【休園中】子供をダシに大人も楽しい、青梅鉄道公園の魅力

2022年に開園60年を迎える、青梅鉄道公園。
JR東日本が運営する、貴重な鉄道車両が保存・展示された博物館的な公園です。
一見、「お子様向け」な施設だけども、むしろ大人が楽しい、奥深い内容。
大人も子供も、往年の鉄道に想いを馳せては、いかがですか?

往年の蒸気機関車を、時系列で辿る、鉄道公園

開園60年を迎える、貴重な鉄道公園

青梅鉄道公園
青梅鉄道公園

奥多摩の山へと続く、青梅・永山丘陵。その端に青梅鉄道公園があります。
1962年、鉄道開業90周年事業の一環として、開業した鉄道公園です。

なお、青梅鉄道公園は、2023年9月より休園し、2026年春にリニューアルオープン。「中央線・青梅線の歴史」をテーマに、生まれ変わります。

青梅鉄道公園の、0形新幹線と、ミニSL

1962年といえば、まだ蒸気機関車(SL)が現役の頃。年季の入った公園は、「昭和の香り」がプンプンしますが、それがいい味だしています。

青梅鉄道公園 入り口

昔の有人改札口の雰囲気な、入園口。入園料は、税込み100円。ちなみにSuicaは使えません。
JR東日本関連の施設で使えないのが、逆に新鮮!徹底して昭和テイスト?

東京近郊の鉄道展示施設といえば、同じくJR東日本の、さいたま市の鉄道博物館が、規模も大きく有名。展示している車両は、青梅鉄道公園とあまり被らず、補完関係があります。
例えばD51は、青梅にはあって、鉄道博物館にはありません。(前面部だけ切り取って、展示してありますが)
両方訪れると、より楽しいですね。

青梅鉄道公園の、アンパンマンと、きかんしゃトーマス
青梅鉄道公園の遊具

もちろん、子供向けの遊戯もありますが… 実は、オトナの方が楽しめる施設だと、断言出来ます。
遊戯類はあくまで、「子供をダシに使う」モノだと、邪険しています(笑)
ちなみに、遊戯類も100〜200円程度で、格安。昔のデパートの屋上みたいな乗り物が多いですね。


なお、公園内には、レストランはありません。弁当を持込み、野外のベンチで食べるのが良いでしょう。

蒸気機関車の歴史を辿る、コレクション

青梅鉄道公園の魅力のひとつは、蒸気機関車が充実していること。
鉄道博物館が明治初期・鉄道開通当時の輸入車両が充実しているのとは対照的に、純国産機がコレクションの中心です。

青梅鉄道公園の、6820形運転室

また、蒸気機関車の多くが、運転室へ入れるのも魅力です。

明治時代の輸入車、5500型蒸気機関車

それでは、歴史順に辿りましょう。
まずは、5500形・テンダー型蒸気機関車。
テンダーとは、炭水車が後ろに付いた、中〜大型蒸気機関車です。

青梅鉄道公園、5500形蒸気機関車
5500形蒸気機関車

展示機は、国鉄型の5500形では、唯一現存している貴重なものです。
この機関車は耐久性がとんでもなく良く、数十年使用されても、ピストンの摩耗がほとんどなかったとのこと。1800年代後期のイギリスの工業力の高さを物語る、名機です。
ちなみに、製造元のピーコック社は青梅鉄道公園開業の4年後、1966年に廃業。盛者必衰を感じますね。

明治の小型蒸気機関車、2200型

青梅鉄道公園、2220形蒸気機関車のプレート
2220形蒸気機関車

お次は、2220形蒸気機関車。展示機は、1905年イギリスから輸入され、明治〜大正〜昭和と、何と50年間も使用されました。
明治時代後期、まだ国産化が難しかった時代の代表的な機関車です。

青梅鉄道公園、2220形蒸気機関車
2220形蒸気機関車

さすがに100年以上前なので、錆が出ていますが、かなり保存状態は良好です。ちなみに、埼玉県・宮代町の日本工業大学で兄弟機の2109形が動態保存されています。機会があれば、足を運ぶと良いかも。

大正時代を代表する、9600型蒸気機関車

時代は、明治から大正に移ります。輸入機が中心だった蒸気機関車の、国産化が進みます。

青梅鉄道公園、9600形蒸気機関車
9600形蒸気機関車

9600形は、大正時代の蒸気機関車。貨物用として開発されました。
1913年〜1926年に、770両製造されました。

青梅鉄道公園、9600形蒸気機関車の運転室
9600形の運転室

貨物輸送の需要が高かった時代、この後D50、そしてD51と、主役の座は渡しますが、牽引力が高く長年使われました。
日本の実用蒸気機関車として、最後まで使用されたのは9600形。実に60年以上現役だったのです。今の電車が、2〜30年程度で廃車となることを思えば、昔のモノは寿命が長いですね。

スマートな、8620型蒸気機関車

青梅鉄道公園、8620形蒸気機関車
8620形蒸気機関車

8620形は、大正時代を代表する、旅客用の純国産機。ややスリムなボイラーが美しい名機です。
第一次世界大戦開戦の1914年に製造開始。

青梅鉄道公園、8620形蒸気機関車

8620形は長寿で、鉄道公園開業当時は現役、1971年まで実用機として走っていました。
展示機は、1号機の「8620」。これは貴重です!

青梅鉄道公園、8620形蒸気機関車の車輪とピストン

ちなみに、「鬼滅の刃」の無限列車は、8620に似た外観。時代考証的にも、大正時代ですしね。

小型蒸気機関車の傑作、C11形

青梅鉄道公園、C11形蒸気機関車
C11形蒸気機関車

時代は昭和へ。C11形です。小型蒸気機関車の傑作です。展示機は、昭和7年(1932年)製造。
66トンと、蒸気機関車としては軽く、日本らしい設計といえます。薄鋼板を使うなど、強度を保ちながら軽量化。

青梅鉄道公園、C11形蒸気機関車の車輪とピストン

小型機関車ですが、意外と大きな車輪です。特急用のC62などと比べれば小さいですが、全長が1.5倍以上あるD51より、大きい!
C11は、D51も手掛けた、島秀雄氏の設計。後に、新幹線計画にも参画した、名設計者です。
つまり、C11の合理的設計が、後の新幹線に繋がった、とも言えます。

日本の代表的蒸気機関車、D51形

青梅鉄道公園、D51形蒸気機関車
D51形蒸気機関車

言わずと知れたデゴイチ、ことD51系蒸気機関車。日本で、もっとも多く製造された車両です。
展示機は、1940年製造、太平洋戦争開始の前年です。

青梅鉄道公園、D51形蒸気機関車の車輪とピストン

製造数が多く、普通の公園などにもありますが、流石は鉄道会社の公園。
整備が行き届き、とてもきれいな状態で保存されています。車輪もピカピカです。

青梅鉄道公園、D51形蒸気機関車のヘッドランプと、集煙装置付きの煙突とプレート
集煙装置付きの煙突

D51は、多彩なバリエーションがありますが、展示機は集煙装置付き。トンネル内で、煙の害を減らす装置です。ひどい時は、運転士が窒息死したり…
「集煙」というと、ディゼルエンジンの触媒みたいですが… 単に、煙の流れをコントロールするだけで、大げさな装置ではありません。それでも効果があり、戦後、トンネル区間の多い場所で、普及しました。

青梅鉄道公園、D51形蒸気機関車の運転室
青梅鉄道公園、D51形蒸気機関車の運転室の圧力計のメーター

青梅鉄道公園では、他ではめったに無い、運転室内も立ち入り可能。日本の貨物蒸気機関車の完成形をじっくり見学出来ます。

国鉄最後の蒸気機関車、E10形

青梅鉄道公園、E10形蒸気機関車
E10形蒸気機関車

E10形は、戦後の蒸気機関車。国鉄最後の新規設計蒸気機関車です。

青梅鉄道公園、E10形蒸気機関車の車輪とピストン
5軸のE10系

急勾配に耐えられる、動輪が5組の機関車。
ちなみに、国鉄の機関車は、動車輪の数をアルファベットで表します。
3組ならばアルファベット3番目のC、4組ならばD、Eならば5組となります。

青梅鉄道公園、E10形蒸気機関車のフランジ無しの車輪
フランジ無し
青梅鉄道公園、E10形蒸気機関車のフランジ付きの車輪
フランジ付き

急カーブを曲がりやすくするために、中間の動輪はフランジ(脱線防止の出っ張り)がありません。かなり思い切ったアイディアが、面白いですね。
やや特殊なE10で、5両のみの製造。現存は青梅鉄道公園のみで、大変貴重な車両です。

0系新幹線など、電車や電気機関車も展示

往年の青梅線を走った国電、クモハ40

青梅鉄道公園、クモハ40系電車
クモハ40系電車

国電の走り、クモハ40電車。戦前の製造、デビュー当時は省電(国鉄の前身・鉄道省の電車)ですね。

青梅鉄道公園、クモハ40系電車の、行先表示版

青梅線では、1978年まで活躍しました。鉄道公園は、近くの小学校の課外授業にも使われ、地元へのリップサービス側面もあるでしょう。
でも、クモハ40は、よほど年配でないと、先生も乗ったことがないでしょうね。

クモハ40は、戦後様々な改造が施され、バリエーションが豊か。さいたま市の鉄道博物館にも展示さてれいますが、前面が流線型のパターンです。機会があれば、見比べると面白いですよ。

ところで「クモハ」の意味は…

  • ク…運転台のある車両(制御車)
  • モ…モーター付きの車両
  • ハ…普通車

という意味。
この暗号めいた記号は、民営化された今も、使っています。今度、電車に乗ったら、確認してみては?

重要文化財の電気機関車、ED16

青梅鉄道公園、ED16形電気機関車
ED16形電気機関車

戦前(1931年)に生まれた電気機関車、ED16。青梅鉄道公園には1号機が展示されています。
クモハ40と共に、青梅ゆかりの車両です。

青梅鉄道公園、ED16形電気機関車のプレート

ED16系は晩年、青梅線・南武線の石灰石輸送にも使われ、1983年に引退。実に、50年以上も活躍しました。
現存機は、2両のみ。青梅鉄道公園の1号機は、2018年に国の重要文化財に指定されました。展示機の走行距離は、なんと300万km。地球75周した計算になります。

懐かしの、0系新幹線

青梅鉄道公園の目玉のひとつ、0系新幹線。初代の東海道新幹線です。

青梅鉄道公園、0系新幹線
0系新幹線

時速200kmを超える、世界初の高速鉄道。

青梅鉄道公園、0系新幹線のアンテナ

昭和の子供の憧れ的、0系新幹線のアンテナ。アンテナといっても、通信用ではなく、架線に流れる電流を検知するものです。

青梅鉄道公園、0系新幹線の運転室
0系新幹線の運転室

運転室も入れます。これも少年の憧れでした。

青梅鉄道公園、0系新幹線の運転室のスピードメーター

250kmまで目盛りのある、スピードメーター!
同時代の、初代・ポルシェ911の最高速度が210km。千人近くが乗車できる新幹線が、ほぼ同じなのは、凄い技術です。

青梅鉄道公園、0系新幹線の客室・座席

客席も入れます。40代以上ならば、見覚えのある方も多いでしょう。

青梅鉄道公園、0系新幹線の客室・灰皿

当時は、なんと、車内でタバコが吸えました。
禁煙車が登場したのは1977年、禁煙車の割合が50%を超えたのは1996年、2020年にすべて禁煙車になりました。
喫煙率も低下したし、今となっては、鉄道会社として喫煙車を残すメリット、ほぼありませんものね。

青梅鉄道公園、0系新幹線の客席・座席プレート

座席板は、懐かしい「スミ丸ゴシック」。手書きでも書きやすい、鉄道用の丸ゴシック体です。

展示室も面白い

屋外展示を見学したら、室内の資料館も立ち寄りましょう。

青梅鉄道公園、展示室のHOゲージ鉄道模型レイアウト

HOゲージの鉄道模型レイアウト。日本で一般的なNゲージに比べ大きくて、大迫力!

青梅鉄道公園、展示室

昔懐かしき、鉄道のパネル写真や模型。興味のある人だと、見入ってしまい、時間がいくらあっても足りないです。

青梅鉄道公園、展示室の特急ヘッドマーク

往年のブルートレインの、ヘッドマーク。昭和生まれならば、琴線に触れること間違いなし、です。

青梅鉄道公園、展示室の青梅・中央特快201形の、運転席

201形青梅特快風の、造作物がありますが、裏に廻ると…

青梅鉄道公園、展示室の青梅・中央特快201形の、運転席

運転台で遊べます。
オトナが展示を見る間、子供のお守りさせるのに、最適?

家族サービスを装って、オトナ、特にお父さんが楽しめる、青梅鉄道公園。
日本の鉄道開通から150年。その歴史を、100円で、これだけ楽しめるなんて、格安過ぎますね。

インフォメーション

アクセス・営業案内

JR青梅線・青梅駅より、徒歩15分
駐車場… 近隣の永山公園内・駐車場を無料で利用可

●青梅鉄道公園
Webサイト… https://www.ejrcf.or.jp/ome/
開館時間… 10:00~16:30 (入園は16:00まで)
休園日… 月曜日(国民の休日・振替休日の場合は開園し、火曜日休園)・年末年始(12月29日~1月2日)
※新年(1月3日~7日)・春休み期間(3月26日~4月6日)・GW(4月29日~5月5日)・10月1日が月曜日の場合は特別開園
住所… 東京都青梅市勝沼2-155
電話… 0428-22-4678

入園料… 100円(小学生以上)
※障がい者手帳をお持ちの方、70歳以上の方は無料

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