住む街を決める際、気になるのは、自治体の健全性と住民サービス。
財政がひっ迫すれば、行政もおろそかに…
都内ならば、23区なのか、それとも多摩?
「財政力指数」など、各種データをもとに考察します。
真ん中から西が良い、東京・区市町村の財政
地図で見る、東京の財政力指数

住む自治体で異なる、福祉や教育などの行政。
財政が健全な自治体ならば、無理のない行政サービスが提供できるはずです。
財政の豊かさの指標となるのが、財政力指数です。
財政力指数
出典 朝日新聞出版発行「知恵蔵」
財政力指数が高いほど自主財源の割合が高く、財政力が強い団体ということになり、1を超える団体は、普通地方交付税の交付を受けない。
さっくりいうと、財政力指数が1より大きければ、健全ですが…
全国1896の区市町村で、1を超えるのはたった80団体ほど。
大半の自治体が、国からの交付金で、なんとかやり繰りしています。
もちろん、国税と住民税の割合など、制度上の理由もありますが、中々、危ういですね。
東京都でも、財政力指数が1を超えるのは、10の自治体のみです。

総務省令和4年地方財政状況調査を元に作成
上の地図は、東京都内の区市町村の、財政力指数を色分けしたもの。
大まかに、緑〜黄緑は健全で、黄色はそこそこ健全、オレンジは不健全、赤は「ヤバめ」となります。
ひときわ濃い緑色は武蔵野市。全国でも10本の指に入る、超優良な財政です。
全国的には、交付金の大きい原発や、化学コンビナートのある自治体が超優良。ディズニーランドのある浦安なども優良です。
武蔵野市は商業地・吉祥寺を有し、企業・高所得者も多いのですが… 一点豪華主義ではないのが凄いですね。
また、武蔵野周辺の三鷹・府中など、多摩東部の市は軒並み高いです。
八王子、町田も財政力指数こそ1を切りますが、まずまず優良でしょう。
西多摩だと、瑞穂町が1と健闘。横田基地や大手企業からの税収でしょうか?
財政力指数は、ひとつの指標ですが…
庶民に手の届く居住費でかつ、住みやすいのは、おそらくは多摩エリアですね。
なぜかイマイチな、東京23区の台所事情

東京23区の財政力指数を、拡大しましょう。
港区が1.22でダントツに優秀。以下、渋谷区、千代田区と続きますが…
正直、他は優秀とは言えません。
例えば、千代田区の財政力指数は0.87。あの丸の内・大手町を有する区なのに「まあまあ」程度です。
比べるのもナンですが… キャベツが特産品の、西東京市より低いです。不思議ですね。
あの新宿区が0.67、高級住宅地も多い杉並区が0.62。新宿から電車で1時間ほどの、青梅0.82より、かなり低いです。
池袋のある豊島区は0.54、品川区が0.56。あきる野や日の出町に負けています。
城北・城南になると、相当悲惨です。葛飾・荒川などは、0.35です。
過疎化と高齢化で、中学校がひとつしかない奥多摩町の0.28と、さして変わらないレベルですね。
財政と行政サービスは、比例するのか?
財政が厳しければ、行政サービスは低下するのでしょうか?
各自治体の国民健康保険・年額(4人世帯・給与収入400万円)と、財政力指数を分布グラフにすると…

東京社保協・総務省のデータを引用し、作成
余裕のある自治体は、保険料は安い傾向ですが…
大盤振るまいする自治体もあり、一概には言えません。
「大盤振るまい派」は、奥多摩町・檜原村。檜原など、都区の半分程度の保険料です。
支出が多いから財政が苦しいのか。それとも、財政が厳しいのに、気前よく還元するのか?
どちらにしろ、後々、財政がキツくなりそう…
都市部の貧乏自治体は、総じて、保険料が高く「無い袖は振れない派」です。
もっとも、港区・渋谷区のように、裕福であっても、都区部は保険料が高い「堅実派」が主流です。
武蔵野や府中など、多摩の優良自治体はバランスが良いですね。豊富な財源を、無理のない程度に住民に還元しています。
結果を見る限り、保険料の負担は、自治体の胸三寸。
安すぎるのも考えもので、住民としては、バランス感覚の良い自治体が安心でしょうね。
義務教育費と、財政力の関係

東京都教育委委員会・令和3年度・地方教育費調査報告書・総務省を元に作成
自治体別の、小学校児童1人当たりの支出額(公費)を色分けしました。
色が濃いほど、教育費にお金をかけています。
奥多摩町や檜原村が支出額が多いのは、生徒数が極端に少ないから。檜原村などは全児童数・53人と、1学年が10人に満たないのだから、コストはかかります。
自治体にとって学費は、削れない支出です。
「お金がないから、義務教育はしません」
とは言えない…
義務教育の財源は、国や都の補助もあり、一概には言えませんが、自治体の負担もかなり大きいでしょう。
東京・区市町村の財政力指数と、児童1人当たりの教育費(公費)をグラフ化すると…

ブルーは財政力指数、紫は教育費です。
義務教育の支出は、財政力とは、ほぼ無関係という結果ですね。
一番支出が多いのは、中央区。児童1人あたり166万円強です。
ちなみに一番少ないのは、あきる野市の19万円強。
あきる野市と比べ、中央区は財政力指数は低いのに、8.7倍程度の費用をかけています。
なぜ、これほど違うのか、不思議ですが…
中央区は「建築費」の支出が多いのが特徴。
超高層ビル・東京ミッドタウン八重洲に小学校を造るなど、高コスト体質なのでしょうか。
また、学校ごとに特色のあるカリキュラムで、かなりの費用をかけていると思われます。
西多摩の地域サイトとしては、一応、あきる野を弁護すると…
必ずしも教育費と生徒・保護者の評価に、相関関係はありません。
学校・口コミサイトの、みんなの中学校情報を見ると…
一番教育費の少ない、あきる野市立・西中学校が、都内・公立校約600校中、第3位の高評価。(2023年2月現在)
低予算なのに、「顧客満足度」が高く、コスパ最高です。金をかければ良い、わけじゃないのね…
箱モノに金を掛けなくとも、ソフト面でカバーできるのもまた、教育なんでしょうね。
健康保険と教育のデータを、財政面から検証しましたが… 要は、限りある予算でどの分野に力を入れるのかは、自治体の方針でしかないのでしょう。
とはいえ、将来に渡り、質の高い行政サービスを行うのは、財政の健全性は必須。
移住・引っ越しをするならば、ざっくりと自治体の予算を調べると、良さそうですね。
インフォメーション
参考文献
- 総務省
令和3年度地方公共団体の主要財政指標一覧 - 東京都教育委員会
地方教育費調査報告書 - 東京社会保障推進協議会
2016年度 都内自治体での国保料順位表(PDF)