なんと50年ぶり、だそうです。
2021年、青梅に映画館がオープン。
それだけでも、ワクワクするのに…
有形文化財の建築物を、リノベーションした映画館です。
そこには、映画を愛する男の、物語がありました。
目次
猫の町、映画の町に、映画館を!
かつて、映画は娯楽の王様だった
青梅市・西分町に、2021年、映画館がオープン予定。
猫の街・青梅らしく、名前はシネマネコ。
5月2日にオープン予定でしたが、緊急事態宣言を受け、延期。
少々、出鼻をくじかれました。
かつて青梅は、繊維の町として栄えました。
養蚕農家も多く、屋根裏部屋で蚕を飼っていたほどです。
たとえば、吉川英治記念館も、元々は養蚕農家の民家。
蚕の天敵、ネズミを退治する猫は、青梅では重宝されていました。
戦後、昭和30年代は、寝具の生産が急増、女工さんで町は溢れ、活気が満ちていました。
映画館も、3館あったほど。
青梅に限らず、テレビが台頭するまでは、映画が娯楽の王様だったから。
そして、映画が生活の一部だったのでしょう。
映画館の映画といえば「ニュー・シネマ・パラダイス」。
舞台は、イタリア・シチリア島です。
敗戦国の町の中心に、皆に愛される映画館が。
1950年代前半が舞台、青梅が映画で栄えた時期の少し前と、さして変わりません。
昭和中頃の日本も、映画館はランドマーク的存在、だったのでしょう。
その後、繊維産業も衰退し、映画館も閉館。
時代の流れ、といえばそれまでですが、寂しさは拭えません。
有形文化財が、映画館になったワケ
青梅で、美味しい焼き鳥や餃子が評判の「火の鳥」を経営する、菊池康弘さん。
映画青年で、自らも役者を志した彼。
かつて映画の町に、銀幕の灯火をと、立ち上がりました。
「映画館を造ろうと、市内で場所探しをしたのですよ。で、町のタウンマネジャーに、ここを紹介されて」
タウンマネージャーとは、空洞化する市街地を活性化させる、コンサルタント。
空き物件とユーザーを、橋渡しする役割です。
なるほど、この建物なら、小さな映画館が収まる。
それに「お飾り」の文化財ではなく、映画館ならば気軽に入れるし、町の活性化にも繋がる。
ここを映画館にしよう、と心に決めました。
開館資金は、クラウドファンデイングも活用。(2021年4月30日まで募集)
「ニュー・シネマ・パラダイス」では、火事で全焼した映画館を、サッカーくじで富を成した男が再建しましたが…
菊池さんは、いたって手堅いようです?
リノベーションする物件は、昭和初期の建築物。
映画館の厳しい建築基準を満たす改修は、大変です。
「リノベーションするために、壁紙や漆喰を剥がしたのですよ。そうしたら、材木に何かマークがあるじゃないですか」
多分、大工さんか材木屋さんの屋号ではないか、と手掛けた建築家は、推測。
まさか、90年後の人間が発見するなんて、想像しなかったでしょう。
歴史ある建物には、ストーリーがあります。
待合室には、寝かしたシェルフが…
「文化財だから、内装品も処分しないように、お達しがあったのですよ」
ならば、これをを生かし、ディスプレイケースに。
モノが良いので、オシャレですね。
こけら落としは、猫の恩返し
シネマネコは、63席のミニシアター。
青梅近郊の方をメインに、観光客なども取り込むプログラムを、目指します。
こけら落としは、スタジオ・ジブリの「猫の恩返し」。
(2021年6月4日〜6月17日上映)
これ以上のチョイスはない、と思われ。
なぜって、猫の映画館は、「日のあたる坂道」の上にあるんですよ。
ぜひ、自転車で駆けのぼって、観に行って。
菊池さんは、是が非でも、猫の恩返しをこけら落としと、したかったそうで。
でも、周りからは、ジブリは難しいのではと、諭されたりします。
「宮崎駿さんに、直談判の手紙を出しました」
菊池さんが、なまじ映画関係者だったら、ここまで大胆な事はしなかったでしょう。
でも、ピュアな気持ちって、通じるもの。
ジブリ側は快諾、めでたくこけら落としと、相成ります。
ジブリの作品が、こけら落としに使われるのは、おそらく初めて。
それどころか「猫の恩返し」のリバイバル上映も、ほぼ無いそうです。
また、2週間のサイクルで作品を、チェンジする予定。
ローマの休日の、新しい吹替版なども、上映します。
(2021年6月18日〜7月1日上映)
パブリック・ドメイン(著作権の切れた名画)も、どんどん上映して欲しいですね。
やっぱり、映画は、映画館で観たい
最新の映画館だけあり、投影機材は当然、DCP(デジタルシネマパッケージ)。
デジタルですが映画用の規格で、家庭用とはひと味違います。
プロジェクターはNEC NC1000cとのこと、小型映画館なので、2Kという判断なのでしょうか?
映画館の映写室って、初めて入りましたが…
昔の、それこそニュー・シネマ・パラダイスのような鬱蒼とした部屋ではなく、クリーンルームみたいで、驚きました。
音響は、7.1chまで対応のドルビーアトモス、スピーカーはJBL。
これは、映画館ならではの迫力とクオリティーでしょう。
座席数は63席です。
シートはゆったり目。
居心地良すぎて、うたた寝しそう?
シートは新潟県・新潟県十日町にあった「十日町シネマパラダイス」から譲り受けたもの。
やっぱり、青梅の「ニュー・シネマ・パラダイス」ですね。
座席には、やや大きめのドリンクホルダーも。
水分補給も、バッチリです。
こうして、中を拝見すると、あらためて、映画は映画館で観なくっちゃ!と思いますね。
スクリーンでなければ味わえない、感動もありますから。
カフェも併設
飲食店経営者がオーナーだけあり、併設のカフェも期待できます。
壁面には、大きな棚があり、ブックカフェ的な利用も。
昔の建物ですが、採光に優れた大きな窓。
映画館内のカフェとしては、かなり本格ですね。一部のメニューはテイクアウトして、館内への持ち込みもOK。
なお、他の映画館と同じく、館外からの持ち込みはNGです。
カフェ情報の詳細は、こちらをご覧ください。
洗面所などのアメニティも、シックで落ち着いた雰囲気。
歴史建築物ですが、バリアフリー対応のトイレがあるなど、配慮もあります。
プライスは?
小さな映画館だから、高いんじゃないの?と思いきや、良心プライスでした。
大体、封切り館と同じ料金設定ですね。
ネコデイがあるから、お得な日がたくさんありますね。
いっそ会員になって、いつでも1,000円も魅力です。
自社Webサイトより、ネット予約も導入。
上映日の3日前から購入出来ます。
青梅に50年ぶりの映画館、他にはない貴重な建築物。
新しい映画の楽園、青梅の、いや日本の、ニュー・シネマ・パラダイス、です。
このパラダイスを目指す旅も、良い休日になりそうです。
映画館の向かいに、国の文化財の石蔵をそのままレストランにした、繭蔵があります。
この付近は、良い建築物が多いエリア、映画だけではなく、散策すると良いですよ。
インフォメーション
アクセス・定休日・問い合わせ先
JR青梅線・東青梅駅より、徒歩11分
JR青梅線・青梅駅より、徒歩14分
駐車場… 提携駐車場を利用
●CINEMA NEKO(シネマネコ)
Webサイト… https://cinema-neko.com
住所… 東京都青梅市西分町3-123
電話… 0428-84-2636
営業時間… 9:00〜22:00
定休日… 毎週火曜日
(年会費2,000円・会員要提示)
(3歳以上の未就学児・3歳未満でも席を利用する際は1,000円)
(どちらかが50歳以上で、同一上映の場合)
(毎月1日に実施)
(女性のみ、毎週水曜日に実施)
(毎週金曜日に実施、年齢・性別問わず、同一上映の場合)
(毎月2,12,22日)
※料金は税込みです。