「地球の歩き方 東京 多摩地域」版を、地元視点でチェックする

バックパッカー御用達の旅行ガイド「地球の歩き方」。
初の国内版「東京」に続き、「多摩地域」版が刊行され、話題沸騰です。
深く濃い内容と、歴史や文化もカバーすると評判ですが、地元視点でチェックしました。

世界から多摩へ、「世界の歩き方 多摩」版を読む

国内版も登場した、世界の歩き方

1979年に発行された旅行ガイドブック「地球の歩き方」。
個人旅行に重きをおき、バックパッカーから支持されました。
読者情報を盛り込み、編集したのも斬新。SNSを40年先取りした、ともいえます。

海外旅行ガイドのバイブルとなった「地球の歩き方」もコロナ禍で、売り上げは9割減。その中、初の国内版「東京」が刊行され、好評ですが…

多摩地域の情報が少ない、との声を受け、刊行されたのが「地球の歩き方 東京 多摩地域」。
2022年3月に発売されました。

サイズはA5変形版・456ページ、税込み2,020円。国内ガイドブックとしては、ボリューム満点です。

地球の歩き方 東京 多摩地域の厚さ

ノギスで測ると、なんと厚さ23mm!
時刻表みたいな厚みで、ギッシリです。

重さは、付録の地図込みで523g。500mlのペットボトル程度で、厚さの割には軽い?
電子ブック版もありますが、タブレットならともかく、スマホだと小さな表示。
やっぱり、紙の本がオススメです。

多摩エリア・全市町村を網羅

市町村別のガイド
出典:地球の歩き方Webサイト

メインの名所ガイドは、各市町村ごとに、数ページ記載されています。
狛江・西東京市など、観光地の少ないエリアも網羅しているのが凄い!
とはいえ、各自治体数ページで、「広く浅く」の紹介です。

特集記事も多い
出典:地球の歩き方Webサイト

それを補うのが、特集記事。

「高尾山ハイキング徹底ナビ」
「青梅線の大自然と御岳山ハイキング」
「アニメ聖地巡礼」

といった、特集が組まれます。
「情報の深さ」はネットのほうが上ですが、編集を通した信頼感は捨てがたいですね。
もっとも、ハイキングコースなどの情報はアッサリ気味。
安全面を配慮し、登山地図や山岳ガイドブックを併用すると、良いでしょう。

当サイトでも、御岳・奥多摩エリアのトレッキングコースを、詳しく紹介をしているので、ぜひ参考に。

ニッチと、昭和と、サブカルチャー

鳩ノ巣渓谷

マニアックな、というかニッチな特集も…

「多摩エリアの個性派銭湯」
「東京の名湧水と水にまつわるトリビア5」
「檜原村滝めぐり」

他のガイドにはない、地球の歩き方の面目躍如、ですね!

海外版「地球の歩き方」を踏襲し、欄外に2行くらいの短い情報も。
昭和のサブカル系・映画雑誌「ぴあ」のはみだしYOUとPIAみたいなノリです。
意図的にサブカル的・昭和テイストを残し、中高年も取り込みたいのでしょうか。
1979年に発刊された「地球の歩き方」、初期の読者はもう、還暦を迎えていますからね。

「孤高のグルメ」の久住昌之さんなど、多摩ゆかりの著名人インタビューもあります。
彼の作品で有名になった、ラーメン店「江ぐち」はなくなりましたが… お弟子さんが同じ場所で営業している「中華そば みたか」もちゃんと紹介されたりと、サービス精神旺盛です。

グルメ情報は優等生的?

グルメ系記事
出典:地球の歩き方Webサイト

みんな大好き・グルメ記事は、タウン誌的なにぎやかなレイアウト。
地元情報を丹念に収集したのでしょう、ソツのない、順当な店選びです。

美味しいけれど不定休の店が多い「田舎あるある」ですが…
そういう、観光ではちょっと使いづらい店は、あえて外しているようです。
せっかく行ったのに閉まっていると、ガッカリですからね。

食べ物の恨みは恐ろしく、サブカルでも優等生的にならざるを得ない?
つまり、地元目線でいえば、「良い意味で無難な店」が中心です。もちろん、第一候補としては良いけれど…
西多摩ならば当ブログのグルメ情報を参考にしたり、現地で他の店も検討すると、もっと面白いかと。

都区内から日帰り可能なエリアのためか、宿泊施設の紹介は少なめです。
「地球の歩き方」なのに、ゲストハウスやユースホステルの紹介が、ほぼないのが意外。このエリアにもゲストハウス、結構あるのですがね。

このエリアだと「貧乏旅行」を実践する人、少ないのですかね。

国内なのに、海外ガイドブックのノリ?

奥多摩湖の紅葉

海外ガイドシリーズの国内版らしく、超々基本的な情報が多いのも特徴。
例えば、成田・羽田空港からのアクセスなど、地方や海外からの旅行者も意識した内容です。
さらには、治安情報や習慣、マナーまで載っています。

「温泉は湯船に入る前、体を流す」
「タクシーでは、シートベルトを締める」

など、ニッポン人なら当たり前の話で、これは外人観光客向け?

「エスカレーターは左側へ立つ」

は、右側の関西人向け、ですかね。
親切といえば親切ですが、ここまで手取り足取りする?
異文化でのトラブルに慎重な、海外ガイドの伝統なのでしょう。

歴史年表まで載っている
出典:地球の歩き方Webサイト

面白いのは、歴史年表。旧石器時代から令和まで、歴史がたどれます。
旧石器時代とか、もう、メソポタミア文明なんかより古いですよね!
国内ガイドでは珍しい試みで、資料的な価値もあります。
ガイドブックとしても網羅的、多摩エリアの観光のお供に、是非どうぞ。

地球の歩き方 多摩版が、画期的な理由

地元では、図書館が大量購入の大フィーバー?

「地球の歩き方 東京 多摩版」の、地元での反応はどうでしょうか?
要望の多い図書は、市町村の公共図書館で購入します。
各市町図書館での「地球の歩き方 東京 多摩地域」の蔵書数を抜粋すると…

青梅市10冊国分寺市7冊
あきる野市4冊府中市13冊
羽村市2冊調布市13冊
福生市3冊武蔵野市5冊
八王子市6冊三鷹市6冊
立川市9冊日の出町1冊
町田市7冊瑞穂町1冊
自治体図書館での
「地球の歩き方 東京 多摩地域」蔵書数

2022年5月現在

府中・調布はなんと13冊、青梅は10冊ですよ。もう、大喜利状態。
規模の小さい瑞穂・日の出町でも、ちゃんと蔵書があります。
表には載せませんでしたが、中には蔵書しない市もありますが… このフィーバーぶりからすると、今後、購入するのでは?

それも、ほとんど貸出中で、予約待ちになっています(2022年5月現在)。
地元民も大注目、沢山揃えても、追いつかない大人気!もっとも、予約を待つぐらいなら、買ったほうが良さそうですね。

多摩地域だけのガイドブックは珍しい

奥多摩の山からの、富士山

これほど、地元で注目される理由は…
「地球の歩き方 東京 多摩版」は、東京多摩地域のみのガイドブック。
これって、結構珍しいです。
例えば、「るるぶ」では、「秩父 奥多摩 高尾山」として、多摩エリアを扱っています。
多摩だけだと、部数が伸びないのでしょうか?

旅行者の立場だと、秩父と多摩を一緒にしても、あまり嬉しくない。
例えば秩父の長瀞と高尾山は、一緒に行きませんよね。
片や京王線・中央線、片や西武池袋線〜秩父鉄道。アプローチが全然違います。
車なら飯能のムーミンバレーパークの帰りに、青梅に寄るかもしれませんが…
秩父と多摩を1冊にまとめるメリットは、さほどありません。

それでも、高尾・奥多摩・青梅・秋川はちゃんと載っているから良いですが…
他のエリアはほぼスルーです。その意味で、多摩地域全体を扱うガイドブックは画期的です。

「地球の歩き方 東京 多摩地域」は、多摩エリアを旅するなら、最初に手に取るべき1冊でしょう。ネット時代とはいえ、各種情報が手元にある安心感は、捨てがたいですよね。
また、コラム的な記事も多く、家に居ながらの妄想する「アームチェアトラベル」にも向きます。
そして、気が向いたら、気になるスポットが見つかったのなら…
週末はぜひ、多摩エリアに旅立って下さい。

インフォメーション

● 地球の歩き方 東京 多摩地域 -高尾・御岳・奥多摩と全30市町村を完全網羅
出版元… 学研プラス
著者… 地球の歩き方編集室
定価… 2,020円(税込)
発行年月… 022年03月
判型・造本… A5変並製
ページ数:456ページ
ISBN… 978-4-05-801688-6