青梅街道沿いにある、二俣尾の「多摩書房」。
東京最西端の本屋さんとして、時折、話題となります。
なぜって、相当、年季が入っている外観は、一度見たら忘れられない…
最近は、鬼滅の刃が全巻揃っている、という情報がSNSで駆け巡り、話題となりました。
でも、それだけではないのですよ。
歴史を語れる本屋さんの、意外な事実に迫ります。
多摩書房は、2023年に閉店しました。長らくの営業、お疲れさまでした。
目次
東京最西端の本屋さんは、昭和の歴史を背負う
山里の集落に、なぜ本屋さんがあるのか?
東京・最西端の本屋さん、多摩書房。
最寄りの駅は、2006年に無人駅となった、二俣尾。
人家も少ない二俣尾に、なぜ、本屋さんがあるのでしょうか?
昔、二俣尾は、セメント原料の石灰石の町でした。
北側の山をひとつ超えた成木地区の採掘場から、索道(ロープウエイ)・インクライン(トロッコ)を使い、二俣尾まで、専用線で運んでいました。
そこから、青梅線の貨物で、セメント工場へ輸送。
多摩書房が開業した当時、二俣尾は鉱山の町として、栄えていたのでしょう。
専用線は1964年に廃止、1971年には、駅での貨物扱いも廃止となります。
二俣尾は、徐々に衰退し始めます。
駐車場を備えたコンビニができ、ネット通販が台頭し、そもそも、書籍の発行自体が少なくなった今。
「町の本屋さん」は次々に廃業しています。
青梅でも、数少ない書店のひとつが、今年(2020年)、閉店しました。
そのような中、多摩書房があるのは、奇跡なのかもしれません。
多摩書房は、東京で一番西にある本屋さんです。※
ここより西の、奥多摩町や檜原村には書店がありませんし、日の出町もイオンモールなどにはありますが、西部にはありません。
「鬼滅の刃」が揃っている、とメデイアでも紹介
テレビアニメも放映された、鬼滅の刃。
単行本が中々手に入らず、プレミアが付くほどの社会現象となっています。
そのような中、SNSで「多摩書房に全巻揃っている」と拡散され、またそれを元に取材した記事が、メディアで紹介されました。
本当に営業中?な見た目だけど…「鬼滅全巻そろってます」 まさかのギャップで話題「多摩書房」に行ってみた
Jタウンネット
東京都青梅市にある書店「多摩書房」がツイッターで注目を集めている。無人駅であるJR二俣尾駅のすぐ近くに店を構える、小さな本屋だ。
そんな本屋がなぜ突如として話題となったのか。こちらの写真を見てほしい。
何かあったら崩れてしまいそうな木造の建物。看板にはかつて主婦の友社が刊行していた月刊誌「主婦の友」の名前と大きく書かれている。店名は今にも消えそうだ。店全体にかなり年季が入っていて、失礼ながら、本当に営業しているのか不安になる。
この記事では、触れていませんが…
「鬼滅の刃」の主人公は、奥多摩・雲取山の炭焼き職人という設定。
他にも、いわば多摩書房の裏山である、日の出山や大岳山出身のキャラクターも登場します。
もしかして、多摩書房では、「郷土書籍」的な意味合いで、執念で全巻取り揃えているのかな、と訊ねてみると…
「いや、お客さんが買いたいって、問い合わせが多いからですよ」
と、意外とドライなお答え。
ネタ的には、奥多摩の山が舞台だから、と言ってほしかった(笑)
まあ、見た目から想像するよりも(←失礼だけど)、商売熱心なのでした。
昭和59年発行の、36年前の本が、売っていた
鬼滅の刃は、ともかくとして。
多摩書房では、どのような本が、揃っているのでしょうか?
このお店ですが、間口の割に奥行きがなく、狭い店内です。
店内は、まさしく「昭和の本屋さん」。
サザエさんに出てくるような、立ち読みをしていると、ハタキをかけられるような感じ。
いや、実際はそんなイジワルされませんので、ご安心を。
狭いながらも雑誌を中心に、絵本や参考書などがあります。
文庫や文芸書、ハウツー本なども少ないながらも、あります。
ある特定の分野に片寄っているのではなく、オールジャンルな感じです。
成人向けの雑誌も、ありました。
これを見て、思い出したのですが…
昔、北海道の、とある離島へ行った時のこと。
小さな集落のキャンプ場に、泊まりました。
集落にある商店は、「よろずや」的なお店がひとつだけ。
生鮮食料品から、酒、雑貨、電球やら工具まで、細々としたものを売る小さな店でした。
ほんの少し、本も売っているのですが、成人雑誌も置いてるのです。
究極にアイテムを絞った生活必需品しかない、小さなよろずや。
それに、成人雑誌が選ばれているのです。
人間って、そういう生き物なんだな、とちょっとしみじみしました…
話が脱線してしまいました。
本棚を眺めていると、店の奥に、如何にも古い本が並んでいました。
多摩地方の、郷土資料的な本。
古本なら、ラベルなどで値段が記されているけれど、そうでないから、おそらく新刊書。
あんまり古いので、売り物なのか判断しかねたけれど、会計をお願いすると…
「汚れちゃっているけれど、良いですか?」
いえ、それは構いませんが、売り物だったのですね。
この本ですが、地元の郷土資料家の、多摩地区の寺院を研究した書物。
ちなみに、青梅の図書館にもありますが…
資料として、手元にあったほうが良いかなと思い、購入しました。
さて、奥付をみると…
昭和59年、今から36年前(2020年現在)の本です。
新刊で店頭に並べ、よくぞストックしていたのだと、感心するやら、驚くやら、呆れるやら。
ちなみに、今の本にはあるバーコードやISBNコード(図書コード)は、付いていませんでした。
店構えも昭和の香りがしますが、品揃えも昭和のデッドストックがあり、中々貴重な書店でした。
お店に入るのに、ちょっぴり勇気がいりますが?、近くへお越しの際は、是非足を運ぶと良いですよ。
インフォメーション
アクセス
多摩書房は、2023年に閉店しました。長らくの営業、お疲れさまでした。
JR青梅線・二俣尾駅より、徒歩2分
●多摩書房
営業時間… 9:00〜17:00
定休日… 日曜日・祝日
住所… 東京都青梅市二俣尾4丁目1098
電話… 0428-78-8496