東京の地震は、西弱東強?防災化研の地図で読み解く、危険なエリア

2021年10月、東京で東日本大震災以来の、震度5強の地震がありました。
震源から離れていても震度5強、近くでも震度4、地盤の強さで影響が変わることも…
地盤や地震確率が判るハザードマップで、東京の地盤と地震の関係を、読み解いてみました。

地震の確率や地盤の強さが分かる、ハザードマップ

防災科研のハザードマップ、J-SHIS Map

自宅や職場などで、大きな地震に見舞われるのか、気になりますよね。
防災科学技術研究所(防災化研)は、地震、火山、水害などの災害を研究する、国立の研究開発法人です。
啓蒙活動の一環として、地盤の強さや地震の起きる確率がひと目で分かる、J-SHIS Mapを公開しています。

J-SHIS Map
防災化研・Webサイトの使い方
J-SHIS Map
防災化研・Webサイトより引用

使い方は簡単ですが、専門用語が多いのが難点。スマホでも閲覧出来ますが、表示が小さく見にくいので、アプリで閲覧するのが良いでしょう。

●J-SHISアプリ iPhone版 Android版 

J-SHIS Mapの使い方

まずは、地震の確率地図(確率的地震動予測地図)の見方を説明します。
J-SHIS Mapにアクセスし、地図を拡大縮小し、見たい場所を探せばOK。地図上の色で、地震の確率が分かります。

J-SHIS Map 防災化研 の操作方法(確率的地震動予測地図)
J-SHIS Map
防災化研・Webサイトより引用・加工

上図の赤い部分で、条件を変えられます。「30年以内に震度6強以上」「30年以内に震度5弱以上」などを選べます。

J-SHIS Map 防災化研 の操作方法(表層地盤増幅率)
J-SHIS Map
防災化研・Webサイトより引用・加工

地盤の良し悪しが分かる「表層地盤増幅率」も調べられます。
上図の「表層地盤」をクリックします。
表層地盤増幅率は、数字が大きくなるほど、揺れやすい地盤です。
特に注意したいのは、

  • 特に揺れやすい…増幅率2.0以上
  • 揺れやすい…増幅率1.6〜 2.0未満
  • 場所によっては揺れやすい…増幅率1.4〜 1.6未満

エリアです。
増幅率が2.0の場合、地震のゆれが、1.0の2倍ほど強くなります。
これは大きな差ですね。

東京で、大きな地震に遭う確率は?

震度6弱は、東京全域で起きる確率が高い

J-SHIS Mapのデータをもとに、東京・区市町村の地図を重ね、合成してみました。
見やすいよう、色調補正等をしています。

今後30年間で震度6弱以上の地震の確率
防災化研Webサイトより引用・加工
東京の地震確率
(30年間以内・震度6弱以上)
防災科研Webサイトより引用・加工

スマホでご覧の方は、地図をタップし横位置にすると、大きくなります。

東京で、今後30年以内に、震度6弱以上の地震が起きる確率です。
上図では、濃い赤になるほど、確率が高まります。
23区内全域・多摩地方東部は、軒並み26%以上。西多摩・八王子は概ね、6〜26%。
程度の差こそありますが、一部の山間部を除いて、東京全域で震度6弱は覚悟したほうが良いでしょう。

さて、「震度6弱」は、どの程度の揺れでしょうか?

震度6弱とは
  • 立っていることが困難になる。
  • 固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。ドアが開かなくなることがある。
  • 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下することがある。

気象庁Webサイトより、引用

結構な揺れですね。
東日本大震災では、東京都区内は震度5弱が大半でした。
震度5弱とは…

「大半の人が、恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる」
「棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある」
程度の揺れです。

対して、震度6弱では、立っていることが困難で、大半の家具が移動するほどの揺れ。
家が倒壊しなくとも、物の落下で思わぬ怪我をしないよう、対策しましょう。

東京東部は、震度6強以上の可能性も高い

さらに大きな、震度6強以上の地震。30年以内に起きる確率です。

東京の地震確率(30年間以内・震度6強以上)
東京の地震確率
(30年間以内・震度6強以上)
防災科研Webサイトより引用・加工

上図では、薄い黄色が最も低く、濃い赤になるほど、確率が高まります。
江戸川・江東・墨田・荒川・足立区の大半、北・板橋・大田・品川・目黒で、26%以上の高確率。
やはり、東京東部は危険度高し、です。
2021年10月の地震でも、震源から遠い足立区で震度5強、やはり、地盤が弱いのでしょう。

他の都区内では、軒並み6〜26%と確率は下がります。東部に比べればやや安心ですが、油断は禁物ですね。
西多摩と八王子市西部は、概ね0.1〜3%とかなり確率は低くなります。起きない保証はありませんが、地震がイヤな人は、西多摩などへ引っ越すのも悪くありませんよ。

震度6強は、どのようなものかというと…

震度6強とは
  • 立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。
  • 固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる。
  • 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する建物が多くなる。補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる。

気象庁Webサイトより、引用

ほとんどの人が体験したことのない、強烈な地震ですね。
建物は、ここ40年ほどのうちに建てられたならば大丈夫な筈。
1981年以降の新耐震基準では、震度6強~7程度の地震にも、耐えられる設計です。
倒壊よりも、むしろ火事での被害の可能性が、高いのでしょうね。

やはり、東京東部は、揺れの大きい

地盤の強さの目安となる、表層地盤増幅率を見てみましょう。

東京の、表層地盤増幅率の マップ(地図)
東京の表層地盤増幅率
防災科研Webサイトより引用・加工

やはりというべきか、江戸川・江東・墨田・荒川・足立城東5区と大田区が、揺れやすいですね。
2.3以上の地域も点在し、西部に比べると3倍弱、揺れる地盤です。

比較的揺れにくい、1未満のエリアは西多摩と八王子
とはいうものの、スポット的に増幅率の高い場所も。立川断層上の河川周辺などです。

国土地理院の河川地図と合成してみると…

表層地盤と河川
防災科研国土地理院Webサイトより
引用・加工

上図では、ブルーが濃くなるほど、表層地盤増幅率が高くなります。黒い部分が川です。
隅田川・荒川・江戸川流域の低地が、地盤が悪いですね。
一般的には、山地・丘陵地に比べ、沖積平野(ちゅうせきへいや=河川からの砂や泥などが、積み重なった地形)は、地盤が悪い場合が多いです。
城東ほどではありませんが、河川の周辺、例えば、多摩川の下流〜中流や、その支流なども、やや増幅率が高い傾向です。

土地の成り立ち
国土地理院Webサイトより引用・加工

城東5区エリアは、川の改修も多く、江戸時代はアシ原の湿地だったので、地盤が悪いのも、無理もない話です。
遊郭街の吉原の由来は、「アシ原」だった、という説もあります。
川の近くは、特に気を付けたほうが良いことを、あらためて認識します。

もっとも、阪神淡路大震災など、地震が起きにくいとされた地域でも、強い地震に見舞われることもあります。地震確率マップを過信することなく、日本に住んでいる限り、備えは必要なのでしょうね。

インフォメーション

問い合わせ先

●防災科学技術研究所
Webサイト… https://www.bosai.go.jp
防災関係ハザードマップのJ-SHIS Mapを公開

●気象庁
Webサイト… https://www.jma.go.jp
地震津波や最新情報、震度分布情報などの公開
緊急地震速報の利用方法、地震から身を守るために津波から身を守るためになど

●国土地理院
Webサイト… https://www.gsi.go.jp
Web版国土地理院地図で、各種地図と防災情報を重ねて閲覧できる

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