波乱に満ちた、東京近郊・瑞穂町「富士山」へ登る、小さな山旅

埼玉県との境に近い、東京・瑞穂町にある、「駒形富士山」。
200mにも満たない里山ですが、一等三角点もあります。
かつて、県境を巡る争いに翻弄され、3度も都県が移った山。
歴史を馳せつつ、歩きました。

東京の「富士山」に登ろう

東京に富士山?

狭山丘陵の西端、瑞穂町の、野山北・六道山公園。
東京では貴重な、広大な里山が広がります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園 西口
瑞穂町 都立野山北・六道山公園

今回は、駐車場・トイレも完備した公園西口を拠点に、東京の「富士山」を散策します。
東京に富士山?なんとも不思議ですが…

瑞穂町 西武バス 富士山バス停

公最寄りのバス停は「富士山」。住所も瑞穂町・駒形富士山です。
ちなみに「ふじやま」と読むそうな。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園近くの「動物注意」道路標識

余談ですが、バス停近くには「動物注意」の標識もあります。
そういえば、この標識は地域によって、動物の種類が違います。
事故となる可能性が高い、大型動物の鹿が多いのですが、これはキツネさんです。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園のベンチ

公園入口周辺は、ベンチもあり、休日にはピクニック客も。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の道標

公園入口を左折すると道標があり、「浅間神社」方面へ進みます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段
富士山階段

見上げると、天まで続くかのような、「富士山階段」があります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段

ひたすら登ります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段の237段

237段、登り切ると…

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・本殿
浅間神社

浅間神社に到着。小さな宮ですが、貫禄があります。
浅間神社といえば、霊山でもある富士山を祀る神社。やはり、ここも富士山なのですね!

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・内部

中には、祠が祀られ、お神酒もあります。地元の方が、手入れをなさっているのでしょうか。

浅間神社から、一等三角点へ

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社付近の道標

浅間神社から、三角点広場へ向かいます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道

鬱蒼とした森の道を歩きます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道の林

市街地からさほど離れていないのに、深山に迷い込んだ気分。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道の階段

階段状の道を登ります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標

付近は意外と道が入り組み、道標を確認しつつ歩きます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、三角点広場 近くの階段

最後の登りも階段が続きます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、三角点広場
三角点広場

少し開けた、三角点広場に到着します。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点
一等三角点

標高194.01m「高根」一等三角点があります。三角点とは、地図を作成での測量に使われる指標です。
本家の富士山頂は二等三角点、ある意味、こちらのほうが格式が高い?

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点の案内板

一等三角点は、島部を除くと東京には7ヶ所しかありません。
ちなみに、東京最高峰の雲取山にもあります。

どうでもよいトリビアですが…
東京都心の一等三角点「東京(大正)」は、なぜか、アフガニスタン大使館内にあります。
当然、治外法権でコネでもない限り、立ち入れません。東京タワー近くの、交通の便も良い場所なのに、雲取山より行くのが難しい(笑)

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点

話が脱線しました…
珍しい、といえば珍しい一等三角点ですが… 正直、ありがたるのはマニアだけかと。
大抵は、ひっそりとあるだけですが、ここは広場まで整備しています。
広場には、東西南北の印まであり、サービス満点ですね。
都が管理する自然公園、職員にマニアがいるのかな?

一等三角点から、公園入口へ

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標

三角点広場から、「高根入口」方面へ下ります。
付近は「お伊勢山遊歩道」として整備されていますが…
富士山とは別に、伊勢講の影響も大きかったのでしょうか?

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標

少々下ると、展望広場の分岐点。ここを左折します。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の道

重厚な森を下ります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、明神社跡地
明神社跡地

しばらく下ると、小さな広場に出ます。ここには、かつて、明神社がありました。
明神社は天照大神を祀る、伊勢神宮を総本山とする神社です。
ここは富士山でもあり、お伊勢さんでもあったのですね。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、展望広場からの奥多摩の山

明神社跡地から少し下ると、展望広場。
瑞穂町市街地越しに、川苔山など奥多摩の山が望まれます。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園、田保谷

展望広場からひと下りすると、「田保谷」に到着。木道もある谷地(湿地)です。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、アジサイ
瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、アジサイ
瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、ガクアジサイ

梅雨時期は、アジサイが見事です。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、シロツメクサ

足元にはシロツメクサ。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、遊歩道

遊歩道を歩き、公園西口へ戻ります。

瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、遊歩道の森

気持ちの良い、森の縁を歩きます。
5分少々で、公園西口に到着します。

アジサイ・睡蓮咲く狭山池公園

瑞穂町・狭山池公園
瑞穂町 狭山池公園

せっかくなので、公園西口から徒歩10分程度の、狭山池公園公園へ足を運びましょう。

瑞穂町・狭山池公園・厳島神社
狭山池公園 厳島神社

狭山池公園は、残堀川源流の池があります。池の岬には、厳島神社があります。
今日は短時間の間に、多数の神社を巡りますね。

瑞穂町・狭山池公園のアジサイ
瑞穂町・狭山池公園の睡蓮

梅雨時期は、アジサイや睡蓮の花も楽しめます。

公園を散策し終えたら、帰路に着きます。
徒歩ならば、箱根ヶ崎駅まで10分程度です。

神奈川、埼玉、東京に翻弄された、瑞穂町の富士山

少々長くなりますが、瑞穂町・富士山にまつわる歴史の話を…

現在の「駒形富士山」地区は東京都・瑞穂町です。
戦前の地図を見ると「元狭山村」は埼玉県でした。
白黒で分かりづらいのですが…

さらにいえば、「富士山」は、東京府・箱根ヶ崎村(現・瑞穂町)と埼玉県・元狭山村の県境の山でした。

戦後、1958年に埼玉県・元狭山村と、東京都・瑞穂町が合併します。
元々、元狭山村は江戸幕府の直轄地で、瑞穂町と同じ文化圏。古くから、東京編入を強く希望していました。

当時、埼玉県では、宮寺村(現・入間市)、三ヶ島村(現・所沢市)、金子村(現・入間市)などが東京への編入を希望し、苦慮していました。
そこに持ち上がった合併話、当然、埼玉県は反対します。

瑞穂町・富士山と飛行機
富士山と横田の飛行機

県の反対にも関わらず、合併できたのは…
当時の瑞穂町では、横田飛行場の拡張問題がありました。
ジェット機を離発着するために、町内に滑走路を造る計画です。
国への補償要求の条件に、元狭山村との合併を盛り込みました。中々の策士ですね。
こうして、「富士山」のあった元狭山村・駒形富士山地区は、東京に編入されました。

外交問題を絡め、県をまたぐ編入となりましたが…
埼玉側のメンツも重んじたのか… 元狭山村の北・3分の1は、埼玉県に遺留されます。つまり、村がふたつに分裂したのです。これが怨恨を産み、暴力沙汰なども発生しました。
県境問題は、ナイーブなのです。

青梅市・多摩川の紅葉と、大岳山
多摩川

さらに、明治初期まで遡ると…
現在の近代地方自治のもととなった、「郡区町村編制法」が制定されたのは、1878年。
制定当時、三多摩は神奈川県でした。
つまり「富士山」が、神奈川と埼玉の県境だった時代もあったのです。

三多摩が東京へ移管したのは、数年後の1893年。
多摩川流域の水源林をめぐり、東京が直接管理すべき、との機運が背景となりました。

行政区分が変わると、当然、選挙区も変わります。神奈川県の政治家でも、三多摩が東京へ移ると、結果的に得をする人もいます。
自県の利益と相反しても、己の都合を優先する。様々な政治的な駆け引きの末、三多摩が東京に編入しました。

東京の富士山は、神奈川・埼玉・東京の思惑で、「富士山」も時代によって変化したのですね。
奇しくも、本家の富士山頂が、静岡・山梨の両県の争いで、県境がないのを彷彿させます。

インフォメーション

アクセス

●都立野山北・六道山公園(西口)
JR八高線・箱根ヶ崎駅より、徒歩18分
駐車場… あり

ハイキングマップ

野方北・六道山公園(西口) …〈10分〉 … 浅間神社…〈20分〉… 三角点広場 …〈25分〉… 野方北・六道山公園(西口) 〈10分〉… 狭山池公園
ー計1時間5分ー

コースの状況など

  • 富士山階段以外は、アップダウンは少ない
  • トイレは、野方北・六道山公園(西口)と、狭山池公園にある
  • 滑りにくい靴で歩くのが吉

問い合わせ先

●狭山丘陵 都立公園
https://www.sayamaparks.com

●狭山池公園(瑞穂町)
http://www.town.mizuho.tokyo.jp/shisetsu/006/p004206.html

参考文献

●昭島市デジタルアーカイブズ/あきしま 水と記憶の物語
https://trc-adeac.trc.co.jp/WJ11C0/WJJS02U/1320715100

●瑞穂町史
https://trc-adeac.trc.co.jp/WJ11F0/WJJS07U/1330310100/1330310100100080/mp000080

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