都内で貴重な自然が残る、青梅・奥多摩エリア。
多摩川の河原など、ゴミ問題がクローズアップされています。
他のエリアの取り組みも紹介、解決策はあるのでしょうか?
目次
本人認証や有料化で解決? 観光地のゴミ問題
新聞・SNSで報告される、西多摩のゴミ問題
青梅・御岳・奥多摩は、都内でも自然豊かなエリア。
渓谷・山岳部の多くは、秩父多摩甲斐国立公園にも指定されています。
その貴重な場所ですが…
2023年7月、御岳渓谷のゴミ問題が毎日新聞で報道されました。
報道の2週間ほど前、東京都のTwitter(現 X)で注意喚起。
御岳渓谷は国立公園内、行政もご立腹です。
夏休みシーズンとなり、地元では、青梅市・釜の淵公園のゴミ放置問題が話題に。
上流の奥多摩町観光協会でも、ゴミの不法投棄が報告されました。
キリがないので、リンクはこのくらいにしますが…
ゴミの種類から、河原などでのデイキャンプでの不法投棄と察せられます。
キャンプブームが一因か
日本のキャンプ場稼働率と収入を、グラフ化しました。
青い折れ線は、キャンプ場の稼働率です。
約20年間で、稼働率は2程度弱アップしました。
稼働率だけではなく、オートキャンプ参加人口も、2010年・720万人→2019年・860万人と増加(オートキャンプ白書2020)。着実に増えています。
緑の折れ線は、日本の賃金(給与)指数。2020年を100%とした収入の指数です。
2009年のリーマンショックで大きく落ち込み、徐々に回復するも低迷しています。
つまり、ここ20年ほど、日本では収入が伸び悩んでいます。
キャンプ人口と収入に、相関関係があるのかはともかく。
旅行などと比べ、比較的安価に楽しめるキャンプが人気を博すのは、頷けます。
とはいえ、キャンプ場といえども、それなりの費用はかかります。家族4人のファミリーキャンプで、1泊5千円〜1万円程度でしょうか?
奥多摩・氷川キャンプ場を例にあげると…
JR奥多摩駅からほど近い、氷川渓谷の管理の行き届いたキャンプ場です。
1人1泊2,000〜2,500円。デイキャンプでも1人1,500円です。自動車で行けば、1日700円の駐車料金も必要です。
「そんなお金、払いたくない」
という人はどうするか? 無料で利用できる河原などで、キャンプすることに…
たとえば、青梅市・釜の淵公園付近の河原。
青梅市が管理する公園で、隣接する河原は市民の憩いの場です。
レジャー系・キャンプ系のWEBサイトでは、デイキャンプやBBQとして紹介されていますが… キャンプ場としては、整備されていません。
トイレや水場(というよりも水飲み場)は、河原から離れた公園内にあります。
つまり、公式的にはキャンプ場ではありません。
キャンプ場以外で、キャンプは出来るのか?
となると…
「キャンプ場以外でのキャンプは合法か」
が焦点となります。
公園は市の管轄ですが、一級河川の多摩川は、基本的に国土交通省の管轄。ちなみに、同じ多摩川でも、青梅市万年橋から上流は東京都の管理となります。なんか、ややこしいですね。
国土交通省「河川区域図」と航空写真を合成。赤いラインの内側が、「河川区域」です。
では「河川」はどのように利用できるのでしょうか?
河川は公共のものですから、原則として誰もが自由に利用することができます。これを「自由使用」といいます。
京浜河川事務所Webサイトより引用
バーベキューについては…
以下の行為は危険・迷惑行為として社会的にも問題となっていますので、十分注意して下さい。
京浜河川事務所Webサイトより引用・抜粋
バーベキュー関係
直火は火災の危険がありますので止めて下さい。騒音は近隣住民の迷惑となります。ゴミは必ず持ち帰りましょう。ゴミの不法投棄は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により禁止されています。
と、法律的には禁止できず、「お願い」レベル。ゴミの不法投棄は、他の法律で制限されていますが、利用自体は原則的に合法なのでしょう。
青梅市の検討案は
国土交通省では、官民連携事業(サウンディング)を推進。
各自治体のサウンディングを支援しています。
国交省のサイトでは、青梅市・釜の淵公園周辺の検討案(PDF)が掲載されています。
日時を見るの2017年。かなり前から、市は青写真を描いているのですね。
これによれば、バーベキューサイトを集約化。他は立ち入り禁止とします。
別の資料(PDF)によれば、アウトドア用品ショップやカフェなども俎上に。
小規模ながら、アウトドアリゾート的な施設を考えているのでしょうか?
とはいえ、現状、ゴミ問題は深刻です。次章では、他の自治体の事例を紹介します。
有料化すると、ゴミは減るのか?
青梅・奥多摩と同様に、河原のゴミ問題が深刻だった飯能。
民間業者に委託する形で、河原の有料化に踏み切りました。
有料エリアは1人・1日1,000円で火気の使用が可能。利用料金にゴミの処理代も含まれています。
無料エリアは、火気禁止。「お弁当でピクニック」的なライトな利用が可能です。
専属スタッフが常駐し、秩序が保たれるのが良いですね。
飯能の河原は県の管理下ですが、市からの要望を受け、河川の占用の許可。
受益者負担で管理するスキームは、市民にも受け入れやすいでしょう。
「有料化」により、民度が上がることが期待できます。
すべての人がそうだとは言いませんが…
「無料が当たり前」と考える人は、サービスにかかる費用も無料だと思いがち。「ゴミを処理するコスト」が理解しないゆえ、不法投棄をするのかと。
先に紹介した、青梅市の検討案も、飯能河原に近いのかもしれませんね。
予約制で、クリーンな環境に?
都立野川公園のバーベキュー場は、無料にも関わらずキレイです。
推測ですが…
バーベキュー場は完全予約制。予約の際、氏名、電話番号が必要です。
名前や電話を登録すれば、悪いことはしにくいですよね。
公園には管理者もいて、秩序が保たれる側面も大きいです。これは予算が比較的潤沢な都の施設なでは、なのでしょう。
御岳渓谷や奥多摩は、新たなゾーニングを!
御岳渓谷や奥多摩・氷川渓谷は、秩父多摩甲斐国立公園内です。
ビジターセンターのSNSでは…
「氷川渓谷は、キャンプ場以外では、直火での焚き火は禁止されています。」
と、国立公園内の割に弱気な発言です。
というのも、国立公園内とはいえキャンプが禁止なのは、特別保護地区・特別地域のみ。
御岳渓谷や氷川渓谷は、どのエリアに属すのでしょうか?
環境省・国立公園の概要図(2023年度発行のパンフレット)を見ると…
水色の「普通地域」以外は、特別保護地区・特別地域となります。御岳渓谷・氷川渓谷ともに、キャンプ可能・禁止エリアが混在しています。
少なくとも法律上は、「一概にダメ」とは言えない。ビジターセンターのSNSが弱気なのも、そのような背景があるのでしょうか?
御岳渓谷の河原には、絶滅危惧ⅠA類のアケボノソウなど、希植物も自生。
ゴミの不法投棄は論外、本来、野営やバーベキューなども制限すべきエリアです。
自然公園のゾーニング(制限区域)の見直しが必要かと思われます。
とはいえ、釣りやラフティング、ボルタリングなども盛んなエリア。人家もあります。
ゾーニングには、アクティビティに対する一定の配慮も必要でしょう。
どのようなゾーニングするかは、議論があるでしょうが… ゴミ問題を含め、自然との付き合い方を見直す時期でしょうね。
インフォメーション
参考文献
- 国土交通省関東地方整備局
多摩川等、河川の情報・利用方法など - 登山者ための法律入門
国立公園内の利用制限について - 埼玉県
飯能市・河原の都市・地域再生等利用区域について - 厚生労働省
厚生労働統計一覧・毎月勤労統計調査 - 一般社団法人 日本オートキャンプ協会
オートキャンプ白書2023・巻頭要約