2024年度以後、中央線・青梅線の快速列車が、既存の10両から12両編成となります。
グリーン車を2両増設し、普通車にもトイレを設置。
便利になるのは間違いありませんが、一方、青梅市民には懸念も。
現時点で判っていること、そして青梅線の将来を大胆予測します!
中央線・青梅線12両化とは?
グリーン車でゆったり通勤?
2024年度末に予定されている、中央線快速・青梅線快速列車の12両化。
当初は、2023年度を予定していましたが、世界的な半導体不足の影響で、時期が遅れる見込みです。
変革のスピードアップのための投資計画~2022 年度設備投資計画~(PDF)
現在の10両に加えて、2階建てグリーン車を2両、増結します。
グリーン料金はかかりますが、ゆったり都内を往復出来るのは、朗報です。
グリーン車は自由席で、必ず座れるとは限りません。
しかし、今まではほぼ座れなかった、新宿駅からの下り列車などでも、着席チャンスが広がると予想されます。
乗車時間が長い、青梅線沿線住民としては、嬉しいですね。
12両編成の対象となるのは、中央線快速列車の東京〜大月駅間、青梅線の立川〜青梅駅間で、中央線に直通する全ての列車です。
青梅線内のみで往復する列車は、10両編成が基本となるようです。
また、五日市線や八高線は、対象とはなりません。
現在、朝の通勤時間帯に、五日市線・八高線の中央線直通列車がありますが、2022年3月で運転終了しました。
また、グリーン車にはトイレが設置されます。これも長距離乗車では、メリットですよね。
併せて、普通車にもトイレが設置されます。
普通車の方は、バリアフリー対応となります。
特急より高い? 快速のグリーン料金
ところで、快速・特快・通勤快速(普通列車)のグリーン料金は、幾らくらいでしょうか?
Suica グリーン料金 | 通常料金 (紙のきっぷ) | 特急指定席 チケットレス料金 | |
---|---|---|---|
新宿〜立川・八王子・青梅 | 750円 | 1,010円 | 660円 |
東京〜立川・八王子 | 750円 | 1,010円 | 660円 |
東京〜青梅 | 1,000円 | 1,260円 | 920円 |
2024年10月現在の、特急列車(あずさ・おうめ)指定席料金と比較してみましょう。
なんと特急より高い!
途中で特急に抜かされることもあるのに、不思議な料金形態ですね。
中央線快速にグリーン車が導入されれば、おそらく「特急おうめ」は廃止?
通勤で今まで愛用している方は、ちょっと残念な結果となりそうですね。
なお、紙のキップは割高で、Suicaの利用をお勧めします。
東青梅駅の、ホームの長さが足りない
12両化を実現するのは、意外と大変です。
大半の駅のホームは、10両編成に対応する長さしかありません。
2両分、ホームを40m延長せねば、なりません。
一番、工事が困難なのは、東青梅駅。
立川側は、ホームのすぐ前が、踏切。
青梅側は、単線となるポイントがあり、その先は踏切です。
また、青梅線は東青梅駅から西側は単線。
東青梅駅の西側で、上下線を合流させているのです。
両端とも、ホームを伸ばしにくい駅なのですね。
東青梅駅は、単線になる
東青梅駅の、苦肉の先
現状では、両端ともホームを伸ばせない東青梅駅。
JRが考えた苦肉の策は、東青梅駅を単線化するアイデイアです。
駅の西側で単線としていたのを、駅の東側で単線にするのです。
下り線を潰して、ポイントが無くなることにより、現在の上り線だけにし、ホームが延長できます。
上のアニメーションは、東青梅駅西側を俯瞰したものです。
白い部分がホームとなる予想です。
上の写真は、東青梅駅の立川寄りです。
赤く囲った部分に、単線化するためのポイントが既に敷設されています。
正式な発表はありませんが、東青梅駅の単線化は、決定事項なのでしょう。
【2023年5月追記】
東青梅駅の単線化が正式発表、単線となりました。
2023/3ダイヤ改正は青梅線・グリーン車化の布石? 東青梅駅は単線にも併せてお読みください。
単線となった場合の、懸念点
- 上下線が同じ番線から発車するので、乗り間違えしやすくなる
- ホームの片面に、上下線の乗客が並び、混雑する
- 単線化により、列車本数が減る
1番目の懸念点は、案内放送や案内表示を充実させることにより、ある程度防げるでしょう。
2番目は、上下線の乗車位置をずらすなどすれば、東青梅駅の乗降客数ならば、対応可能でしょう。
最大の懸念点は、東青梅駅で上下線のすれ違いが不可能となり、現在の列車本数を確保出来ない事でしょう。
果たして、列車本数は減るのでしょうか?
河辺駅・青梅駅の改良工事で、列車本数は確保できる
結論から先に…
物理的には、現在の列車本数は、確保できます。
というのも、東青梅駅・両隣の、河辺駅、青梅駅のホームを増設することが、決定しているから。
特に青梅駅では、奥多摩方面への列車が発着します。
ホームが増える事により、柔軟な運行が可能となるのでしょう。
青梅市役所では、東青梅駅単線化によって、列車の運行が現状通り可能かどうか、JR東日本・八王子支社に問い合わせをしました。
青梅駅等での改良工事により、技術的には現在の列車本数は確保できるとの回答でした。
また、当面は列車本数を維持する予定。
青梅市民としては、「とりあえず」ひと安心ですね。
河辺駅を青梅駅の、代わりにするのか?
しかし、長い目でみると、どうでしょうか?
立川方面からの列車は、基本、河辺駅終着とし、奥多摩方面の発着列車を、河辺駅始発とすることが可能となります。
今まで青梅駅が担っていた、乗換駅の機能を、河辺駅とする運用にしてしまうわけです。
それは河辺〜青梅駅間の列車本数が、激減することを意味します。
これは、東青梅・青梅駅の利用状況次第でしょうか?
需要のある路線の減便は、むやみにはしません。
駅名 | 1990年 | 1999年 | 2009年 | 2019年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
立川 | 114,800人 | 126,791人 | 158,068人 | 166,636人 | JRのみ |
昭島 | 18,450人 | 22,123人 | 25,963人 | 26,016人 | |
拝島 | 15,882人 | 26,653人 | 28,351人 | 29,946人 | JRのみ |
羽村 | 15,564人 | 13,716人 | 14,095人 | 13,687人 | |
小作 | 14,219人 | 16,822人 | 17,525人 | 16,111人 | |
河辺 | 12,323人 | 13,934人 | 13,460人 | 13,417人 | |
東青梅 | 6,644人 | 6,634人 | 6,864人 | 6,493人 | |
青梅 | 8,586人 | 8,027人 | 7,336人 | 6,349人 | |
日向和田 | 707人 | 1,047人 | 978人 | – | |
御嶽 | 986人 | 678人 | 622人 | – | |
白丸 | 66人 | 93人 | 79人 | – | |
奥多摩 | 1,622人 | 1,500人 | 913人 | 866人 |
上の表は、青梅線内の駅の1日平均の乗車人数です。
青梅駅を境に、ひと桁減っています。
青梅駅以西で一番栄えている奥多摩駅も、2019年には866人と、激減しました。
白丸駅にいたっては、百人にも満たない状況。
東京の過疎地といっても、過言ではありません。
青梅駅を、乗換駅としている理由は、ここから西は、乗車人数があまりにも違いすぎるからです。
この状況が大きく変わらない限り、奥多摩方面行きの列車は、青梅駅始発が中心でしょう。
河辺駅止まりの列車は、増えるのか?
現在でも、河辺駅始発・終着の列車は、各平日6本、休日2本。
朝のラッシュ時を中心に、始発列車を設定しています。
東青梅・青梅駅の乗車人数は1日に6千人強、河辺駅の半分程度です。
現在も河辺駅始発の列車はありますが、全て終着列車の折返し運転です。
ホームが増えることによって、始発列車の運用がしやすくなるでしょう。
よって、河辺駅始発の本数が増える可能性はあります。
青梅市民、特に東青梅・青梅駅利用者にとっての関心事は、河辺駅止まりが増え、河辺〜青梅駅間の列車本数が減る可能性、でしょうか?
1990年 | 1999年 | 2009年 | 2019年 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
秋川 | 4,901人 | 6,814人 | 7,362人 | 6,499人 | |
武蔵五日市 | 5,356人 | 4,975人 | 4,698人 | 4,164人 | 終着駅 |
上の表は、五日市線の駅での、1日あたりの乗車人数です。
あきる野市の代表駅・秋川駅で、東青梅・青梅駅とほぼ同乗車人数です。
JRにしてみれば、青梅線・河辺〜青梅駅間は、五日市線と同程度の輸送力で構わないはずです。
現在の青梅線・河辺〜青梅駅間が優遇されているのか、五日市線は冷遇されているのかは分かりませんが…
河辺駅での折返し運転がしやすくなれば、将来、この状況が変わるかもしれませんね。
青梅線 青梅駅発・東京方面行き | ←←うち・立川止まり | 五日市線 秋川駅発・拝島方面行き |
---|---|---|
106本 | 52本 | 52本 |
現在、青梅線の東京方面行きの列車は、106本(2021年)。
参考までに、五日市線・秋川駅発・拝島(東京)方面行きは、52本。
平日・昼間は1時間に2本程度の本数です。
本数が違い一律には言えませんが、青梅線では、立川行きの列車は、全て河辺駅発としても輸送能力に不足はない、筈です。
青梅線の将来を、大胆予測
データから紐解く、青梅線の将来
以上のデータなどから、青梅線の将来を予測します。
これは、当サイトの勝手な予測であり、JR東日本や、自治体の見解ではありません。
自分が鉄道会社の経営者ならばこうする、という、妄想です。
- 2024年の中央・青梅線の12両化時点では、列車本数は変更しない
- しかし、近い将来、基本「青梅〜東京直通」「河辺〜立川」の2本立てとなる
- 日中は1時間あたり、東京直通3本・立川〜河辺間を2本程度、結果として、河辺〜青梅駅間は、減便
- 五日市線・八高線東京直通列車は、廃止
- 青梅〜奥多摩間は、更なる減便でワンマン運行となる
根拠を説明しましょう。
まず、1番目。
河辺駅・青梅駅の工事は、12両化で本数を減らさないため、というのが大義名分です。
12両化して、すぐに減便するのは、反感を買うでしょう。
少なくとも2〜3年は、現状維持すると予想します。
2023年3月のダイヤ改正では、12両化での運用を視野に入れています。通勤時間帯の青梅〜河辺間は、列車を詰め込めなかったのか、少し減便しましたが、ほぼ現状維持といって良いでしょう。
2番、3番目については…
そうは言っても、河辺〜青梅駅間は、乗客が少ないのも事実。
直通運転を増やす理由は、グリーン車で増益を図る狙いがあります。
東京〜青梅間のグリーン料金は、平日1,000円、ホリデー800円(事前料金)。
新宿までなら平日780円、ホリデー580円。
グリーン車は、短距離では乗らないでしょう、大抵は。
プラス580〜1,000円出して乗るのだから。
ちなみに、青梅・東青梅駅から乗降する人の1割が、グリーン車に乗るとすると…
それだけで、一日あたり、200万円程度、年間で7億円ほどの売り上げとなるでしょう。
2019年度の青梅線の売り上げ(旅客運輸収益)は90億円弱、経営的には、魅力的な金額です。
コンスタントに直通列車を走らせれば、グリーン車での増益となります。
中央線快速は、1時間に1〜2本、立川止まりの列車があります。
ダイヤを上手くやり繰りし、中央線直通を増やすと予想します。
五日市線・八高線の東京直通列車は?
4番目の、五日市線・八高線の東京直通列車について。
現在、平日朝2本、休日1本のみ、五日市線・八高線の東京直通列車が運行されています。
拝島駅で、五日市線6両と、八高線4両を連結しての運行。
12両編成化すると、五日市線各駅のホームの長さが、足りなくなりますが…
2022年3月のダイヤ改正で、五日市線・八高線の中央線直通運転は廃止。
詳しくは、下記の記事をご覧ください。
廃止の理由は、八高線をワンマン運転するから。
12両編成かとは別の理由で、あっさり廃止ですね。同じく赤字路線の五日市線も、どこかのタイミングでワンマン化されるのでしょうか?
青梅〜奥多摩間は、減便は避けられない?
5番目に、青梅〜奥多摩駅間の減便について。
東京都の人口予測では、2030年には、奥多摩町の人口が現在の約3分の2の3,500人程度と見込んでいます。
単純に乗客が3分の2になるとすれば、1時間に1本程度の運行となるでしょう。
本数だけではなく、短い2両編成でのワンマン運行をするでしょう。
極論ですが、青梅〜奥多摩間の所要時間は32分程度、1時間に1本程度なら、1編成だけでピストンすれば事足りるわけです。
減便を防ぐには?
現在の状況をもとに、青梅線の将来をシミュレーションしてみました。
やや、悲観的な予測となりました。
乗降客から推測すると、数年後、河辺駅始発・終点の列車が増える可能性は、高いと思います。
それを防ぐには、河辺駅以西の青梅線を活性化する以外ありません。
沿線人口を増やし、観光を活性化するなどの施策が必要でしょう。
特に、奥多摩町の人口の減少が、気になります。
2020年には、ついに5千人を割り込み、20年前の3分の2以下となりました。
とはいえ、明るい話題がないわけではありません。
テレワークなどの普及により、田舎暮らしが定着する兆しもあります。
知恵を絞って、新しい方策を打ち出すことが肝心ですよね!
【2024年10月追記】
JR東日本から正式発表がありました
https://www.jreast.co.jp/press/2024/20240910_ho02.pdf