江戸時代に開削した、玉川上水。
多摩川から江戸へ水を供給した、歴史ある上水です。
玉川上水の取水口、羽村の堰から拝島を散策。
古刹や酒蔵も残る、歴史と文化の旅を満喫できます。
目次
玉川上水・上流をめぐる、歴史と文化の旅
今も現役? 玉川上水の上流部
江戸時代初期、羽村から四谷大木戸まで開削された、玉川上水。
人口の増える江戸へ、多摩川から取水し、江戸の町へ供給しました。
羽村の堰〜小平監視所までは、現在も導水路として利用され、300年以上の現役です。
地元では、世界遺産登録も視野に入れた保全活動をしています。
今回は、取水口「羽村の堰」から拝島まで、玉川上水沿いに散策。
約6kmの距離、徒歩で2時間弱の行程です。
付近の観光スポットに寄り道するならば、レンタサイクルを利用するのも手。
羽村駅西口の羽村市観光協会にレンタサイクルがあります。
または、福生駅東口のHalloCyclingもオススメ。
こちらは、拝島駅近くでも返却できて便利です。
羽村の堰から、福生加美上水公園ビジターセンターへ
起点の「羽村の堰」は、JR青梅線・羽村駅西口より、徒歩15分程度。
里山を望む多摩川から、玉川上水へ取水。ここから上水が始まります。
付近は「羽村草花丘陵自然公園」として整備。玉川上水を開削した、玉川兄弟の像もあります。
玉川上水は、江戸時代前期(1652年)に開削。当時、慢性的に水不足だった江戸の市中に水を供給しました。
羽村の堰から四谷大木戸(現在の新宿御苑近く)まで、全長43kmです。
多摩川から、荒川水系の江戸中心部へ水を通す上水。どこかで、尾根を超える必要があります。当時の測量技術からすれば、ルートの選定は、まさに神業です!
公園内にはトイレも完備。玉川上水沿いに南東方向へ。
羽村橋横を通ります。
この付近、春は桜が見事です。
春の羽村の堰は、上記リンクをどうぞ。
羽村橋から上水沿いに進み、水道施設の横を通ります。
やがて、砂利道となります。この先は道も狭く、自転車の方は降りたほうが無難です。
緩やかに曲がる、玉川上水。
雑木林の道を散策。この付近からは、福生市となります。
ビジターセンターから、長徳寺へ
少し進むと、右手に福生加美上水公園ビジターセンターがあります。
元々「東海居」という尼寺。愛知県・熱田方面のお寺の方が、別荘として1927年に建築しました。別棟に、女性の駆け込み寺があったとのこと。
ほんの百年前ですが… 本人同士の同意だけで、結婚・離婚ができない時代だったのですね。
ビジターセンターでは、玉川上水沿線の案内のほか、古道具の展示も。
ゼンマイ式の蓄音機。10インチのSP盤でしょうか。
庭には、竹のアート作品。
100円でコーヒー・紅茶も頂けます。ビジターセンターはボランティアの運営、その資金に充てられます。
ビジターセンターからは、上水沿いに南へ。少し進むと、加美上水公園に到着します。
春はキンランも咲く、自然豊かな公園です。
公園近くの、加美上水橋。
森に囲まれた玉川上水は、撮影スポットとしても人気があります。
加美上水橋から300mほど南の、宮本橋のたもとを右折すると、長徳寺に到着します。
長徳寺から、水喰土公園を経て拝島駅へ
長徳寺は、臨済宗の禅寺。
境内には四季折々の花。秋はイチョウや紅葉も美しい寺です。
長徳寺の紅葉はイチョウと庭園が見事な、福生の古刹・長徳寺をどうぞ。
本堂裏の日本庭園。池や小山もある、雅な庭です。
シモツケの花が咲く初秋。
風流な石庭もあります。
長徳寺の向かいは、田村酒造。創業1822年の酒蔵です。酒造蔵は国の登録有形文化財に指定されています。
玉川上水から少し離れますが… 田村酒造を回り込むように、進みます。
この付近、歴史の趣きある建物が多いです。
中福生通りを通り、都道166号を左折し、清厳院橋を渡り右折します。
200mほど玉川上水沿いを歩くと、新奥多摩街道に出ます。
玉川上水と並行する新奥多摩街道を南東へ。この付近、上水には草が茂っていました。
牛浜交差点を左折し、牛浜橋を渡ります。この付近は上水と並行する道がありません。
「牛浜郵便局前」を右折、都道29号を進み、「牛熊会館前」交差点を右折し、「ほたる通り」を進みます。
山王橋通りを右折し、すぐ先の三叉路を右折します。しばらく進むと玉川上水と並行する道となり、「山王橋」交差点に右折。青梅線の踏切をわたり、すぐに右折します。
この付近、若干分かりにくいので、巻末の地図を参考に。
200mほど進みと、五丁橋近くの交差点。右折し五丁橋を渡ります。
玉川上水にカモが泳ぎ、バードウオッチングも楽しめます。
橋からほどなく、右手に水喰土(みずくらい)公園の入口。公園へ入ります。
雑木林の茂る、静かな水喰土公園。
指定文化財の「玉川上水開削工事跡」に立ち寄ります。
江戸時代の書籍、八王子千人同心・小島文平の「上水紀元」によると…
玉川上水は当初、現在の国立市・青柳付近から掘り始めるも、高低差を見誤り頓挫します。
その後、福生から取水し完成。ところが…
水を流すと、水喰土公園付近で、地中に水が吸い込まれてしまいました。
急遽、羽村から取水し、現在の玉川上水にルートを移します。
失敗した「福生ルート」の名残が「水喰土掘跡」です。
もっとも、地中に水が吸い込んだのではなく、工事が多難で頓挫してルートを変えた、という説もあります。
公園東側の起伏を超え、玉川上水沿いへ。八高線の鉄橋をくぐります。
雑木林の心地よい道が続きます。
この付近、春はキンランも咲きます。詳しくは野生ラン咲く公園巡り! 福生文化の森〜玉川上水緑地日光橋公園へをどうぞ。
水を通すため、深く掘られた上水。付け替えした名残りでしょうか。
八王子千人同心が、日光への往還に利用した日光橋。東京都選定歴史的建造物に、指定されています。
新撰組とも関係深い千人同心は、元々は、幕府直属の軍事組織。平和な時代には、日光東照宮の警護(日光火の番)を行っていました。
八王子千人同心の小島文平が、玉川上水について記したのも、日光橋が縁なのでしょうか?
余談ですが、千人同心の身分は百姓。とはいえ、警備をするため、剣術に勤しんでいました。
農民出身の近藤勇、土方歳三が武術を学んだのも、千人同心との接点があったからでしょう。
日光橋を渡り、左岸を歩きます。ほどなく、アメリカ軍横田基地専用線の踏切を渡ります。
主にジェット燃料を輸送。通常は水・木曜日のみの運行、列車本数が少ないのか、線路は錆気味です。
基地専用線のすぐ先にある平和橋を右折すれば、拝島駅に到着。
都心方面へは、JR青梅線・西武拝島線が利用できます。
インフォメーション
コースマップ
羽村駅 …〈15分〉 … 羽村の堰 …〈15分〉 … 福生加美上水公園ビジターセンター …〈10分〉… 長徳寺 …〈50分〉 … 水喰土公園 …〈20分〉… 拝島駅
ー計1時間50分ー
参考資料
●東京都水道局
東京水道名所 玉川上水
●福生市郷土資料室
わがまちの文化財玉川上水開削工事
●清田清美 著
『水喰土』を自然地理学の立場から調べる