3月を迎え、青梅市・吉野梅郷で梅が見頃となりました。
吉野梅郷では、2014年にプラムポックスウイルスの影響で、全ての梅を伐採。
数年の歳月をかけ再植栽、2020年暮れに「安全宣言」、復活へと前進しました。
幼木ながら健気に咲く梅の陰には、想いを託した物語がありました。
目次
悲劇のウィルス感染と、梅林の復活
日本有数の梅林が、ウイルスに感染した
コロナウイルスで右往左往の、日本と世界。
ウイルスの被害は、人間や動物だけではありません。
そのひとつが、梅などバラ科の植物に感染する、プラムポックスウイルスです。
2009年、吉野梅郷で、プラムポックスウイルスに感染した梅を発見。
梅への感染は、世界初です。
主にアブラムシを媒介とするこのウイルスは、近隣の木々に感染の危険性があります。
事態を重くみた国は、青梅市内全域を防除区域に指定します。
梅郷全山を含む、3万6千本の梅が伐採。
市内の主要観光地と、果樹農家に大きな打撃を与えました。
緊急事態宣言の解除? 梅郷が復活する!
その後、2016年から、条件付きで再植栽を開始。
最初はわずか6本の苗木と、恐る恐るのスタートでした。
その後、再植栽は進み、2019年には、1,200本程度に増えました。
2020年12月、農林水産省の対策検討会で、アブラムシの感染対策を行えば、ウイルスのまん延は防げる、とのレポートをまとめました。
緊急防除を行ってきた結果として発生地域内の感染割合が大幅に低下した現在の状況においては、通常のアブラムシ防除を実施していれば、PPVのまん延防止は可能と判断される。
令和2年度ウメ輪紋ウイルスに関する対策検討会〜農林水産省Webサイトより引用
平たく言えば、事実上の「緊急事態宣言の解除」ですね。
ようやく、梅の再生へ国のお墨付きをもらった、といえるでしょう。
手弁当の、つるし梅かざり
産業や観光も大打撃ですが…
青梅市のシンボルともいえる、梅。
梅の復活を願う市民も、数多くいました。
「梅の公園」を中心に、春になると町を彩る「つるし梅かざり」。
植物観察グループ・幾代会が中心となり、作成・展示しています。
また、市内の小中学校へも活動を呼びかけ、参加しています。
青梅を中心に、植物の調査や自然観察会をするグループ。
いわば、吉野梅郷のオーソリティーにとって、梅林の喪失は衝撃だったことでしょう。
せめて、梅の再生が始まるまで、梅郷を彩りたい。
その気持ちから、つるし梅かざりの展示が始まりました。
「梅の再生への道筋も今年(2021年)で見えて、ひと安心です」
と幾代会の方。
材料を仕入れ、手作業での製作、飾り付けと、手弁当で行ってきたといいます。
また、市内の小学校の手芸クラブへの、アドバイスも。
また、青梅夜具地で造る試みも。
青梅夜具地とは、布団用の織物。
昭和中期を中心に全盛期を迎えましたが、現在は生産されていません。
「昔の布団などを寄付してもらい、造っているのですよ」
材料の調達ひとつとっても、大変です。
「活動を続けて6年、メンバーの高齢化も進みました」
高い場所への取り付けなど、中々活動を維持するのは、難しいようです。
梅の再生を願い始めた、つるし梅かざり。
その道筋がついたこともあり、「今年で、ひと区切りするかも…」。
とはいえ、梅まつりの目玉となった、つるし梅かざり。
存続を願う声も、聞かれます。
市などの全面的なバックアップが得られれば、良いですね。
3月が見頃! 再生の梅
再生の梅、ですが。
まだ、幼木が多く、かつての華やかさはありません。
しかし、その分、展望と開放感のある情景がある、ともいえます。
吉野梅郷の中心地、「梅の公園」は、広い敷地を活かし、多くの品種の梅が楽しめます。
梅の里は、百花繚乱
春は、他の花も盛りを迎えます。
数多くの野草が、楽しめます。
2月から3月にかけて、フクジュソウ、セツブンソウ、アズマイチゲなどが咲きます。
梅のシーズン終わりには、早咲きのカタクリが見られるかも。
梅の公園近くの、天澤院のお庭にも、セツブンソウが咲いています。
木々の花も、山を彩ります。
冬から2月下旬にかけてはロウバイ。
2月下旬からは、サンシュユの黄色い花も。
一年ごとに成長する、梅郷。
ウイルスを克服して再生した梅は、コロナ禍の験担ぎにもなりそうですね。
秋は彼岸花もキレイですよ。
インフォメーション
アクセス
JR青梅線・日向和田駅より、徒歩15分
駐車場…有り