青梅市・滝ノ上町の常保寺。
招き猫姿のお地蔵さんのある、珍しい寺です。
青梅市内には、猫をモチーフとしたアートも点在。
猫地蔵とあわせて、猫を巡る散策をしてみました。
目次
青梅は猫の町? 猫地蔵と、ストリートアートを楽しむ小旅
織物の町の、猫地蔵
ここ数年、「猫の町」として売り出している、東京都・青梅市。
青梅駅周辺の商店街などに、猫をモチーフとしたアート作品が楽しめます。
なぜ、猫の町のかというと…
青梅は、その昔、織物の町でした。蚕の天敵は、ネズミ。蚕の卵、幼虫、繭玉を問わず、食い荒らしてします。
中華料理では、蚕のサナギを食べますが、栄養価が高いそうです。ネズミが食べるのも頷けます。
そのネズミを退治する猫が、重宝がられたのですね。
絹の産地を中心に「養蚕守護」の信仰があり、青梅もそのひとつなのでしょう。
もっとも、青梅には、さほど猫はいません。正直、あまり見かけない… 海辺の町と違い、猫の餌も少ないし、冬は寒い。
今は多少暖かくりましたが、小泉八雲の雪女は、青梅が舞台。昔は、深い雪も降る山里で、だからこそ、猫が大事にされたのかも。
現在、「猫の町」で売り出しているのは、観光プロモーションの側面が大きいですが… 歴史的には、そんな背景があるのです。
常保寺の猫地蔵
青梅駅から多摩川方面へ下った、滝ノ上町。室町時代創建の禅寺・常保寺があります。
山号は「瀑布山」。昔、境内に小瀑布(小さな滝)があることから、名付けられました。
憶測ですが…
お寺の多摩川寄りに、滝があります。常保寺近くから多摩川へ注ぎ込む、白滝です。
地名の「滝ノ上」も、ここから名付けられました。
多摩川は、時代とともに流れが少し変わっていますが、この付近も、境内だったのかもしれませんね。
昭和後期に建てられた本堂は、モダンです。
境内にはたくさんのお地蔵さんが、祀られています。
猫地蔵は、本堂手前・右手にあります。
意外とふっくら、栄養が行き届いたような、招き猫。
元々は、青梅市・裏宿のお寺にありましたが… 昭和の中頃、廃寺に伴い、当時の住職が、引き取ったそうです。身寄りのない猫、やはり、忍びなかったのでしょうか?
養蚕農家も多かったこの地、猫地蔵を拝み、豊穣を願った人々の想いを偲ばせます。
境内の「白瀧不動尊本尊」。
剣に巻きつき飲み込もうとしている龍が祀られ、一見の価値があります。
小さな石庭もあります。
石庭の石仏。
石庭には、芭蕉塚も。裏面には
「玉川の 水におほれそ おみなへし」
と書かれています。
青梅市内には、6ヶ所芭蕉塚があり、芭蕉がこの地を訪れたのかはともかく、ロマンがありますね。
絵本作家の、猫看板もある
せっかくなので、猫の町を散策しましょう。
猫をモチーフにした看板やオブジェ、パロディ作品などが、青梅宿の街角にあります。
JR青梅線・青梅駅近くの「にゃんにゃまがり」。
駅のすぐ傍なのに、車も通れない路地があります。
塀や路傍に、猫のオブジェ。ちょっと不思議な空間です。
駅から、青梅街道を東へ少し歩き、左手・自転車屋さんの角に、雪守横丁があります。
車は通れませんが、大正時代創業の伊勢屋豆腐店もあります。仕入れする時、大変そう。
ここには、映画や宣伝ポスターのパロディが。
かなり、細かく書かれ、ついつい見入ってしまいます。
青梅街道沿いは、昔の宿場町。歴史ある商店街ですが、郊外の大型商業施設、さらにはネット通販の影響で、寂しさは拭えません。
町に活気を取り戻そうと、映画看板のパロディが数多く展示されています。
バス停の、ホウロウ看板パロディ。
電話ボックス近くの看板。
絵本作家・山口 マオさんの作品です。
「わにわに」シリーズの絵を描いている方ですね。
人気絵本作家の看板があるなんて、美術館みたいですよね。看板巡りは、30分もあれば充分。
青梅駅で列車の乗り継ぎで、時間があるならば、ひと周りするのも良いです。
町に潜む、本物のレトロ
猫看板巡りのついでに町並みを歩くと…
町には、昔の木造家屋が多いことに、気が付きます。
それがまた、いい味、出している。
傘屋さん。昔、青梅は和傘の産地だったのですね。
公民館。現存というか現役です。
ロゴも美しい、十字堂薬局。
ディテールも観察すると、面白いです。
やや、マニアックですが、例えば…
民家の玄関を見ると、電話番号のプレートがあります。
3〜4桁の番号で、これはまだ、市外局番がない時代のモノです。
市外局番は、1961年(昭和36年)に整備され、徐々に交換手を通さず、市外でもダイレクトに、電話できるようになりました。
つまり、このプレートは、60年以上前のモノ、ということです。
こういうモノが現存しているのは、歴史のある地方都市ならでは、ですね。
当時は電話を引くのはステータス、加入者に、電電公社がプレートを配っていたらしい。また、電話のある近所の人に、親の危篤などの連絡を間借りしたり、なんてこともあり、番号を掲示していたのでしょう。
「ハイヤー・観光バスは」のプレートは、「五王自動車」、西東京バスの前身です。
これもレアですね。番号が2676〜2876まで、3回線あったようです。
「レトロ風」を楽しむのも面白いですが、本物のレトロも町に潜んでいます。そちらも注目すると、いっそう楽しい。時代を謎解きしながら歩くと面白し、貴重な生き証人です。
そうそう、2021年春にオープンした、シネマネコも近くにあります。猫づくしですね。
映画館のカフェも良いですよ!
インフォメーション
マップ
アクセス
●臨済宗 建長寺派 瀑布山常保寺
Webサイト… https://jyouhoji.jiin.com
住所… 東京都青梅市滝ノ上町1316
JR青梅線・青梅駅より、徒歩7分