埼玉県との境に近い、東京・瑞穂町にある、「駒形富士山」。
200mにも満たない里山ですが、一等三角点もあります。
かつて、県境を巡る争いに翻弄され、3度も都県が移った山。
歴史を馳せつつ、歩きました。
目次
東京の「富士山」に登ろう
東京に富士山?
狭山丘陵の西端、瑞穂町の、野山北・六道山公園。
東京では貴重な、広大な里山が広がります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園 西口](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC3979-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
今回は、駐車場・トイレも完備した公園西口を拠点に、東京の「富士山」を散策します。
東京に富士山?なんとも不思議ですが…
![瑞穂町 西武バス 富士山バス停](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4718-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
公最寄りのバス停は「富士山」。住所も瑞穂町・駒形富士山です。
ちなみに「ふじやま」と読むそうな。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園近くの「動物注意」道路標識](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4714-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
余談ですが、バス停近くには「動物注意」の標識もあります。
そういえば、この標識は地域によって、動物の種類が違います。
事故となる可能性が高い、大型動物の鹿が多いのですが、これはキツネさんです。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園のベンチ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4137-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
公園入口周辺は、ベンチもあり、休日にはピクニック客も。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の道標](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4140-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
公園入口を左折すると道標があり、「浅間神社」方面へ進みます。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4147-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
見上げると、天まで続くかのような、「富士山階段」があります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4739-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
ひたすら登ります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・富士山階段の237段](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4182-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
237段、登り切ると…
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・本殿](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4195-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
浅間神社に到着。小さな宮ですが、貫禄があります。
浅間神社といえば、霊山でもある富士山を祀る神社。やはり、ここも富士山なのですね!
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社・内部](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4210-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
中には、祠が祀られ、お神酒もあります。地元の方が、手入れをなさっているのでしょうか。
浅間神社から、一等三角点へ
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、浅間神社付近の道標](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4743-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
浅間神社から、三角点広場へ向かいます。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4759-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
鬱蒼とした森の道。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道の林](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4771-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
市街地からさほど離れていないのに、深山に迷い込んだ気分。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道の階段](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4794-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
階段状の道を登ります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4799-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
付近は意外と道が入り組み、道標を確認しつつ歩きます。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、三角点広場 近くの階段](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4810-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
最後の登りも階段が…
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、三角点広場](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4818-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
少し開けた、三角点広場に到着します。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4823-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
標高194.01m「高根」一等三角点があります。三角点とは、地図を作成での測量に使われる指標です。
本家の富士山頂は二等三角点、ある意味、こちらのほうが格式が高い?
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点の案内板](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4832-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
一等三角点は、島部を除くと東京には7ヶ所しかありません。
ちなみに、東京最高峰の雲取山にもあります。
どうでもよいトリビアですが…
東京都心の一等三角点「東京(大正)」は、なぜか、アフガニスタン大使館内にあります。
当然、治外法権でコネでもない限り、立ち入れません。東京タワー近くの、交通の便も良い場所なのに、雲取山より行くのが難しい(笑)
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、一等三角点](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4834-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
話が脱線しました…
珍しい、といえば珍しい一等三角点ですが… 正直、ありがたるのはマニアだけかと。
大抵は、ひっそりとあるだけですが、ここは広場まで整備しています。
広場には、東西南北の印まであり、サービス満点ですね。
都が管理する自然公園、職員にマニアがいるのかな?
一等三角点から、公園入口へ
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4837-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
三角点広場から、「高根入口」方面へ下ります。
付近は「お伊勢山遊歩道」として整備されていますが…
富士山とは別に、伊勢講の影響も大きかったのでしょうか?
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、お伊勢山遊歩道・道標](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4851-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
少々下ると、展望広場の分岐点。ここを左折します。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の道](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4850-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
重厚な森を下ります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、明神社跡地](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4856-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
しばらく下ると、小さな広場に出ます。ここには、かつて、明神社がありました。
明神社は天照大神を祀る、伊勢神宮を総本山とする神社です。
ここは富士山でもあり、お伊勢さんでもあったのですね。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、展望広場からの奥多摩の山](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4931-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
明神社跡地から少し下ると、展望広場。
瑞穂町市街地越しに、川苔山など奥多摩の山が望まれます。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園、田保谷](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4864-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
展望広場からひと下りすると、「田保谷」に到着。木道もある谷地(湿地)です。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、アジサイ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4885-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、アジサイ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4011-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、ガクアジサイ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4039-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
梅雨時期は、アジサイが見事です。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、シロツメクサ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4091-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
足元にはシロツメクサ。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、遊歩道](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4010-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
遊歩道を歩き、公園西口へ戻ります。
![瑞穂町 都立野山北・六道山公園の、遊歩道の森](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC3997-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
気持ちの良い、森の縁を歩きます。
5分少々で、公園西口に到着します。
アジサイ・睡蓮咲く狭山池公園
![瑞穂町・狭山池公園](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4670-2022-06.jpg?resize=728%2C485&ssl=1)
せっかくなので、公園西口から徒歩10分程度の、狭山池公園公園へ足を運びましょう。
![瑞穂町・狭山池公園・厳島神社](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4306-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
狭山池公園は、残堀川源流の池があります。池の岬には、厳島神社があります。
今日は短時間の間に、多数の神社を巡りますね。
![瑞穂町・狭山池公園のアジサイ](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4326-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
![瑞穂町・狭山池公園の睡蓮](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/06/DSC4707-2022-06.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
梅雨時期は、アジサイや睡蓮の花も楽しめます。
公園を散策し終えたら、帰路に着きます。
徒歩ならば、箱根ヶ崎駅まで10分程度です。
神奈川、埼玉、東京に翻弄された、瑞穂町の富士山
少々長くなりますが、瑞穂町・富士山にまつわる歴史の話を…
現在の「駒形富士山」地区は東京都・瑞穂町です。
戦前の地図を見ると「元狭山村」は埼玉県でした。
白黒で分かりづらいのですが…
さらにいえば、「富士山」は、東京府・箱根ヶ崎村(現・瑞穂町)と埼玉県・元狭山村の県境の山でした。
戦後、1958年に埼玉県・元狭山村と、東京都・瑞穂町が合併します。
元々、元狭山村は江戸幕府の直轄地で、瑞穂町と同じ文化圏。古くから、東京編入を強く希望していました。
当時、埼玉県では、宮寺村(現・入間市)、三ヶ島村(現・所沢市)、金子村(現・入間市)などが東京への編入を希望し、苦慮していました。
そこに持ち上がった合併話、当然、埼玉県は反対します。
![瑞穂町・富士山と飛行機](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2021/12/DSC0580-2021-12-1.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
県の反対にも関わらず、合併できたのは…
当時の瑞穂町では、横田飛行場の拡張問題がありました。
ジェット機を離発着するために、町内に滑走路を造る計画です。
国への補償要求の条件に、元狭山村との合併を盛り込みました。中々の策士ですね。
こうして、「富士山」のあった元狭山村・駒形富士山地区は、東京に編入されました。
外交問題を絡め、県をまたぐ編入となりましたが…
埼玉側のメンツも重んじたのか… 元狭山村の北・3分の1は、埼玉県に遺留されます。つまり、村がふたつに分裂したのです。これが怨恨を産み、暴力沙汰なども発生しました。
県境問題は、ナイーブなのです。
![青梅市・多摩川の紅葉と、大岳山](https://i0.wp.com/ometsu.net/wp-content/uploads/2022/02/DSC9061-2020-11.jpg?resize=728%2C486&ssl=1)
さらに、明治初期まで遡ると…
現在の近代地方自治のもととなった、「郡区町村編制法」が制定されたのは、1878年。
制定当時、三多摩は神奈川県でした。
つまり「富士山」が、神奈川と埼玉の県境だった時代もあったのです。
三多摩が東京へ移管したのは、数年後の1893年。
多摩川流域の水源林をめぐり、東京が直接管理すべき、との機運が背景となりました。
行政区分が変わると、当然、選挙区も変わります。神奈川県の政治家でも、三多摩が東京へ移ると、結果的に得をする人もいます。
自県の利益と相反しても、己の都合を優先する。様々な政治的な駆け引きの末、三多摩が東京に編入しました。
東京の富士山は、神奈川・埼玉・東京の思惑で、「富士山」も時代によって変化したのですね。
奇しくも、本家の富士山頂が、静岡・山梨の両県の争いで、県境がないのを彷彿させます。
インフォメーション
アクセス
●都立野山北・六道山公園(西口)
JR八高線・箱根ヶ崎駅より、徒歩18分
駐車場… あり
ハイキングマップ
野方北・六道山公園(西口) …〈10分〉 … 浅間神社…〈20分〉… 三角点広場 …〈25分〉… 野方北・六道山公園(西口) 〈10分〉… 狭山池公園
ー計1時間5分ー
コースの状況など
- 富士山階段以外は、アップダウンは少ない
- トイレは、野方北・六道山公園(西口)と、狭山池公園にある
- 滑りにくい靴で歩くのが吉
問い合わせ先
●狭山丘陵 都立公園
https://www.sayamaparks.com
●狭山池公園(瑞穂町)
http://www.town.mizuho.tokyo.jp/shisetsu/006/p004206.html
参考文献
●昭島市デジタルアーカイブズ/あきしま 水と記憶の物語
https://trc-adeac.trc.co.jp/WJ11C0/WJJS02U/1320715100
●瑞穂町史
https://trc-adeac.trc.co.jp/WJ11F0/WJJS07U/1330310100/1330310100100080/mp000080