青梅市・住江町の津雲邸。
戦前・戦後を通じて衆議院議員を努めた津雲國利氏の邸宅です。
粋を尽くした装飾の昭和建築は、国指定・有形文化財。
数寄屋造りながら、西洋近代文化も併せ持つ、貴重な文化財です。
目次
戦前・戦後を駆け抜けた、稀代な政治家の迎賓館
歴史ある青梅宿の、希少な木造建築
新宿から約50km、青梅街道の青梅宿。
かつては御嶽神社の参拝道として、時には甲州街道の裏街道として、栄えた宿場町です。
近年はレトロな街並みと、猫の街として、人気のスポットとして定着しました。
JR青梅線・青梅駅前の青梅街道左折。400mほど歩くと、「津雲邸 入口」の看板があります。
右折し、野外ギャラリー風のイラストを眺めつつ、路地を下ります。
やっぱり、坂のある街は風情が良いですね。
付近は多摩川の段丘上部で、水害も少ないのか、お寺も点在しています。
登録有形文化財の、堀と門
坂の途中で津雲邸に到着。
立派な門構えですが、中へ入る前に…
堀も国指定の有形文化財。忘れずに見学しましょう。屋根は桟瓦葺(さんかわら)、立派な石垣は見ごたえがあります。
門も国の有形文化財。住宅母屋のみならず、堀と門も文化財なのは、かなり貴重です。
迎賓建築らしく、銘板が掲げられています。
地形を活かした宅内入口。山裾の街、青梅らしい趣きです。
数寄屋造りの主屋は、京都と地元の大工の協働。屋根の瓦には、家紋も施されています。
津雲邸は、戦前・戦後を通じて衆議院議員を努めた、津雲國利氏の邸宅。
銀行、新聞社を経て政治家へ転身、弁論家として、知られています。
保守系の政治家ゆえ、戦後、革新の強い多摩地区では、当落を繰り返し、苦戦しました。
モダンな木造建築
津雲邸は、平屋・一部2階建ての木造建築物です。
文化庁文化遺産オンラインによれば、建築面積は229㎡。個人の邸宅としては、かなりの広さでしょう。
何気なく、邸宅へ上がってしまいそうですが… 意匠を凝らした玄関も、じっくり鑑賞したいところ。
玄関上の欄間。光りが淡く差し込み、美しい文様が浮かび上がります。
1階の「すす竹の間」。曲がり廊下の縁側もある和室です。
縁側に、猫殿。一瞬、本物かと思いました。
「すす竹の間」に面した、中庭。粋な日本庭園です。
1階・茶室入口。
柔らかい日当たりに包まれた、茶室。
幹の質感を活かした、柱が印象的です。
竹編みの障子戸から、差し込む光り。
庭に岩には、サワガニでしょうか?
1階には応接間も。訪れた際は、写真展が開催中でした。
2階へ上がってみましょう。
2階の廊下。大正ガラスの大きな窓が特徴です。
昔はガラスは高級品、財力がないと、これほど贅沢に使えなかったでしょう。
2階の大広間。
欄間や窓の意匠も美しい!
この優雅な大広間で、お茶を点てたのでしょうか。
大広間の縁側から、奥多摩の山々。青梅ならではの光景です。
一番高いのは大岳山、その右に、日の出山も望まれます。
神は細部に宿る? 津雲邸の文様
津雲邸の美しさは、細部の意匠にも現れています。
床や天井も、和風を基調としながら、モダンなデザイン。
直線を活かした窓は、アール・ヌーヴォーの提唱者、チャールズ・レイ・マッキントッシュにも通ずるデザインです。
津雲邸が建てられたのは、1930年代。
ルネ・ラリックなどに代表される、アールデコの影響もあるのでしょうか?
和の空間に、ヨーロッパの意匠も取り入れています。
同時代に建てられた、旧朝香邸(現・庭園美術館)は和洋折衷の洋館です。
津雲邸は、和風建築の和洋折衷。
アプローチこそ違いますが、共にふたつの文化を融合させた意匠。
西洋文化を日本風に解釈する、時代背景を感じさせます。
津雲邸では、例年2月中旬〜3月下旬に、「邸雛祭り展」を開催。
江戸後期の貴重な雛人形を、鑑賞できます。
邸宅と併せ、見学するのも良いでしょう。
日本庭園の青梅市・日向和田の臨川庭園は、津雲氏の元別邸。
多摩川近くの、隠れた名所です。併せて見学するのも良いですね。
インフォメーション
アクセス・利用案内
JR青梅線・青梅駅より、徒歩7分
駐車場… 近隣及び、駅前に有料駐車場あり
●青梅宿 津雲邸
Webサイト… http://www.tukumo-tei.com/
入館時間… 10:00〜16:00
開館日… 金〜日曜日・祝日
※展示品の入れ替え期間、青梅大祭開催日、夏季・年末年始は、休館
入館料… 大人500円(中学生以下 無料)
住所… 東京都青梅市住江町72-2
電話… 0428-27-1260
※個人所有のため、臨時休館することもあり、事前に確認することをオススメします。
※館内は原則、撮影禁止です。当記事は、許可を得て撮影しています。撮影に関しては、津雲邸にお問い合わせください。
参考文献
- 文化庁 文化財オンライン… https://bunka.nii.ac.jp/
- 津雲邸Webサイト… http://www.tukumo-tei.com/
- 青梅市郷土博物館… https://www.city.ome.tokyo.jp/site/provincial-history-museum/
- 国会議員白書Webサイト… https://kokkai.sugawarataku.net