東京・青梅市郊外の岩蔵エリア。
里山に囲まれたこの地で、新たな農業が試みが始まっています。
生産者の顔が見える、多品種・小規模栽培の野菜を、消費者へ届けるシステムも構築。
岩蔵野菜は、東京の隠れ湯・岩蔵温泉でも頂けます。
目次
青梅・岩蔵野菜と、東京の隠れ湯・岩蔵野菜・儘多屋
東京唯一の温泉郷? 知る人ぞ知る、青梅・岩蔵温泉
東京都・青梅市の岩蔵(小曾木・富岡)エリア。入間川・支流の源流の里山に囲まれた、東京とは思えない、長閑な山里です。東京唯一の温泉郷、岩蔵温泉もあります。
もっとも、都内から近すぎる温泉郷、廃業が相次ぎ、一軒のみの営業となりました。
「一軒だけだから、温泉郷と宣伝すると、大げさになっちゃいますよね」
と、唯一の温泉宿「儘多屋」さんの若女将さん。
そのような状況下、岩蔵エリアを盛り上げようと、新たな取り組みが始まっています。
岩蔵エリアには、ブランド卵のかわなべ鶏卵農場、原木シイタケの内沼きのこ園などの名産地。
青梅をはじめ、西多摩の人気レストラン・パティスリーで、岩蔵産の食材が使われています。
また、きのこ園では、直営レストランも併設。究極の地産地消ですね。
郊外とはいえ東京都。地方に比べれば地代も高いし、大規模生産にも向かない場所です。
自ずと、付加価値の高い食材、高品質を追求する生産者となります。
高付加価値食材の生産地で、新たに生まれたのが「岩蔵野菜」。
この地域で営む、若手4農家がタッグを組み、高品質な野菜をブランド化する試みです。
土を創り、土を育てる、岩蔵野菜
里山に囲まれた岩蔵エリアは、大規模農業には向きません。
それを逆手にとり、減農薬・有機農法での生産。
平野など、広い農地では、他の生産者の影響を受けます。
例えば農薬。隣の田畑で散布すれば、たとえ無農薬栽培でも、ま逃れません。
今回、「岩蔵野菜」のブランディングを手掛けるIwakura Experience(岩蔵エクスペリエンス)が主催する、モニターツアーに参加しました。
まず、岩蔵野菜を生産する繁昌農園へ。
のどかな谷地の畑で、農園代表の繁昌知洋さんに案内して頂きました。
繁昌さんは、大学で河川・森林生態系の研究したのち、百貨店の青果店に勤務。その後、農園で研修し、脱サラで農園を始めました。
「なぜ、青梅で始めたかというと、非常に自然が豊かなんですね」
東京では八王子に次ぎ、面積のある青梅ですが…
その割に農地は広くありません。例えば、面積が10分の1程度の清瀬の方が、農地が広かったりします。
あまり効率的な農地とは言えません。
でも、里山に囲まれた青梅は…
「落ち葉を貰って発酵させ、堆肥にするのですよ」
それはつまり、森の恵み、ともいえます。
「化学肥料に比べ、有機肥料は管理が難しいのです」
有機肥料の場合、土の中で、更に微生物を育てる効果も期待できます。
肥料としての効果は、緩やかではあるけれど、自然に逆らわず、自然を活かす。
土を造り、土を育てる、土に根付いた「末永い農業」と言えます。
今風にいえば、サステナビリティ(持続可能性)な方法論と、その実践です。
「イメージが良いから有機農法」ではないのですね。
これはある意味、古来からの農法ともいえますが…
「肥料に含まれる窒素やリンなどの量を、パソコンで計算し、管理しています」
根拠に基づいた緻密な農業、温故知新で進化しているのですね。
説明の後、その場で掘り起こした、カブを頂くと… 甘くて美味い!
東京の片隅で、美味しい野菜を実直に作る農家があること、もっと知られて良いでしょう。
小さな地球で畑を耕す、アクアポニックス
岩蔵エリアでは、新たな農業プロジェクトが始まっています。
繁昌農園から、岩蔵温泉・儘多屋へ移動。
敷地内にビニールハウスがありますが…
ただのビニールハウスではありません!
ビニールハウスの中には、ハーブ等を育てるプランターもありますが…
水槽で魚を飼っています。
魚の排泄物を微生物が分解し、植物を育てるアクアポニックスです。
一種のビオトープのような、ビニールハウス内にコンパクトな生態系が構築されています。
- 魚の排泄物を微生物が分解し、栄養分に
- 栄養分を吸収し、植物が育つ
- 植物が浄化した水は、再び水槽へ
アクアポニックスは、魚の選定や生育環境も重要な鍵。
サンシャイン水族館の協力のもと、アクアポニックスを運用しています。水族館って、魚のプロですからね。
ポンプで水を循環させる構造上、大規模な農園は難しそうですが…
小さなスペースを有効利用する農法としては、有望かなと。
岩蔵温泉のアクアポニックスは養殖魚ではありませんが…
ノウハウが蓄積されれば、魚も野菜も採れる畑になるかも?
アクアポニックスをコンパクトにした、金魚の水槽。岩蔵温泉・儘多屋のエントランスに設置されています。
金魚のフンで植物を育て、その上、水槽の水もキレイになる。中々、面白い仕組みです。
岩蔵野菜の、極旨スムージー
見学のあとは、岩蔵野菜を始め、青梅産の食材を使用した料理を頂きます。
まずは、岩蔵野菜のスムージー。
小松菜とブロッコリーのスムージーです。
見た目は青汁みたいですが… 野菜の優しい甘みと風味が味わいが楽しめます。
メイプルシロップで軽めの甘み、レモンで酸味を加え、爽やかな清涼感もあります。
青汁が「ウ~ン、不味い」ならば、これは「オオッ、美味い!」ですね。
こちらは、焼き芋のスムージー。
繁昌農園のサツマイモを使用、豆乳、黒蜜で味付け、隠し味はなんと醤油。
味はまさに焼き芋。こってりとした、ホクホクな甘さです。
スムージーは、青梅市在住・料理研究家の池田清子さんが開発。野菜料理が得意分野とあって、まさに黄金のレシピですね。
岩蔵温泉・儘多屋で、岩蔵野菜を
食前のスムージーを頂いたら、お待ちかね、儘多屋の夕食。
儘多屋は、1883年(明治16年)創業の温泉旅館。
かつては4軒の宿があった岩蔵温泉郷で、唯一、暖簾を守っている宿です。
歴史ある宿ですが、意外とリーズナブル。人数・部屋によって宿泊料金は若干異なりますが、1泊2食付きで、概ね16,000円程度です。
儘多屋の夕食は、岩蔵野菜をはじめ、西多摩の食材をふんだんに取り入れた料理。
季節折々、旬の食材を使用、その時々でメニューが変わるので、悪しからず。
前菜と、食前酒の梅酒。当地は梅の産地です。
儘多屋では、西多摩3ヶ所の酒造の、梅酒の利き酒も出来ます!
生ハムと柿のマリネ。熟した柿の甘さと、ビネガーの酸味が、意外なほど合います。
ホウレンソウと食用菊のおひたし。色合いも美しい一品。
豚肉の鍋。醤油ベースの汁に、白菜など、野菜のエキスが染み込んで美味いですね。
冬の温泉で食べたい、ホカホカの鍋。
青梅産の蕎麦。東京でも蕎麦を栽培しているのですね!
二八と一九、蕎麦の配合を変え、二色盛り。
ただし、生産量も少なく、滅多に提供できないとのこと。
暖かい鴨汁につけて頂きます。鴨以外は、青梅産を使用。
薬味も青梅産。柚子は青梅の名物です。
蕎麦の風味も良く、出汁の効いた汁も美味しいですね。
西多摩といえば、ヤマメ。香ばしく焼き上げた、塩焼きです。
ヤマメはフライや唐揚げでも旨く、岩蔵に限らず、西多摩へ行ったら是非どうぞ。
秋ならば、子持ちのヤマメが頂けることもありますよ。
デザートは、お隣・瑞穂町の清水牧場のコーヒージェラート。
農場が経営するジェラート店、美味くないわけがない!
その土地に根ざした農園、そして、歴史ある温泉宿。
野菜を食べに、岩蔵温泉へ旅立つのも良いでしょう。
新宿・池袋から1時間30分と、近いような遠い地ですが…
観光ズレしていない素朴な山里、ちょっと良い小旅になるかと。
岩蔵温泉は、ツツジの名所で知られる塩船観音寺の近く。行き帰りに立ち寄るのも良いですね!
塩船観音寺から岩蔵温泉まで、桜の美しいハイキングコースもあります。歩いてノンビリ行くのも楽しいです。
岩蔵温泉は、東京の端。お隣の埼玉県・飯能市の観光スポットと組み合わせるのも手です。
地元民意外には殆ど知られていない、一本桜の名木やカタクリの群生地などがあります。
インフォメーション
問い合わせ先
●繁昌農園
https://hanjo-farm.com/
●Iwakura Experience
https://iwakura-experience.tokyo
●儘多屋
Webサイト… https://mamadaya.com
住所… 東京都青梅市小曾木5-3140
電話… 0428-74-4221(木〜日曜日10:00~17:00)