東京・青梅市の奥座敷、上成木地区。
都内でも、自然が色濃く残る貴重な地域です。
しかし、過疎化が進み、コンビニもなく、食堂もほとんどありません。
そのような中、地元の有志が、活性化のため、2011年、有志の方々が「成木の家」を建てました。
マナーを守れば、誰でも自由に利用できるこのログハウスで、山里を楽しんでみませんか?
「成木の家」で、別荘気分
青梅街道は、成木へ通じる?
新宿から、荻窪、田無を経て青梅に通じる、青梅街道。
青梅から先は、大菩薩峠を超え、山梨県・塩山へ抜ける、甲州街道の「裏街道」でもあります。
関所もなく、訳ありの人々が、標高に2千メートル近い山道を、わざわざ、歩いていたのでした。
江戸時代、幕府が青梅街道を整備したのは、成木と深い関係があります。
成木は、石灰石の産地。
石灰は、漆喰の原料となります。
当時の日本建築は、木造が主流で、火事に弱いのが弱点ですが…
漆喰を塗ると、防火性と耐久性が格段にアップします。
江戸城を始め、お城の外壁は漆喰ですし、商家などの蔵も漆喰仕上げです。
産地の青梅市内に、漆喰仕上げの立派な蔵が多いのも頷けます。
火事と喧嘩は江戸の華、ですが、大火での人的被害と経済損失は、幕府の悩みの種。
また、軍事要塞としての城を守る漆喰は、いわば戦略物資でもあったのです。
青梅街道を整備した背景には、石灰地の山地・成木と江戸を結ぶインフラ整備だったのです。
甲州街道のバイパスとしての役割は、副次的なものだったのでしょう。
山里に、家を!
歴史的には、多摩地区、とりわけ西多摩の発展のきっかけとなった、成木ですが…
近年、急速に過疎化が進みます。
過去の栄光がある地の過疎化は、寂しいものがあります。
産業は廃れ、人口も減り、店は畳まれ、学校も廃校となり、廃墟も目立ち始めます。
輝かしい繁栄があった分、落差も大きいのでしょう。
成木地区で活動する、KFCトライアスロンクラブ(青梅市トライアスロン協会)。
ヒルクライムレース(坂道を駆け登る自転車レース)を主催していますが、選手が休む場もない、成木の現状を憂いていました。
休憩所を提供したいと考え、地元の方にお願いし、ログハウスを改築・提供して頂くことに。
二階建ての、成木産の木材を使用した、質素ながらも贅沢な造り。
それを「成木の家」として、2011年、一般開放しました。
と、さらっと書きましたが、KFCクラブも、地元の方も、とてつもないボランティア精神ですよね。
公共事業ではなく、コマーシャルベースでもなく、純粋な善意で運営されているのが、凄い!
良いですね、木のぬくもりのログハウス。
暖かみがありますよね。
利用するには、「管理維持費」を百円以上、箱に入れればOK。
あくまで、性善説に基づいた自己申告的なスタイルです。
土・日曜日には、お菓子やコーヒー・紅茶などのセルフサービスもあります。
それも、好きなだけ食べて、というのだから、驚きというか、親切過ぎて呆れるというか…
と、思っていたら、常連と思しきロードバイク乗りの人たちが、冷蔵庫からコーラを取り出しゴクゴクと、飲み始めました。
ん?これも百円に含まれているの?
バイク乗りさんは、口々に
「値上げしないと、ダメだよね」「大赤字だよね、絶対」
と言いつつ、冷凍庫から、アイスを取り出し、
「暑い日は、これが一番!」。
ホント、大丈夫かな?なんて話をしていると、庭仕事を終えた管理者の方が、登場。
この大盤振る舞いを「おめ通」で紹介したら迷惑ですよね、と訊ねたら…
「大丈夫、大丈夫、ここ、そんなに人が来ないから」と、なんともおおらかな、お答えです。
小屋の維持管理だけでも大変なのに、ここまでおもてなしして頂けることに、感謝感激です。
家にはテラスもあり、目の前に小川が流れています。
せせらぎを聴きながら、昼寝でもしたい気分。それが許されそうな、雰囲気ですしね。
「いいでしょ、この河原。夏は、幼稚園の子供たちが遊びに来るよ」
オトナですが、河原に降りて、ボーッとしてみました。
確かに、心地もよく、何だかんだ長居してしまいます。
小川は浅瀬で、水も綺麗ですね。
中の石が、透けて見えています。
滝、というには小さいけれど、山から小川に流れ込んでいます。
これも、ちょっと良い光景ですね。
成木の家付近は、山もあるし、滝もあります。
埼玉との境界の棒ノ折山から、成木へも下れるし、高水山方面の登山も出来ます。
登山のベースとしても良いですが、成木を訪ねることを目的とした、旅行も楽しいですよ。
都バスでのんびり行くか、自転車で出かけるのも良し。
テラスで小川を眺めながら、コーヒーを飲む、なんてちょっと優雅ですよ。
そして、素敵な家を、ありがとう!
インフォメーション
アクセス
JR青梅線・東青梅駅より、都営バス「上成木」行にて終点下車、徒歩1分
※バスの本数が少ないので注意!
問い合わせ先
●KFCトライアスロンクラブ
http://www.kfctriathlon.com/html/project_nariki_2011.html
●都営バス
https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/bus/