… 林道 …〈20分〉… 八桑…〈40分〉… 川井駅
ー計4時間20分ー
コースの状況など
- 軍畑駅〜高水山は、標高差約520m。
- 常福院・不動堂裏にトイレあり。
- 春や秋がベストシーズン。夏は熱中症対策が必要。
- 岩苔石山からの下りは急斜面。家族連れなどの場合は、惣岳山経由で御嶽駅へ下るルートが無難。
問い合わせ先
奥多摩ビジターセンター
コースの状況などが、把握できる
https://www.ces-net.jp/okutamavc/