東京西部のあきる野市。
市の中心部・五日市盆地は、かつて湖だったといわれています。
謎のベールに包まれた幻の湖。
湖の面影を訪ねる小旅に、出かけませんか?
目次
幻の湖、謎の五日市湖
盆地は、湖の名残り?
山に囲まれた盆地は、昔、湖とされる所が多いです。
奈良盆地は、縄文時代後期までは「大和湖」と呼ばれる湖。湖の周辺と思われる所に、遺跡も発掘されています。
また、甲府盆地も湖だったという説があります。
盆地の周辺部に遺跡が多いこと、また、湖水伝説も伝承されています。伝説の真偽はともかく、ロマンがありますよね。
秋川渓谷をはじめ、景勝地として名高い、東京都・あきる野市。
市の中心部は、五日市盆地が広がり、近郊農業も盛んなエリアです。
五日市盆地も、かつて湖だったと言われています。東京にも湖水伝説があるなんて、夢がありますよね!
上の地図は、標高230m以下を水色に色分けしたもの。
現在とは地形も違い、参考程度ですが… このような湖が広がっていた可能性があります。
氷河期の湖は、高層湿原だったのか?
湖があったのは、3万〜10万年前と推定されます。
最近の地質調査では、湖の周辺部とされる場所から、湖沼性の堆積物が発見されました。
堆積物に含まれる藻の一種・珪藻(けいそう)から推測すると…
水深のある湖というよりも、沼沢や湿原に近い雰囲気だった、とのこと。
沼地か… なんだかロマンがないな、とおっしゃるなかれ。
湖があったとされる年代は氷河期。現在より、4〜8度ほど気温が低かった時代です。
気温も現在の標高1,500m程度の寒さで、尾瀬や戦場ヶ原と同じ程度。
現在ならば、高層湿原のある場所に匹敵する寒さです。
地層からは、モミ属の花粉も見つかりました。亜寒帯に近い気候だったのでしょうか。
高層湿原は、低温で植物が腐敗しにくいのが特徴。ニッコウキスゲなど、美しい高山植物が咲き誇る湿原です。
はたして、五日市湖は高層湿原だったのでしょうか?
ともあれ、さぞ、美しい光景が広がっていた、と想いを馳せます。
山々が、川を堰き止めていたのか?
上の画像は、五日市盆地を都心方面へ望んだ鳥瞰図。
あきる野・高尾山と天竺山の間を、秋川が流れています。
その痕跡もなく、あくまで空想の域を出ませんが、一説によると…
古来、このふたつを結ぶ山があり、川を堰き止められ、五日市湖となったといわれています。
五日市街道・五日市橋からのパノラマ写真です。左の山がが天竺山、右が高尾山。
五日市湖のあった時代は… あきる野・高尾山と天竺山の間に、このような山があったのかもしれませんね。
あきる野・高尾山から、五日市湖を想う小さな山旅
幻の五日市湖の面影を探しに、出かけてみました。
五日市湖を堰き止めた(とされる)高尾山へ登ります。
「山旅」といっても山道を歩くのは、20分少々。
まあ、散歩のようなものですが…ちょっと滑りやすい道、キチンとした靴で歩くのが吉です。
JR五日市線・武蔵五日市駅から30分弱歩き、高尾神社へ。
駅前から、五日市街道を東へ歩き、五日市橋手前で右折します。
入口には、立派な石碑があります。
高尾神社のすぐ横には、大光寺があります。せっかくなので、先にお参りしましょうか。
小さな橋を渡り、境内へ。
創建は1502年と戦国時代の古刹。背後には高尾山が迫る、山里の寺です。
大光寺の参拝を終えたら、高尾神社に戻ります。
鬱蒼とした杉林に赤い鳥居と、社殿。
歴史を感じる厳かな雰囲気。社殿の横には、小さな御嶽神社の末社もあります。武蔵御嶽神社の大口真神が祀られています。
「大口真神」とはいわゆる、おいぬ様=ニホンオオカミ。詳しくは上記の記事をご覧ください。
社殿右側から、奥社へ続く山道を往きます。鳥居をくぐり、急登を登ります。
登るにつれ、道は緩やかに。落ち葉の道が心地よいですね。
10分少々で、高尾山・展望台に到着。ベンチもあり、ひと休憩。
展望台からは、ジオラマのような光景、五日市線の列車の姿も。
五日市盆地を一望。
かつて、ここが湖だったと想いを馳せます。
そよ風に誘われ、ベンチでうたた寝をして… 夢で五日市湖に逢いました。
夢のあとさきから、目覚めたなら。
展望台から、ほぼ平坦な道を歩くと、奥社があります。
奥社から、網代弁天山への道があります。
網代弁天山は、ツツジの名山として知られています。
今回は、往路を戻り、JR五日市駅へ戻ります。
五日市橋付近は、秋川渓谷の渓谷美が間近に。
奇岩「サンドイッチ岩」も近くにあります。
また、五日市橋近くには、五日市七福神のひとつ、正光寺も。嘉元3年(1305年)の創建の古刹です。
正光寺を含め、五日市七福神については、上記の記事でどうぞ。
春ならば、近くの高尾公園にカタクリなどの野草も咲きます。
今は幻の五日市湖を巡る旅。
想いを馳せ、目を瞑れば、きっと姿を現すでしょう。
インフォメーション
マップ
JR五日市線・武蔵五日市駅 …〈30分〉… 高尾神社入口 …〈15分〉…奥社 …〈10分〉… 高尾神社入口 …〈25分〉… 武蔵五日市駅
ー計1時間20分ー
参考資料
●あきる野市自然環境調査報告書
調査・編集:あきる野市環境委員会自然環境調査部会
発行:あきる野市
https://www.city.akiruno.tokyo.jp/0000004124.html
●五日市むかしむかし(改訂版)
編集:化石は語る 五日市むかしむかし編集委員会
発行:あきる野市教育委員会
●五日市郷土館 展示資料
Webサイト… https://www.city.akiruno.tokyo.jp/0000001285.html
住所… あきる野市五日市920-1
電話… 042-596-4069