サイクルトレイン、ラックバス… 青梅・奥多摩の次世代サイクリングを考える

東京有数のサイクリングスポット、西多摩。
休日ともなれば、青梅街道・檜原街道に自転車が颯爽と走ります。
近年、各地で自転車を鉄道やバスに載せる、サイクルトレイン・自転車ラックバスも登場。
西多摩の、サイクリング近未来を考えてみます。

鉄道でワープする、青梅・奥多摩サイクリング?

サイクルトレインに積極的な、西武鉄道

福生・多摩川の桜とサイクリング

2022年11月、西武鉄道では、池袋線・新宿線でのサイクルトレインの実証実験をしました。

サイクルトレインとは、自転車をそのまま列車に持ち込めるサービスです。
従来、列車を自転車に持ち込むときは、前輪を外して分解、専用の輪行袋へ入れのが条件です。
折りたたみ自転車でも、袋に入れる必要があります。
何だかんだ、面倒ですよね。

この実証実験のキモは、西武新宿線・井荻駅に停車すること。
井荻駅は、環八のすぐそば。家から自転車で井荻駅まで走り、目的地まで列車で移動できます。
つまり、「鉄道でワープ」しちゃうのですね。

おそらく、ですが…
新宿などターミナル駅に自転車を持ち込むと、トラブルになりそうです。駅も大きく、人も多いですし。
ならば、幹線道路近くでピックアップすれば、鉄道会社も利用者も快適でしょう。頭良いですね!

すでに、西武多摩川線では、サイクルトレインを実施。
西武のサイクルトレイン施策は、かなり本気ですね。

背景には、コロナ感染症での、鉄道利用者の減少があるのかと…
日常生活でのサイクルトレインにつぎ、観光需要も狙っているのでしょう。

西武に続き、2023年1月には、京王もサイクルトレインの実証実験を実施。
新宿〜高尾山口駅間で運行。混雑する新宿から持ち込めるは、かなり意欲的ですね。

JR東日本でも、水郡線でサイクルトレインを実施しています。
事前登録者が必要なローカル線でのサービスですが、JRも中々、積極的ですね。

西武拝島線で、サイクルトレインが走れば…

多摩川サイクリングロード
多摩川サイクリングロード

西武池袋線での実証実験では、40000系・通勤型車両で行いました。
この車両は、西武拝島線でも運行中。ということは…
都区内から拝島まで、サイクルトレインも現実的でしょう。

拝島は、西多摩の玄関口、サイクリング人口も多いです。
また、多摩川サイクリングロードも近く、川沿いを下る快適なサイクリングで、都区内に戻れます。

鉄道会社なら、そのあたり、充分リサーチしているかと。
川越・秩父など、西武線沿線の観光地と異なり、グループ全体でのメリットが薄いでしょうが…
拝島線も是非、お願いします。

拝島から奥多摩まで、約35km。都区内から自走すれば、倍以上の距離。
サイクルトレインを使えば、現地でタップリ走れます。
もちろん、ガチガチのサイクリストなら、すでに輪行しているでしょうが…
「普通の人」も気軽に楽しめるのがミソです。

サイクルトレインは中央線で走るか?

JR青梅線・東京アドベンチャーライン

欲を言えば、JR中央線・青梅線でも、サイクルトレインが走れば良いですよね。
ライバルの京王が成功すれば、ウカウカしてられません。

西武をロールモデルとするならば、中央線快速・荻窪駅でのピックアップとなります。
京王の実証実験で、新宿から自転車を持ち込むオペレーションが成功すれば、各都心のターミナル駅からの運用が進むかも?

都心からの持ち込みが出来なくとも、青梅線・五日市線内で運用する可能性は、より高いでしょう。JR東日本は、水郡線でサイクルトレインを走らせていますし。

特に五日市線は、独立した路線。
休日は拝島駅発が多く、オペレーションも比較的しやすすいかと。五日市線は赤字路線、多少なりとも増収入になれば、悪い話ではありません。

青梅線ならば、拝島〜奥多摩駅間のみ、サイクルトレインにするのも手でしょう。
拝島より先は、乗客も少なく、割と運用しやすいかなと。
西武線のサイクルトレインと組み合わせれば、都区内から鉄道で自転車で行けます。
「取らぬ狸の皮算用」的に、なりましたが… 西多摩でもサイクルトレインが走れば便利ですよね。

サイクルトレイン + ラックバス + シェアサイクルが、最終形?

観光地のレンタサイクル事情

しまなみ海道の橋
しまなみ海道

観光地でのレンタサイクル・シェアサイクルの成功事例としては、しまなみ海道と金沢が挙げられます。

しまなみ海道の、自転車レーン

しまなみ海道レンタサイクルは、広島・尾道から愛媛・今治まで、瀬戸内海の島を通る、約70kmのコースです。
以前、しまなみ海道をサイクリングしましたが…
橋などは、自転車・歩行者専用レーンもあり、安心してサイクリングが楽しめました。
また、官民一体で連携し、宿やレストラン、レンタサイクルも整備。乗り捨ても可能で、地図やガイドブックなどのソフト面も充実しています。

金沢城
金沢城

金沢・まちのりは、シェアサイクルの先駆けです。
金沢市内の観光スポット・商業施設などに多数のポートを設置。30分165円と、初乗りを格安とし、回転率を高めています。
観光客はもちろん、地元の方も気軽に利用しています。

金沢・近江町市場
金沢・近江町市場

市が主体となり、10年以上前からサービスを開始したのは、市内の渋滞緩和が背景にありました。車社会の地方都市ならではの、シェアサイクルですね。
以前利用しましたが、点在する観光スポットやレストランを回るのに、かなり便利です。
市内70ヶ所もの貸出・返却ポートがあるのが、なんといっても魅力。このようなサービスは、徹底しないとダメなんですね。

シェアサイクル ✕ サイクルトレインの、あかぎcogbe

とはいえ、これらは稀有な成功事例でしょう。
しまなみ海道は、巨大な建設費を伴う本州・四国連絡橋事業の一環。
金沢は、年間一千万人規模の観光都市です。これらのスキームは、他では難しいです。
もっと、小規模な事例をみましょう。

2021年にサービス開始したあかぎcogbe(コグベ)
前橋市が運営する、シェアサイクルです。

このシェアサイクル、駅前にポートがあり、そのまま、「上州電鉄サイクルトレイン」に乗れます。
つまり、シェアサイクルとサイクルトレインの、いいとこ取り。
金沢の都市型シェアサイクルのように、ポートを増やせない地方では、上手いビジネスモデルです。

西多摩ならば、青梅線・青梅〜奥多摩駅間で行えば、面白いでしょうね。
手ぶらで出かけて、点在する観光スポットを、自転車と鉄道を組み合わせ、つまみ食い出来ます。

バスで自転車! サイクルラックバスの可能性

鉄道だけではなく、バスに自転車を載せるサービスも。
バス前面に、2台に自転車を積める、自転車ラックバスです。
すでに国内数社で運行。首都圏だと、神奈中バスが実施しています。

西多摩の場合、檜原・奥多摩など、坂の多いエリアにあれば、便利でしょう。
峠までバスで運び、下りだけ楽しめます。
特に、里との標高差が800mほどある、檜原都民の森などで運行すれば、人気でしょう。

奥多摩周遊道路
奥多摩周遊道路

西多摩の地方自治体は、赤字路線維持のため、バス会社に助成しています。ならば、官民協働で、自転車ラックバスを運行しても良いと思いますね。
あきる野、奥多摩、檜原などでは、すでにレンタサイクル店があります。組み合わせれば、気軽に山岳道路サイクリングを体験できるでしょう。

サイクルトレイン、自転車ラックバス、レンタル&シェアサイクルと、様々な取り組みをみてみました。
サイクリングが盛んな青梅・奥多摩で、これらのサービスを始めれば、裾野が広がるかと。
箱モノと比べ、比較的、低予算で可能な観光施策、官民連携で実現出来れば良いですね。
また、ひとつの自治体だけではなく、地域での連携も大切でしょうね。

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